雷藤和太郎

全てが思い通りになるというのは、全てが思い通りにならないことと同じだ。 「思い通り」が個人の願望である以上、利他的には限界がある。 幸福を願うすべての生き物に幸福を。 しかしそれは…続きを読む

他者から見放された人間は、簡単に狂う。 その狂いこそが人を脅かし、驚かし、恐ろしくする。 淡々と積み上げられる狂気への描写は、その空気に触れられるのではと思うほどに臭い立つ。 その…続きを読む

小豆洗いは妖怪の中でも比較的無害なイメージだ。 ある地域によっては縁起の良い妖怪であり、恐ろしさとは無縁である。 ところで、あなたの日常に見えぬ場所に妖怪が潜んでいない保障はあるだ…続きを読む

私たちは色んなものを他人とシェアする。 昼食をシェアしてより多種を味わい、家をシェアして家賃を折半し、写真をシェアして思い出を共有しする。 悲しみをシェアすれば半分になり、楽しみを…続きを読む

ポーカーは心理戦の王道だ。 賭け事に用いれば相手の一挙手一投足がブラフと欺瞞に満ち、ヒリヒリした緊張感はプレーヤーの勝負勘を発揮させる。 弱い手役を強く見せる、強い手役で大きく賭け…続きを読む

現実を受け入れられないときに、人は夢に逃げる。 しかし、逃げた先でもどうしようもない現実にぶち当たったら？ 目覚めたくない夢の中で、もがいて、苦しんで、変えたいと願って……。 夢は…続きを読む

当たり前のように一緒だったからと言って、いつまでも当たり前のように一緒にいられるわけではない。 だからこそその一瞬を大切にしなければならないのに、別れてみないと人はその大切さに気付…続きを読む

現実世界ではパッとしない主人公が異世界で俺tueeeして、現実世界に戻ったときに自信をもって生活できるだろうか。 それとも、現実世界で作り上げたペルソナを再びかぶるのだろうか。 も…続きを読む

子どもが、自分と違う誰かと出会うという経験は、何物にも代えがたいことだ。 自分と違う者と仲良くなることで、自分が作られる。自分が何者なのか、分かる。 少女に出会った少年は、何者に成…続きを読む

自分の思いを形にするのはとても大変だ。 言葉、絵、彫刻、運動、音楽、歌、工作、折り紙……。 巧拙はあっても、そこに込められた思いを否定することは誰にもできない。 形になった思いは、…続きを読む

いちごのショートケーキは、いちごが少し酸っぱいからこそ美味しい。 だがこの物語は、徹頭徹尾甘いのだ。なのにどこを切り取っても美味しいのだ。 ラムネのように爽やかで、水菓子のように瑞…続きを読む

他人に見せる偽物の顔と、自分が思う本物の顔。 どちらが素顔だろうと、他人に映る顔は他人にしか分からない。 炎はエネルギーの塊だ。 人間は、エネルギーのより強い方に、どうしようもなく…続きを読む

レビューでこういうひとこと紹介をすると、反発が来たり不適切な投稿とそしられるかもしれない。 しかし、この物語のエッセンスは後半ほど輝く。 特に別譚は作者の文章力が爆発している。 逃…続きを読む

他人同士が繋がって、同じ屋根の下で一緒に暮らす。結婚とはそういうものだ。 だから、独り身歴が長いほど互いにわがままにふるまってしまう。 恋人や夫婦には、間を取り持つバーテンダーも美…続きを読む

たった一言が、その後の人生を大きく左右することがある。 その言葉を放った側がどんなに軽い気持ちだとしても、時に言葉は人間一人の命よりも重くなることが、ある。 蘇るのは、神のみの御業…続きを読む

私たちは、先人の作り上げた知恵を礎として生きている。 記憶され、記録され、後世に残されたものが経験として積み上がる。 ならば、何物をも残すことなく志半ばで死んでしまった者達は……？…続きを読む

美しいと感じるものには、二種類ある。 一つはその美しさによって対象を誘い、自分に有用なものを引き寄せるもの。 もう一つはその美しさによって相手を威嚇し、触れがたさを覚えさせるもの。…続きを読む

