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一巻記念ss ③ 「長男の貫禄」

皆様の応援のおかげで、一部書店では売り切れたりもしているようです!
ありがとうございます

感謝のss三本目です



◇◆◇◆◇◆◇◆



 白石さんとの、なんでもない会話を思い出した。

「一色くんの妹って、双子さんもいるんだよね?」
「はい。可愛いですよ」

「すごい自信だ……」
「うちの可愛い双子について、なんですか?」

 星奈と星花の可愛らしさについて話していいなら、二時間くらいは余裕でいける。小学三年生の二人は、現在進行形で可愛いエピソードを積み上げている途中だ。週一のペースでプレゼンしろと言われても困らない。

「や、双子さんのことっていうか、一色くんに聞きたいことがあってね。双子って、見分けついてるの?」
「つきますよ」

「どうやって?」
「どうやって……と言われると難しいですけど、困ったことはないですね」

「ぱっと見でわかる?」
「ぱっと見でわかります。離れてても全然」

「そうなんだ……お兄ちゃんってすごいね」
「ずっと見てますからね~」

 なんて会話だ。
 なんとなく家でぼんやりしていて、一色家の全員が揃っている。夕食後の団欒。

「ちょっと気になることがあるんだけどさ。皆、協力してもらっていいか?」
「どうしたの樹にぃ」

 仁奈は首を傾げ、三弦は腕組みする。

「なんだよ兄貴。水臭いぞ」
「相談してるんだから水臭くないだろ」

「それもそうか。なんだ」
「後ろから目を隠して、『だーれだ』ってやつあるじゃん。あれの難易度を上げたら、どこまで俺は正解できるのかなって」

「おっしゃ! やろうぜ」
「テンション高いなぁ」

 なぜか凄くやる気の三弦。兄としての自覚が芽生えてきたからか、先陣を切るほどの勢いである。

「タオル取ってくるね」

 仁奈も乗り気だ。受験シーズンで友達と遊ぶこともなく、こういった小さな遊びが嬉しいのだろう。すぐに戻ってくると、手に持ったそれで三弦の目隠しをする。

「っしゃ。かかってこい!」
「じゃあ……とりあえず、手を繋いで誰か当ててもらうか」

「余裕だぜ」

 強気の三弦に聞かれないように、残る五人でアイコンタクト。トップバッターは六月が行くことになった。
 テーブルの上に置かれた三弦の手を、ぎゅっと六月が握る。

「おおう……これは、わかるぜ。六月だな」
「みっくんすごい!」

「へへ。当前よ」

 次に挙手したのは、星花だった。

 といってももう、星奈と星花のどちらかでしか間違える要素がない。俺と仁奈で間違えたら、仁奈が悲しみ三弦が家を追い出されてしまう。

「おおっ……星花か、星奈か……どっちかだな……。星花か⁉ 星奈か⁉」
「心理戦禁止!」

 仁奈が三弦のたくらみを阻止する。そう。これは手の感触だけで家族を判別できるかというテストなのだ。

「くっ……俺は兄貴失格だ」

 三弦は潔く諦めると、目隠しを外してテーブルに突っ伏した。

「すまねえ兄貴……。俺の仇を取ってくれ」
「おっけ~」

 三弦が外した目隠しをつける。

「じゃあ、樹にぃはやり方変えよっか。手、テーブルから降ろして」
「なんだなんだ」

「星奈と星花は立って、樹にぃの後ろでぐるぐる~。はいっ。樹にぃと手繋いで」

 だらんと垂らした両手が、ほとんど同時に掴まれる。

「右が星奈、左が星花」
「はやっ⁉」

「「いっくんすごい!」」
「うん。余裕。足音でもうわかった。手でもわかるけど」

「足音で……」
「兄貴……?」

 絶句すると仁奈と三弦。

「よく聞くとけっこう皆違うぞ。六月とかもわかりやすいし」
「ちょっと、星奈と星花は歩いてみてくれる?」

 こくりと頷いて歩く双子。てくてくって感じだ。

「三弦はわかる?」
「わかんねえ」

「長男の貫禄だね」
「まじか……」

 普通に誰でもできるもんだと思ってた。

 もしかしてこれ、結構キモめの特技だったりするのかな……。

 白石さんには伝えないでおこう。

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