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金糸雀様、猫の日でございます。

萌黄「前回までのあらすじっす。前回ってあったっすか?これ突発的なおまけっすよね?」
萌黄「えーっと、翡翠様が怪しい店で買ってきた薬の影響で一部の恩寵を受けし者の皆様と、籠守の皆に猫耳と尻尾が生えたっす!ご都合ってやつっすね!」
翡翠「…儂は、戻った奴らに殺されたりはしないだろうか」
萌黄「そうならないよう、お祈りしとくっす」
翡翠「祈りで人命が助かるのなら、誰もが天寿を全うすることができるだろうね…」



(浅葱に猫耳と尻尾が生えた)
「…」

ぼーっと腰掛ける彼女は地面をじっと眺めて無反応。
いつもの金糸雀のような真似をしないでいただきたい。

「あーちゃん〜?どうしたのかな〜?お返事は〜?」
「…」
(無反応…)
「どうしたものかなぁ…」

後ろを振り返り、何か使えるものがないかと探しにでると…浅葱が足下へついてくる。
視線の先には、金糸雀の服。
揺れるリボンに目を奪われ、浅葱はそれを追いかけ始めていた。
時折拳をつくって、攻撃したり…じゃれてみたり。
しかし猫耳と尻尾が生えようとも、浅葱は浅葱。姿は人間のままなのである。
服にじゃれる事は、金糸雀とじゃれるのと同義である。

「あーちゃんくすぐったい。あ、頬舐めちゃダメ…」
「…ぬ?」

先程まで上機嫌に金糸雀の頬を舐めていたのだが、リボンが見えなくなった事に気づき、浅葱は不機嫌そうに唸り出す。
金糸雀よりリボンで遊びたいらしい。

普段は逆。

しかし今はリボンごときが自分より好感度が高い。
そのことに対し、金糸雀は面白さを全く感じない。

「露骨なご機嫌斜めだね…」
「ぬぅ…ぬっ!」
「浅葱、何か気になるものでも…ひぃっ!?」
「ぬやっ!」
「…ね、鼠いるんだこの空間…つ、捕まえたところとか見せなくていいから…」
「ぬぅ…」

せっかく獲物を捕まえたのに、金糸雀は褒めてくれない。
浅葱はしょんぼりと鼠を逃がし、ベッドの上に陣取ってしまった。

普通は隠れるものではないかと思うのに、ベッドの上に…快適かつ金糸雀の匂いが一番強い場所に陣取るのがなんとも浅葱らしい。

「あーちゃん。ごめんね。鼠捕まえられて偉いね」
「…ぬ」

頭を撫でると、心地よさそうに喉を鳴らし、尻尾は上機嫌に揺れ動く。
猫生活も悪くないと、感じ始めたその瞬間、浅葱の猫耳と尻尾は消え失せてしまった。

「…あ、戻った」
「やっと喋れた…」
「にゃさぎもいいけど、やっぱり私はいつものあーちゃんかな」
「ん」

こうは言うが、金糸雀自身心残りがある。
———浅葱の猫耳と尻尾を、触りそびれているのだ。

「あーちゃん」
「んー?」
「今度は耳と尻尾、撫でさせてね」
「今度は、なしでお願いしたいのですが…」
「だって触りそびれたし。ふわふわで気持ちよかっただろうなぁ…」

この日以降、金糸雀は時折名残惜しそうに浅葱の耳と腰を撫で回すようになり、それに浅葱が悩まされることになるのだが…それはまた、別の話。

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