異世界の生き物に思いを馳せるとき、姿形の他にどうしても気にしてやまないのが「味」だ。 食べるというのは能動的な楽しみで、旨いものは人を幸せにさせる。 ただただ美味いものが、真に迫っ…続きを読む

専一に磨きすぎた才能は、本能と見紛うほどになる。 しかしその才能は決して正しいものではなく、主人公は人間であるにも関わらず異形となる。 まるで山月記だ。 全てを投げ捨てた先に、主人…続きを読む

ありふれた設定には破天荒な文章がよく似合う。 破天荒な設定にはありふれた文章がよく似合う。 女の子も同じだ。 大人しそうな女の子が魔法少女であるからこそ、僕らはそれをすんなりと受け…続きを読む

他人を唆し利用するのを悪と言うのなら、悪魔は確かにその道のプロフェッショナルだ。 悪は糾弾せねばなるまい。 人間の死後の世界で生きる天使と悪魔。 死後の世界でもどちらかとして生きな…続きを読む

強いからこそ、誘い込むためにする擬態がある。 抗いがたい強い力の前に、対象は無力だ。 そこには自分の意志などなく、ただ誘われるがままに生かされる。 もしかして、あなたも同じように社…続きを読む

ネット小説をパソコンで読むならば、きっとマウスホイールを使う。 スマホで読むならば、人差し指で擦るように動かす。 文章は水飴、人差し指は一本の箸。 練っても練ってもページは円環とな…続きを読む

異世界転生はチートと共にある。 しかしそのチートの出所は常にそれを設定する神より出ずる。 成すがまま、思うがままに生きようと願うのは人間であり、その欲望こそが神の贄そのものなのだ。…続きを読む

バス停は誰のためにも開かれており、様々な人がいる。 公共空間で突然話しかけられる他人をうっとおしく思う人もいるだろう。 だが、そこは「交流してもよい空間」だ。それも病院なんかよりは…続きを読む

電波というエネルギーが意思を持つことがあるだろうか？ この作品を擬人化というのは簡単だ。しかし、私たちの神経は電気信号というエネルギーの受け渡しで成り立っている。 しかるに、電波も…続きを読む

事件に必要なのは動機だ。動機こそが犯人を輝かせ、事件を際立たせる。 動機のない事件は事故のようなもので、物語にならない。 事件の奥にある事件。動機に至る事件こそが元凶だ。 それは大…続きを読む

やりなおせるのに、やりなおしたかいがない。 複線に入った電車が再び同じ線路に戻ってくるようなやりなおしの人生。 それでもやりなおしますか？やりなおしたって意味がないのに。 未練なん…続きを読む

何を人間とするかという哲学的な問いを、物語に落とし込んだ作品。 主人公は超常の存在によって、対象が人間かどうかを判定する。 明らかに人間なもの、明らかに人間でないもの。しかしその判…続きを読む

本音を酒の中に隠して我慢することを覚えると、酒が入った時に思わぬ本音が出てしまう。 あなたがお酒を飲めるなら、辛口の酒を飲んで読むのを勧める。あるいは塩辛い肴を用意するのを勧める。…続きを読む

力の強い姉と、力の弱い妹。
姉は妹を思うが、果たして妹は姉を思っただろうか。
死にたいと思うほどの呪いは、あるいは死を招き入れてしまう。
死よりも恐ろしい思いが、ここにある。

落花流水とは言うが、受け止めてくれる流水が無ければ花は流れることはできない。 時の流れに身を任せるための、初めの一歩を踏み出せないのだ。 そういう時は、身近な誰かに背中を押してもら…続きを読む

もしかしたら、子どもは誰でも心にもう一人の自分がいるのかもしれない。 別に一人じゃなくって、二人か、それ以上かもしれないけれど。 もう一人の自分は、自分に愛をくれて、勇気をくれて、…続きを読む

超常現象とサイエンスフィクションの交わる近未来SF。 魔女同士の母娘喧嘩は、父親を味方にした娘が勝つかと思いきや……。 母は強く、娘はしたたか。 翻弄されるのは、喧嘩に付き合わされ…続きを読む

