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髪を伸ばしています

 高校のときぶりに、髪を伸ばしています。長いこと肩につかない程度のボブだったのが、肩をこえて、セミロングといえるくらいには伸びてきました。

 夏から、伸ばしています。きっかけは夫の言葉でした。暑いなかをふたりで駅に向かって歩いていたのですよね。そのときふいに、「ぱっつんもいいけど、伸ばしてみたら?」と言われて、私は中学のときからずっと前髪をぱっつんにしておりますので、前髪をさわって、「ぱっつんを伸ばすってどういうこと」みたいに返しましたら、彼は「ぱっつん」と「ボブ」のことを混同していたとわかって笑ってしまいました。
 まあきみが言うなら伸ばしてみるけど、ということで、ほんとうもうひさしぶりにですね、伸ばしはじめたのでした。

 髪を短くしていたのは、とくに強いこだわりがあったわけではなくて、まあいわゆるぱっつんボブが好きというのはあったのですが、それ以上にただ自分では手入れが大変だなと思っていたのです。
 幼いころから中学二年生の最初くらいまで私はずっと髪が長くて、それもずいぶん長くて背中につくくらい軽くありました。それはそれでべつにまったく嫌だったわけではないのですが、中学二年生の最初といいますとだれしもそうでしょうけれど私もずいぶん変化した時期でして、六月あたりだったでしょうか、じめじめとした梅雨の季節に、ふっと思い立ってそのまま、美容院でばっさりと切りました。それこそ、肩にぎりぎりつくくらいに。
 翌日、保健室に行ったときに、いつもお世話になってる保健室の先生が「失恋でもしたの?」と冗談混じりに訊いてきた記憶があります。してないです、と私は答え、でも、ではなぜ急にばっさりといく気になったのかというと、それは、そのときには自分でもよくわかりませんでした。

 高校に入って、一年生のときにやっぱりよくわからない思い切りでまたばっさりといったのですが、これはあまり評判がよろしくなく。ちょうど演劇部で役作りをしていたときでもあるので、いまにして思うと役のイメージ的にもだいぶいろいろ周りにも手間をかけてしまったかもしれません。
 そのあと、なぜか「高校生といえば、おさげがよい」という謎の発想に行き着き、じっくりと伸ばしはじめました。そしてゆるめのふたつ縛りにしていました。やっぱりというかなんというか、途中で切りたくなったんですけれども、卒業アルバムを撮るまではと切るのを堪えました。卒業アルバムを撮ったあと、またばっさりといき、それから多少の変化はあれど、今年の夏に至るまでずっと短めボブを貫いていたわけです。

 髪が短いのはシンプルに楽だなと思いました。洗うのとか手入れとか夜のドライヤーとか。長いとやっぱり多少そのへんの手間が増えます。いまもそうなのですけれど、まあ夫の頼みということがあり、ある程度熱心にやるようになりました。

 おしゃれにあまり興味がもてなかったのは、他人からどう見られるかが、けっこうどうでもよかったからでしょうね。あと、なまじ若いころから哲学をやっていたせいか、表面だけ着飾っても仕方がない、内面をどうにかせねば、みたいな堅苦しい思考もしていたのでしょう。
 いまでもこれはひとつ考えねばいけないことです。内面と外見のこと。

 でも、それはそれとして、髪を伸ばすというのも悪くないなと思う今日このごろだったりします。ほんとうは、もっと、このことについても突き詰めて考えたり書いたりしてみると、いいのかもしれませんけれどねえ。さしあたって、といいますか。取り急ぎ、といいますか。そんな近況。近況ノートですから!

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