さていきなり本文を見ていこう
ポップコーンカップの隅には、クズしか残っていないし、氷の溶けたジュースのカップに付いた結露もぬるくなって、手が気持ち悪い。
誘った手前、だらだらと流れる文字を眺めるしかなかった。無機質な文字が流れていく。この映画に関わった多くの人の名前。
名も無い観客の俺とカノジョ。
本編はすでに終わっているのに、文字だけの名前をひとりひとり確認するかのようなカノジョの横顔を見ている。温くなっているだろうジュースの残りを音も立てず飲んでいた。もうノイズにはならないだろうに。
まっすぐにスクリーンを見つめる横顔。
綺麗な瞳に文字が映っているのだろう。俺に向けて欲しいなんて欲張りなのかもしれない。
社内では絶対に見せない横顔。
映画の誘いを断られなかっただけでも奇跡。
文字の流れる余韻に浸るカノジョを邪魔する権利は俺にはない。カノジョのテリトリーに入る権利も。
この時間が終わってほしくないと思う自分が、ずるい気もした。いつもは本編が終わるとすぐに帰るのに、俺はつくづく欲張りな人間だ。
明るくなった場内に残っていたのは二人だけ。気まずくて何も言えなかった俺の代わりにカノジョが呟く。
「エンドロール見ていると、なんだかしみじみしちゃうね。」
打ち終わった花火を惜しんでいるかのように、少しだけセンチメンタルな顔も俺の心を捉えて離さない。
過去の誰かとの関係を思い出しているのだろうか。
俺達はオトナだ。そういう酸っぱい思い出が一つや二つあってもおかしくはない。
「また……一緒にエンドロール見てくれるかな?」
ちょっとだけ高いと思った薄いパンフレットが入った袋を大事に抱えながら、少し俯いていた綺麗な顔が見えなかった事が残念だったけど──
次に見たらいい。
エンドロールなのに続くカンケイ。終わりから始まる恋も悪くはない。
「エンドロール…最後まで見るの好きだよね?」
カノジョから彼女に変わった人は笑いながら話す。
「別に好きじゃないけど、この余韻に浸る感じはいいと思う。エンドロール好きなのは君じゃないの?」
否定する彼女は不思議そうな顔をしている。ふたりで食べたバケツのような入れ物のポップコーンは一粒も残ってない。
ふたりでついばんだそれは、いつも少し足りなくて、その分手をつなぐ無言のルールになっていた。
「なんで?」
「初めてのデートの時にエンドロールまで真剣に見ていたから。」
彼女の顔が薄明るい映画館の照明でも、赤く染まっていくのがハッキリと分かった。何がそんなに恥ずかしいのか、柔らかなくちびるが紡いだ言葉が、俺にも感情を繋いでくれた。
「前を向いてごまかしたいけど、少しでも同じ映像を見ていたかったから。」
ずっとこの人と同じものを見ていきたい。どちらかのエンドロールをひとりで見ることになっても。
こんな時に気の利いたセリフなんて思いつかなくて、だけどここしかタイミングしかなかったことは、俺が脚本家でも監督でもこの場面を使う。
安っぽいペラペラな言葉しか出ないのが俺の全てで、彼女にならそんな無様な姿を見せても構わないと思った。
「俺とずっとエンドロール見てください。この先も!」
目をそらすな。まっすぐに彼女を見ろ。
俺の中のちいさな監督は指示を出し続ける。
映画じゃなくて、リアルな出来事。その現実を彼女と共に歩きたい。
「…うん」
残っていた観客から、まばらな拍手が起きた。恥ずかしいとか全部吹き飛ばして、最後の最後で、脚本・演出「ふたり」の名前が流れた気がした。
カッコ悪いけど、温かくて俺らにしか作れない、最高のエンドロールを流して、どちらかが『いい作品だった。』と思える長い作品を作っていこう。
俺らの作品はもう始まっているんだから。
˚˙༓࿇༓˙全体的ダメじゃこりゃポイント˙༓࿇༓˙˚
文字配分かおかしい。5.5対4.5くらい。
最後の締めの一文が決まらない!決まっていない。んだからは要らなかったな。あとで削る。
彼女の輪郭が弱いというか立体性が弱い。仕事ではしないネイルだとか、私服がスポーツ系とか、ゆるゆるとか。髪をいじったり、上目遣いしたりとか。
俺も、ポロシャツにジーンズの無難すぎる組み合わせとかさ。
もう少し、立体的に書こうぜ。
˚˙༓࿇༓˙べ、別に褒めてなんかいないんだからね˙༓࿇༓˙˚
純文学モドキ書けたよ〜
週一で書けるといいね(他人事
反省メモ
他にツッコミがあれば書いていただけると助かります