カクヨムコン始まっているのに、すみません。
ノーベル文学賞受賞した
『すべての、白いものたちの』(ハン・ガン)
とてもよかったのです。
散文詩のような、独特の文体の、不思議なお話でした。
わたしはとてもとても好きです。
(でも、好きじゃない人は、「こんなの小説じゃない」と言いそう。)
静かで、心の奥にするりと入り込んでくるような
記憶を撫でられるような、そんなお話でした。
「白く笑う」という表現を使ってみたいと思いました。
読み進めながら、これはもっと緯度が上のところの人が書いたものだと思いました。
寒くて当たり前に雪が降る地で暮らしたことがある人が書いた物語。
わたしには雪も霜も、遠いもので、珍かなるもので、愛でたくなるものです。
でもきっと、そうじゃない、白さ。
「生がまっすぐ伸びていくだけのものでないなら、いつしか彼女は曲がり角に戻っていく自分を見出すかもしれない」
(『すべての、白いものたちの』P139より)
たくさんポストイットをつけました。
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小川洋子の『海』も読んだのです。
短編集でした。
「海」も「風薫るウィーンの旅六日間」も、実に小川洋子らしい話だと思いました。
とりわけ「バタフライ和文タイプ事務所」がとてもよく、
最後の展開の書き方のうまさに惚れ惚れとしました。
小川洋子とか川上弘美が大好きで、
不思議なことを日常として描いていて、その不思議なことがとてもリアルに感じられるところが好きです。
安部公房の「鞄」もそう。
何かのメタファなのだろうけど、でも、「ほんとは何を表わしているのだろう?」
とかそういうことを考えずに、不思議な世界を、そのままリアルな世界として読みたいのです。
そういう短編が書けるようになりたいけれど、大変難しいです。
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『すべての、白いものたちの』は、訳も素晴らしいと思いました。
韓国語は知らないけれど、日本語訳がよく、文章に惚れ惚れしました。
どなたか読んだ方、いないかしら?