⚠️ 注意:この記事は『天使創造』の物語構造に深く関わる内容を含みます。
未読の方はご注意ください。
この度は『天使創造』をご愛読いただき、ありがとうございました。
構想は数年前から温めていましたが、実際に書き始めたのは今年7月。
8/8より連載を開始し、皆さまの応援に支えられて完結まで辿り着けました。
心より感謝いたします。
さて、本題です。
『天使創造』の最終話は、あえて結末を明示せず幕を閉じました。
朱の空を裂いて飛び去る一機の戦闘ユニット――それが誰なのかは、本文中で語られません。
本作は、読者の心に積み上がった体験がそのまま結末を決めるマルチエンディング構造を持っています。
この構造は第0話「転轍点(Switch point)」と呼応しています。
0話は本編の外に置かれ、語り手が誰なのか不明瞭でした。
あのシーンが、実はオルハの少女時代かもしれないし、あるいはトーカが物語に参入した瞬間かもしれない。
始まりが“揺らぎ”の中で描かれたように、物語の終わりもまた“揺らぎ”に委ねられています。
では誰が勝者なのか?
その間に読者がどういう姿勢で物語を追ってきたかによって、結末の受け止め方が変わります。
・トーカに共感して旅を共にした読者
最後に飛び立つのは当然トーカ。託された想いを背負い、未来へ飛び立った「自分の選ぶ主人公」として映るでしょう。
・設定や世界観に魅力を感じ、俯瞰で物語を眺めた読者
知性と合理性を体現したオルハが勝者に見えるかもしれません。
ほろ苦い現実を突きつけるバッドエンドとして。
この分岐は、読者自身の読解体験そのものに委ねられています。
ダイジェスト版を用意した張本人がこんなことを言うのもなんですが、時短で触れた方は、主人公との共感が育まれず、オルハの勝利に映るかもしれません。
「正しい体験」を押し売りするつもりはないですが、やはり自宅で映画を早回しで観るのと、劇場で観るのとでは同じ体験にはならないと思うのです。
ゲームのように選択肢で分岐するのではなく、どんな結末を選ぶかは、あなた自身の旅路に委ねられています。
そして、その結末こそが、あなたが選んだ物語です。