社会の中で生きる以上、人は誰かに自分を決めてもらう必要がある。 しかしそれを頑なに拒んだ時、社会は突然牙を剥く。 お前はお前だが、社会はそれを認めはしない。しかしお前は社会の中で生…続きを読む

その奥に行くと、宝物があるかもしれない。胸躍る体験があるかもしれない。 でも、中に入るには時間がかかるし、危険もある。 そういう時に「この洞窟は、こういう宝物があるよ」と教えてくれ…続きを読む

無邪気な子どもは、好き嫌いではなく単純な好奇心によって花を摘む。 花を摘んで実を結ばなくなり、それが己のエゴだと気づくことは稀だ。 しかし、年を経ればまた花は咲く。咲いた花はやがて…続きを読む

年長者は、そのレールだけが幸せの一本道だと言ってレールに乗せようとする。 真面目で愚かな子ほど、それを信じる。それでうまくいく子“も”いる。 では、そのレールに乗れずに、しかしその…続きを読む

人生で、たった一人の運命の人と巡り合う。 殺されず、生き永らえることは幸運だろうか？ 気まぐれに魔女に愛された男は、魔人となって娘を手に抱く。 男は悲哀を嘆くこともなく「運がいい」…続きを読む

羅針盤は北を指し示すものではなく、力の方向を示すものだ。 しかし、その目に見えない力の方向に従うからこそ、羅針盤は北を向く。 だとすれば、その羅針盤に別の強力な力が働けば……？ 求…続きを読む

当たり前に続くと思っていた日常、何気なく描いた一枚の肖像。 因果のねじれが織り合わさって、一枚の不幸を編み出す。 人間の世界にはよくあることだ。超常の偶然は超常の存在にしか解決でき…続きを読む

嵐の風雨と厚く覆った雨雲、焚かれるフラッシュは警察の証拠押収とマスコミの取材。 人々が嵐のように家主である両親を責め立てる。 災害に耐える両親、最後の一文に突きつけられる真実。 し…続きを読む

美しいものは、なぜこんなにも壊れやすいのだろう。 わずかな亀裂が、わずかな思い違いが、ほんの１ミリの筆のズレが、その美しさを決める。 あまりに繊細過ぎるものゆえに、人は美しさに惹き…続きを読む

自分の選択が誰かを傷つけるとしても、そのエゴを押し通したくなることがある。 傷つき、痛み、悲しむとしても、それでも誰かと一緒にいたい。 共に生きたい。 休日の終わりが近づくように、…続きを読む

完全な生物の、不完全な願い。 そもそも願いというのは不完全なもので、未来に託す希望そのものだ。 しかし、どんな生物も、未来にほんのわずかでも希望が無いと生きられない。 生き止まりの…続きを読む

「ぬいぐるみ」という字面に騙されてはいけない。 これは「縫い包み」である。縫って、包んだ物である。 何を縫って包むのか？普通は綿だ、ふわふわでもふもふのワタだ。 ワタを縫って包むも…続きを読む

一方的な簒奪こそが戦争の原因であるなら、人間から人間の体を簒奪する天狗の行為は戦争の引き金そのものだ。 私たちは、天狗と交流できない。交流するための言葉を持たない。 一方的な簒奪が…続きを読む

かつて、電話交換手という職業があった。 技術の発達によってその職業は無人の技術に取って代わり、人々から職を奪う。しかしその新しい技術もまた、別の技術によって駆逐されようとしている……続きを読む

４月１日は嘘をついていい日だ。 嘘は、人を傷つけるものもあれば、人を慰めるものもある。 嘘は時に、刺々しい現実をそっと包んでくれる。 世のあれこれを飲み込むためには、嘘でステアする…続きを読む

この物語で一番自由なのは誰か。 箱庭の中で英雄になった人間か？これから英雄になる人間か？ それとも、語り手である創造主か？ 創造主さえ操れるものが「あった」のならば、それが最も自由…続きを読む