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百物語の物理的条件

 一晩のうちに百の怪談を語ると、百話目を語り終えた後に本物の怪異が起こるという「百物語」。一話語るのに仮に十分かかるとした場合、百話の怪談を語り終えるにはまったく休憩時間をとらなくても千分かかります。時間に換算すれば十六時間半強。一年のうちで一番夜の長い冬至の日でも、東京では日没から日の出まで十四時間くらいしかありません。一話語るのに十分もかけているようでは、百物語は成立しないのです。まして百物語は夏の季語。夏の夜はもっと短いのですから、よほど短い怪談でなければ百も語ることはできないでしょう。

 では、もっと短い怪談だったらどうなるか。休憩をはさまず一話五分のペースで語り続ければ、八時間半ほどで百の怪談を語ることができます。夏至の日の夜の長さが九時間半ほどですから、このペースならば百物語が成り立ちます。

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