ぱんなこった教教祖の朝は、遅い。
起きてすぐリビングに降りると、ぱんなこった教後継者の一人、チェジュンが出迎える(ゲーム音と共に画面から目を離さずに)
「余のために作るがよい」
後継者候補たる彼女は教祖である私にそう指示を与える(ゲーム画面から目を離さずに)
「かしこまりました」
どちらが階級が上なのかさえ分からないこの状況。
いや、我が家の頂きはただ一人。
我が妻であるティモシー以外は同列なのだ。
目の前にあるのはこれだけ。
私が朝に「ぽこぺんぽこぺんだーれがつついた」と呪文を唱えながら産んだ新鮮なたまごがふたつ。
そこに砂糖をふたつまみして高い位置から振りかけて。
更にひとつまみ塩を高い位置から落として、こっそりブラックペッパーを。
ついでに、焼き上がりに軽く色がつくように、命の水こと醤油をちょろりといれ、空気が入るようにかき混ぜる。
これだけで準備は完了だ。
さあ、作ろう――
これが、父親の味だと、娘が嫁入りしたときに。
自分の新たな家族に家の味として伝えていくように。
私の味――ぱんなこった教はこうして、拡がって行くのだから。
――寝ぼけながら作ったこれ。
分量とか全然測りもしなかったし、ほぼ目開けてなかったから半生だったかもしれないし(いや、しっかりコゲついてるからそれは大丈夫か)写真撮ったときには軽く萎んでたけど美味しかったんかな。
無言で食ってまたゲーム戻ったけど。
我が家は今日も、自由だなぁ……