白花冥幻譚の表紙ですが、こんな感じになってきました。
(絵師様、デザイナー様、本当にありがとうございます)
リライトしている冒頭も紹介します。
とにかく初速と掴みを何とかする……!
僕の好みとして、書き出しは無風から淡く立ち上がり、おもしろいのかどうなのかわからない中を手探りで進むのが好きなのですが、それが市場と逆行しているらしく(うすうすわかってた!)……
これまで完全逆張りの書き方をしていた様子。
◆ ◆ ◆ ◆
薄墨の如く澱んだ流れが、森を浸している。
白衣に緋袴の、幼さを残す巫女――沙耶はその澱みの中にいた。
足がすくんで動かない。澱み……瘴気の流れに紛れて奇妙な声がする。
「賊が来たぞォ! 逃げろ」「やめろ、金は出す!」「命ばかりは……どうかお助けをォ」
悍ましい声の重奏。ここで何があったのかは知れぬが、きっと旅人が山賊にでも襲われたのだろう。叫び声や悲鳴がこだまする。瘴気に沈んだ想いと願い。
葉の天幕を透かして夏の日差しが照らすというのに、沙耶の肩や腕は冷えていた。冷え切っていた。瘴気に呑まれかけている。能力ゆえに、定めゆえに。
それでも足を踏み出し、瘴気の流れを追ってゆく。獣道の先の窪地に、小さな石塔があった。石塔を中心に、周囲の瘴気が渦巻いている。
(溜まっているんだ。澱みが……瘴気が。出口を求めて)
沙耶はそう思いながら、近づいてゆく。膝の高さほどの石塔の先端は、天に向かう矢尻のような形。表面には数匹の蟻がつき、端々が欠けている。触れるだけで祟られでもしそうだ。
「その石塔がどうした」
と云ったのは、背後を追ってきた蓮二だ。黒ずんだ着流しに行李を背負い、端正ながら険のある顔をいっそしかめた。
左眼の上へ縦の大きな傷痕が走り、瞼が引きつっている。くすんだ消し炭色の蓬髪に、左腰に佩いた大振りの太刀。
「石塔の周りに、瘴気が、滞っておりますゆえ」
沙耶はそう云って石塔に顔を向ける。
「なんだと」
と蓮二は目を細めた。――どうやら蓮二にも、少し瘴気が見えるらしい。
「だからなんだ。放っておけ。益体もねェ」
「いえ、捨てては、おかれませぬ」
そうは云ったものの、沙耶は瘴気に沈む石塔を見て、固唾を呑む。心に浮かぶのは、先輩巫女の穏やかだが厳しい顔。
『鎮め巫女なれば。道中の穢れとて浄め、巫女の規範を示すのです』
瘴気は渦巻いて、ますます重く暗く石塔に詰めかけ、叫び声を耳に流し込んでくる。
(浄める……。そうだ、やらなければ。鎮め巫女のお役目の、このわたしが)
沙耶は石塔に向かって目をつむって両手を合わせると、息を大きく吸い込んだ。そしてゆっくりと吟じる。
白花は 穢れし土へ根をはらむ
花開きては 浄しなるかな
蓮二はそんな沙耶の姿を、苦々しい心持ちで見ていた。
沙耶が吟じたのは、たしか『白花(しろはな)ノ浄歌(じょうか)』と呼ぶものだ。
沙耶は両手を石塔に伸ばすと、赤子でも抱くように手を当て、静かに目を閉じた。――はあ、と音をたてて息を吐いた。
ついで、沙耶はわずかに顎を上げて、こんどは深く息を吸い込んだ。
まるで、あたりの瘴気をすべて取り込もうとするかのように……。
巫女の顔は雨に濡れた薄衣の如く青黒く染まった。がくりと前方に崩れ、石塔にもたれかかる。浅く早い呼吸をしている。
「おいッ、しっかりしろや!」
蓮二は思わず駆け寄りそうになるが、それをこらえる。
(ちッ。甘えられたら敵わねェ。おまえが好んで、やったことだ)
代わりに目を細めて、また瘴気の流れを見る。
――先刻までひしめいていた瘴気の大半は消えていた。その代わりに沙耶の体は、黒い藻のような瘴気に包まれていた。
沙耶は屈み込んだまま、石塔から体を起こした。こめかみに青筋を浮かべ、血の気の引いた朦朧たる表情でその目を閉じる。
◆ ◆ ◆ ◆
こんな感じで……。まだ初速はもっと攻められるはず!書き出し!
イベントまでには間に合うか?
