イベント準備中は連載しているモノについては一旦置いておこうと思ったのですが、それでも思い付いたら書きたくなってしまうんですよね。
やらないといけないことがあるというのに、物語が逃げる前にその裾を掴んで逃げないように書き留めて、頭の外に出してしまえ……ということで書いたのが短編『カニをすくう』でした。
以前近況ノートで書いたような気がしますが、先月、東海地方の海にてワタリガニすくいというのを実際にやったんです。
そういう体験を提供している業者さんがいらっしゃるんですが、日暮れ前に出航して真っ暗な海の表面をヘッドライトで照らしながら、水面近くをすいーっと移動してくるワタリガニを網ですくうという内容で。
3時間ぐらい海の表面とにらめっこしては「カニ来たー!」「逃げた!」「すくえたー!」という感じでなかなか楽しい時間だったんですが、この時すくったワタリガニの中でちょっとサイズが小さいのがいたのでリリースしたんです。
このことを思い出した時、脳内に『鶴の恩返し』と『蜘蛛の糸』がふと頭を過ぎりまして。
「助けたワタリガニがやってきたら、ちょっとその絵面がシュールだろうな」とか妄想が始まってしまったという(笑)。
村上春樹さんの作品で『夜のくもざる』という短編があるんですけど、夜中に原稿を書いていたらくもざるがやってくる……という、シュールというか不条理というか、そういう内容なんですが、私、あの独特の空気感みたいなのが凄く好きで。
そんなことを考えていたら夜中にワタリガニがやってくる話が出来上がりました。
恩返しどころか更にお願いごとをしてくるド厚かましいワタリガニですが、カニと人間の会話を書くのが楽しくて、多分私、この話の会話部分はほぼ考えることなく頭に浮かんできたままにアウトプットしてます。
そういうものの方がツッコミもスルッと出てきて良いなぁと改めて思いました。
もうひとつの短編『差入受難』ですが、こちらは文学フリマ大阪の雰囲気を肌で感じた時の記憶というか熱みたいなものを忘れないうちに文章に閉じ込めておこうと思った一作です。
実際、文学フリマの出店者さんには商業で出版されている作家さんもちょこちょこいらっしゃって、カクヨムさんのナツガタリでミステリー・ホラーの書き方についてインタビューが公開されていた木爾チレンさんのブースはサインを求める方々で列が出来ていて、「最後尾列の札を持つ文化がここにも……!」と思ったものです。
商業本では出来ないであろうことも同人誌ではやれたりするので、自由に作りたいものを作ることが出来る楽しさがあるのかもしれないなぁと思ったりしましたが、それぐらい本当に色んな方々が出店されてたんですよね。
で、こういう即売会の空気感だったり見えた景色みたいなものを背景に、『こんな出店者はイヤだ』というのを書いてみたのが『差入受難』というお話でした。
ウェブの世界って独特だなぁと改めて思います。
作品を読んでいると、作者の考えや脳内を見てるような気になるし、カクヨムさんだと近況ノートを読むと、その人の生活の一部だったり感じ方だったりが垣間見えるし、コメントをやりとりすることで知った風な感覚になる癖に、実際には顔は知らないしどんな仕事をしているのかも分からないし、家族構成や住まい、休日は何をしているのか、よく聞く音楽はどんなものが多いのか、友達付き合いは活発なのか、インドアかアウトドアか、服装の趣味はどうなってるのかなど、知らないことの方が圧倒的に多い訳で。
本当のところなんて知らないのに、「この人は丁寧にコメントを返してくれるからきっといい人」「言葉遣いが丁寧で配慮のある書き方をされているから、気配り上手な人」などと、受け取る側が勝手に像を作り上げていくという……。
とまぁ、こんな風に書くと「じゃあお前はどやねん」と言われそうですが、さてどうなのでしょうか。
そこはもう、皆様の受け止め方にお任せ致します。
うふふ。