• 詩・童話・その他

本を貸した話

すれ違えば挨拶を交わす程度の他クラスの男子が、
私の何気ない落書きをSNSのホーム画像にしていた。

『6時27分発の電車に乗って、僕は本を読む』
ホワイトボードに書いた、私の大好きな作品。

いつもより少し雑な字で書いたその落書きが、
彼の気を引いたらしい。

「なんでそれをホーム画像にしているの?」
と、私は彼に問うた。
すると彼はこう返した。
「君だったか」と。
シンデレラにガラスの靴を履かせた王子のように。
彼はそう言った。

そこからその落書きが本の題名であることを伝え、
彼が私以上の読書家だということを知っていた私は、
彼に私の大切な本を貸した。

シーリングスタンプで封をした手紙を添えて。

別に彼を好きになったわけでも、好きになりたいわけでもない。
ただこの事実が、何だか素敵だと思った。

また本が帰ってきたら、この話の続きをしよう。

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