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アーセナル・コマンド及びモッド・トルーパー


【アーセナル・コマンド】

火薬庫(アーセナル)にして、特殊部隊(コマンド)を意味する兵器名を持つ二足歩行型の有人機動兵器。

最大の特徴とも言うべきが、資源衛星B7Rの主成分である金属――ガンジリウムを利用した複合装甲。
ガンジリウムは、それが流体である時に限り特定の周波数の電流を流すことで『力場』とも言うべき斥力型のエネルギーフィールドを形成する。
その合金によって作られた外部装甲と機体フレーム骨格、及びその外装の下を流れる流体装甲という機体そのものが持つ複合装甲に加え、
更にこの流体装甲への通電によって発生させた『力場』を加えた、四種の装甲を――強力な装甲を有する人型機動兵器。

力場の発生には、必然、機体の表面積の増加が有効。
それ故に、二足歩行のロボット――戦車や戦闘機に比べて前方投影面積が増えてしまう――という兵器としての避けられない欠点が、逆に、その利点となった。

『力場』の指向性を操作し、それを前方目掛けて尖衝角状態に変更することで超音速飛行に伴う空気との衝突を軽減。
更には、装甲のみならず指向性の変化に伴い、『力場』そのものを機体の加速や推力にも使用が可能。
結果――

『戦闘機の戦略機動性と戦車の装甲性を持つ』

そう言わしめる兵器として、成立したのである。


その開発背景は、衛星軌道都市の有する二つの兵器を避けずには語れない。
一つが監視衛星――《神の眼》。
そしてもう一つが、高高度位置エネルギー利用型運動エネルギー兵器――《神の杖》或いは【星の銀貨】である。

保護高地都市(ハイランド)連盟は、宣戦布告を伴わない一方的な衛星軌道都市の急襲により、その軍事施設の大半と衛星軌道上への到達方法――マスドライバーの全てを破壊された。
地球上の如何なる場所に降り注ぐ、天からの運動エネルギー弾。
そして、それを補助する地球規模の監視網。

敵都市である衛星軌道都市への直接攻撃手段を失ったハイランド連盟は、それでも、衛星軌道都市への物資支援を行う海上遊弋都市のマスドライバーを破壊する――つまり、敵の輜重や補給を崩すことでの勝利を勘案。
求められたのは、監視網をくぐり抜ける……つまり『地球上のあらゆる地点』からの『超高速の単機攻撃』。

様々な地形を踏破する走破性を持つ二脚と、重機代わりの運用も可能な両手のマニュピレータ。

そして何よりも、単身で敵施設及びその都市を襲撃するに足るだけの『機動性』と『装甲性』だった。

戦車でも、戦闘機でもできない強襲的破壊。

それを可能とする兵器がアーセナル・コマンドである。

衛星軌道都市の本国を狙えず、一方的な空襲を受けるというその状況。
それでも、か細い勝利の糸を手繰り寄せるために、敵が地上へと降り注がせ同胞を殺害した【星の銀貨】――ガンジリウム製の弾体を掘り起こし、そして、その機体は構成された。



●第一世代型
増設ブースターを利用し、巡航ミサイルのような速度での海上都市部への単機急襲及び施設破壊を旨として製作された。
仮想装甲及び実体装甲・流体装甲・金属フレームの複合により、戦車以上の装甲を持つ戦略的機動急襲兵器。
なお、後のバトル・ブーストのような白兵戦や近接射撃戦を想定した急速機動性能は持たない。

第一世型【屠鬼騎士(デーモンスレイヤー)】
甲冑騎士のような外見。
特徴はその騎士的な頭部で、まるで嘴のように兜のひさしが前に伸びているような形をしていること。
バトルブーストは持たないアーセナル・コマンド。

第一・五世代型【火吹き竜(フュルドラカ)】
アンテナが角の如く飛び出している、竜めいた意匠の特徴的な頭部。
爆発反応装甲を兼ねた無数の鱗じみた装甲板で覆われた機体。
衛星軌道都市により製作された。


