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ひとりの話

私という生き物に限らず、人間というのは難儀な生物である。

私という生き物はひとりは好きだし、ひとりが心地よい。
でも時に人と居たくなる。そんな恒温動物である。

人間の性なのだろうか。分からないけれど。
ひとりで居るからこそ不安になることがある。
この世界に自分が必要じゃないのかもしれない。と。

勿論この世界に必要なものなんて自分を含め何もないのかもしれない。
全てが無駄で、無駄の中で私は私の世界で生きていて。
目に映るものも全部嘘かもしれない。
私という生物は見知らぬプレイヤーの操作対象であるかもしれない。
今まで経験してきたものの数々が、長い長い夢の一片かもしれない。
それを証明する術はない。

それでも私は不安になるのだ。
必要とされない、人間として扱われない恐怖を知ってしまっているから。

過去のトラウマという呪縛は結局解き放たれることはなく、長い時間をかけて痕を残しながら自分の一部になって、ふと思い出したかのように痛みだすのだ。
幸運に恵まれた人は皆こう言う。
「人とは違う経験をしたあなたはきっと強くなる」と。

あなたは私じゃない。
泣きたいとき泣かせてくれた人、逃げたいとき逃がしてくれた人、我慢ができなくなった時外へ連れ出してくれた人、恐怖に苛まれた時無償の愛で守ってくれた人。
そんな人が周りにいたあなたじゃない。
私はただの上手く泣くこともできない弱虫で。
誰かに縋ることに恐怖を刻まれたロクデナシだ。

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