よろよろとペットボトルを掴んだ。意を決して口に含んだスポーツ飲料はすっかり温く、喉をやさしく滑り落ちていった。胸のむかつきもだいぶ治まったようだ。
蓋を閉めたところでようやく周りに意識が向く。良太の隣には双子しかいなかった。
「あれっ、杏さんと郁くんは?」
「先に行ったよ。おっさんもう大丈夫? おれら案内しよっか?」
「……あのさ、おっさんじゃなくて良太くんって呼んでもらえると嬉しいかなぁ」
「なんで? どこからどう見てもおっさんじゃん。もしかして自分ではおっさんと思ってなかったりする? ダメだぜ〜認めないと。な、おっさん」
あっけらかんと話す少年は頭の後ろで組んでいた手を解くと青年の背をばしばし叩いた。それは確かに正論だけど……。肯定も否定もできず良太は引き下がるしかなかった。かろうじて笑みを形作る口の端が引きつる。
第7話 虚ろな氷の迷宮にて より
https://kakuyomu.jp/works/16818622171629562423/episodes/16818622171637452373(2017年7月22日描画)