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 おはようございます。

 先日、物書きさん向けマストドンインスタンスの「かくどん」さんでも予告として掲載していた、
「世界は骰子と遊戯盤」番外編
https://kakuyomu.jp/works/1177354054883191567
 の一部抜粋を掲載してみます。

 まだ途中までですが、一区切りということで。
 五回分、まとめてあります。

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「本当に、そうなさるおつもりなのですか、陛下!? 犯罪者ですって!?」

 時はしばらく前にさかのぼる。
 ある日の執務室で、ニレッティア女帝アンネリーゼは、自分が抱いている計画を、いつものようにシャイリーンに相談していた。
 ドミニア樫の艶麗かつ堅牢な机には、少し前までのような書類の山ではなく、魔導式事務機械が一式設置されている。
 その向こうに、向かい合うようにシャイリーン。
 アンネリーゼの鮮やかな赤毛が、昼前の光に透けて、聖者の後光のように輝いた。

「うむ。犯罪者とはいうても、その辺にいる、欲得ずくなのとは一味も二味も違うようじゃぞえ?」

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「……下級とは言え、一応貴族の端くれだもの。そりゃあ、代々帝室には仕えているわよ、エンシェン。当然じゃないの、あなたの故郷でもそうなんじゃないの?」

 部屋の一角、丸テーブルにエンシェンラーゼンと差し向かいで座ったシャイリーンは、内心の動揺を悟られぬように、さりげなく返した。
 こうして、自分の部屋でエンシェンラーゼンと差し向かいで昼食を摂るようになってから、もうどのくらいだろう。
 最初は仕事上のこともあり、断る理由もなく同席をOKしたのだが、それ以来、決まり事のように、必ずエンシェンラーゼンはシャイリーンの部屋に押し掛けるようになった。
 ちょっと気まずくて、アルディスシェイマも誘ったりしたのだが、「何を仰います。邪魔しませんよ、うふふ」という謎の言葉で拒否されてしまった。
 今では彼を、愛称の「エンシェン」で呼ぶほど、打ち解けてしまった訳で。

 実際、彼は親しくするのに楽しい男だった。
 元犯罪者という色眼鏡を外して見るなら、朗らかで気のいい男だ。

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「……魔法、使ってるの?」

「まさか」

 軽く、エンシェンラーゼンは笑い声を立てた。

「ターバン巻くのに普通魔法なんか使わねえよ。メイダル男の基本スキルってやつ」

 エンシェンラーゼンは、再度シャイリーンに口づけた。

「ああ、そうだ、渡すものがあった」

 やにわにエンシェンラーゼンは、空中の何かを指で掴み取るような仕草をした。
 次の瞬間、その男らしくも形の良い手の中に、気品ある色合いの包みが現れた。

「これ、シャイリーンが危なくないようにするためのものなんだ。良かったら、今日から身に着けてくれないか? 昨日は盛り上がって渡し損ねててさ……」

「これ……」

 もの問い顔をエンシェンラーゼンに向けてから、促された通りにシャイリーンはその包みを開けた。
 中から出てきたのは。

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 女帝アンネリーゼは、その薄紫色の皮膚の従僕型魔法生物《サーヴァント》が姿を見せるや、まるで肉体を切り裂かれるような凄まじい悲鳴を上げた。
 その美しい顔に何かが突き刺さりでもしたかのように、手で覆う。
 そのまま突き飛ばされるように倒れ伏した。

 同時に――従僕型魔法生物《サーヴァント》が飛鳥のように宙に舞った。
 その手の甲から何かが伸びて……

 確認する前に、シャイリーンは動いていた。

 自分がいつも腰の後ろに帯びている短刀型魔導武器を起動させる。

 世界が、色を失った。
 極端に速い時間の流れに踏み込んだのだ。

 目にも止まらぬ速さであるはずの、従僕型魔法生物《サーヴァント》が、空中に糊付けされたかのようだった。
 メイドのスカートが翻った形のまま、静止している。

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 その会議場に集まっているのは、女帝アンネリーゼを始め、上級メイドのシャイリーン。
 そして、女帝付き護衛士のエンシェンラーゼン。
 彼らに加え、会議机には、宮廷魔導師長カーダレナ。
 更に、隣に魔導工芸技術長ジャガリアタディーラ。
 向かいには女帝の魔導政策顧問であるアルディスシェイマ。
 いつもの席からは少しずれて、内務大臣のベイリン。
 その向かいがウェルディネアで、ベイリンの隣はパイラッテ将軍が収まっている。

「さて、皆様揃ったところで、緊急の御前会議を始めますぞ」

 重苦しい声で、ベイリンが口火を切った。

「本日の議題、すでに魔導通信で各位に通達申し上げた、女帝陛下への襲撃事件についてです。このテロ行為には、緊急に対策を取らねばならない」

 室内には、びりびりと肌に伝わるような嫌な緊張感が満ちていた。
 それがベイリンの宣言で、ますます強まったように思える。
 誰もが息を呑み、肌を裂く焦燥感に耐えかねて、口を開くきっかけを探した。

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 いかがでしょう、何となく流れが掴めたでしょうか?
 こちらのお話は前回の第二話で結末は分かっているはずなので、それまでの過程をお楽しみいただくことになります。
 こんな感じで、物語は不穏なクライマックスへ。
 本編のヒーローとヒロイン、エンシェンラーゼンとシャイリーンは、この危機にどう立ち向かうのか?
 恐らく意外な彼らのやり方を、お待ち下さい。