●第二世代型
力場と推進剤の噴射を合わせた慣性を無視するような急速直線戦闘起動『バトル・ブースト』の実装により、対アーセナル・コマンド性能を上昇させたアーセナル・コマンド。
主眼は、対空ミサイル防衛による防衛が極めて困難なアーセナル・コマンドの単機侵攻の迎撃。
つまり、有視界下での対アーセナル・コマンドである。
海上遊弋都市や衛星軌道都市によって鹵獲された機体、或いは解析され開発されてしまった機体との戦闘が背景にある。

第二世代型【狼狩人(ウルフハンター)】
脊椎接続の基礎理論を共同で成立させたブランシェット博士による試作型高性能アーセナル・コマンド。
実験機と示すために赤く塗装されたフードめいた頭部防護板と、その内にシャッターバイザーじみた光学センサー防護を持つ頭部。
言うなれば、狩人の如き赤いフードを被った白き騎士。
武装は左腕のショットガンと、右腕のプラズマライフル兼用のプラズマブレード。
メイジー・ブランシェットが使用し、激烈な戦果を上げた。

第二世代型【黒騎士霊(ダークソウル)】
西洋甲冑を近代軍事兵器的な意匠を直したかの如き姿。
軍事的合理性及び空戦機能性あるシルエットのアーセナル・コマンド。
拡張性が高く、これをベースに専用改修機が作られる。

-重装甲改修型:魔械騎士(デモンズソウル)
腕部から脚部から胴体からしてその全てが肉厚の重厚。

-改修Ⅲ型:残火兵(エンバース)
ジェネレーター出力及び推力面では第三世代型に比す。

第二世代型【カエルの王子(フロッグプリンス)】
頭部が平たい機体。
より安価のため、多く生産された。

第二世代型【熊の革(ベアコート)】
既に設計された機体の上に熊のような増加装甲を纏った重装甲型の機体。
開発は衛星軌道都市。

第二世代型【狩人狼(ワーウルフ)】
直立した狼のようにしなやかさを感じる機影。
狼の鼻の如く、前方に鋭い頭部。
その頭部の下方寄りに位置した赤い光が漏れるシャッター付きの光学センサーは、閉じられた牙じみている。
稼働すると人狼が牙を向くようで、怖い。


●第三世代型
ジェネレーターの大型化・高性能化及び量産性の両立。  
狼狩人を除いて、近接ブレードにのみ許されていたプラズマ兵器の運用と機動戦闘を両立させた。

第三世代型【コマンド・レイヴン】
胸郭上部が嘴めいて前方に飛び出したシルエット。
前後に流線型の肩部は他より肥大化し、前後に長い。
量産機らしく、他はあまり無駄のない形。

第三世代型【ハートの兵士(ハーツソルジャー)】
兵士兜の如き丸く尖った頭部。
上へと盛り上がった両肩部と、腰から上のシルエットが逆三角形型で、上半身がハートのような形をしている。
ルイス・グース社により開発。


●第四世代型。
仮想装甲の有機的な運用を旨としている。
末端部への装甲の削減や待機時の力場の節約などを行い、機体の電力容量を確保。
その上で飛来する飛翔体に対して後発的に力場を高めるという形の調整。
それにより、高機動・高火力を両立させる。

第四世代型【ホワイトスワン】
力場の発生装置にして左右への加速機動のための、機体肩部で翼じみて広げられた増設装甲兼用ブースター。
左右に広がる上半身に比して、重力下での直立さえも疑わせるほどの下半身――腰の複合装甲板スカート。爪先立ちする白鳥のダンサーを思わせる。
あまりにか細い脚部と腰は、それが逆に機体のその非生物さを強調していて神々しい威圧感がある。

右腕に携行型レールガン。
左前腕の外に盾型のプラズマブレード。
背部一対の槍めいた大型レールガン。


●モッドトルーパー
アーセナル・コマンドを成り立たせる流体ガンジリウムを一部制限或いはオミットした機体。
破損ないしは破壊されたアーセナル・コマンドと、作業用の人型ロボットをミキシングした戦時一時戦力。
鹵獲したそれ、或いは整備が間に合わなかった破損した自軍のそれを一時的にでも戦力として運用しようとしたもの。
そのまま、全身に《仮想装甲》を持たない機体はそのように呼ばれる流れとなった。


首折り案山子(スケアクロウ)
胴体のみに流体が流れる胴に比べて手足が不釣り合いにか細い機体。

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