洞貝 渉

　冬の気配はかなり薄くなり、はやくも夏の兆しが見え隠れし始めた春の日々。 　季節は着々と前進していくのに、私は未だに新生活に馴染むことができずその場で足踏みをしている気分だった。

　村のみんなの役に立ちたい、と青年は願った。 　役立つために体を鍛え、性根をまっすぐに伸ばすよう、絶え間なく努力し続けた。 　そうして青年は、心優しく強靭な精神と肉体を持って成…

　なんで夜は暗いの？ 　それは、お日様が居眠りしてるから。 　なんでお月様はずっとついて来るの？ 　あなたのことが羨ましくて、いつか隙を見つけて入れ替わってやろうと思っているの。

　本棚と壁のすき間に本が落ちていた。 　これはまずいと思い、本を拾い上げて恐る恐る頁を開いて見た。 　案の定、活字がぐちゃぐちゃになっている。

　人間のために尽くすのではない、徳を積むために善行を重ねなさい。そのための慈悲を覚えなさい。あなたにはそれだけの力があるのだから。 　母様がよく言っていた。 　私には未だに慈悲と…

キツネのぬいぐるみが好きな子どものお話。

「僕を人間にしてください」 　人間の友だちになるために作られた機械人形が恥も外聞もなく言い切った。

【あなたが今、一番に望むことは何ですか？】 ※　https://bookstore.jp/reading/for/you　は架空のサイトURLです。 ※作中に登場する本…

　本を読めと大人は言う。 　読書が柔軟な心を育てる、読解力を培い思考力も上げる。だから本を読め、と。 　私はそうは思えない。 　だってこんなの、ただの字の羅列じゃないか。 　黒々…

　時計は鶏に憧れている。 　鶏は能動的だ、と時計は思っていた。 　一方時計は受動的だ、とも思い、時計は落ち込んでいた。

『織田信長も見た？　442年ぶりの「皆既月食」×「惑星食」ダブル天体ショー　各地で夜空を見上げる人々 8日夜、442年ぶりとなる「皆既月食」と「惑星食」のダブル天体ショーが夜空…

　光源はどこだろう？ 　私は両手を前に突き出して恐る恐る足を運ぶ。 　足場は悪かった。ごつごつとしたものを足裏に感じながら、転ばぬように注意を払う。

　首を傾けてお守りを覗き込んだ拍子に、マフラーがまたずり落ちた。 　私はマフラーを巻きなおすため、いったん人込みから外れることにする。 　社からもおみくじやお守りのあるところから…

ねむれない人々に、素敵なねむりを届けるため、今日も上質なひなたを探します。

　“誘い猫”の話は、都市伝説に興味のない私でも聞いたことがある。 　ローカルな都市伝説なので、口裂け女みたいな全国的に有名なものではないけれど、この地域の人なら、たぶんみんな知っ…

　代り映えしない大量の水の上に、いつの間にか、人間が立っている。海鳥や跳ねる魚すら見かけたことがないのに、水の上に立つ人間が見えるだなんて、私もとうとう幻でも見るようになったか。…

次世代を担う若年層の確保よりも、 中高年層の健康でより長く生きるということへの関心が高まった未来のお話。 ※科学音痴が背伸びして書いております。生暖かく見守ってもらえましたら幸…

「海の向こうにも、人類はいるんだよね、ビディ？」 「はい」 「みんな眠ってるのかな」 「はい」 「一人くらい起きてる人、いるんじゃないのかな？」 「いいえ」 「でも、わたしは起き…

クモノイトという現象が初めて起こったのは、今から一年ほど前のこと。 最初の被害者は（もしかしたらもっと前にも被害者はいたかもしれないけれど、少なくともテレビで報道され世間に認識さ…

日記（にっき）は、個人が日々の出来事を記録した文書である。単なる記録として扱われるものから、文学として扱われるものまで、その内容は様々である。ある人物の生涯にわたって記されるよう…

真夜中の語は、　深夜（しんや）、深更（しんこう）、夜半（やはん）（気象庁では「夜半」を「0時の前後それぞれ30分間くらいを合わせた1時間くらい。」としている。）と同様に夜深くの時…

『斉藤由貴 ネコの手も借りたい』（さいとうゆき ねこのてもかりたい）は、ニッポン放送で1986年4月19日から1995年4月9日まで放送されていたラジオ番組。 1985年10月…

ヒーロー（英語: hero）は、英雄、勇士、華々しく活躍した人、敬慕される人物、小説・演劇等の男性主人公。女性の場合はヒロインと呼ぶ。 ――フリー百科事典『ウィキペディア（Wi…

出逢い（出会い、であい） 出逢い (テレビドラマ) - TBS系列で1981年に放送されたテレビドラマ。 出逢い (映画) - 1979年のアメリカ映画。 出逢い (安全地帯の…

焼き鳥（やきとり）とは、鶏肉を一口大に切ったものを串に刺して、直火焼き（串焼き）したものである。 ――フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』

米寿（べいじゅ）は、数え年の88歳のこと。また、その祝い。賀の祝いのひとつ。米寿という名は、「米」の字を分解すると「八十八」になることに由来する。米の祝い（よねのいわい）とも言わ…

喜劇（きげき、英: Comedy）は、人を笑わせることを主体とした演劇や映画、ラジオやテレビのドラマ作品や、それらのなかの笑いを誘うやりとりを指す。コメディとも呼称される。 ―…

第六感（だいろっかん、sixth sense）とは、基本的に、五感以外のもので五感を超えるものを指しており、理屈では説明しがたい、鋭くものごとの本質をつかむ心の働きのこと。一般に…

推し（おし）とは、主にアイドルや俳優について用いられる日本語の俗語であり、人に薦めたいと思うほどに好感を持っている人物のことをいう。 「推し」という語句は2019年9月刊行の『…

二刀流（にとうりゅう）は、両手（右手と左手）にそれぞれ刀もしくは剣を持って、攻守をおこなう技術の総称。二刀剣法とも呼ばれる。 転じて、二つの異なる手段をもって事にあたること、あ…

花が好きな妖精と歌が得意な少女がさまざまな町を旅する物語。 見えるものがすべてではないけれど、 見えないものを、人は見ることができない――。 ❁♪❁♪❁♪ Ⅰ.造…

人間と同じ姿のモノたちが、人間のために、人間のように振舞い続ける。 そこに、人間がいなくとも。 それが、人間のためだと信じて。

きつねのなにか様主催の自主企画。 https://kakuyomu.jp/user_events/16816452221279865815 遅ればせながら、とても面白そうな企画…

魔法と科学、呪いと祝福に翻弄された小人と少女が出会うとき、でこぼこな物語は動き出す。 ※この作品は他サイトにも投稿しています。

遠い昔、身勝手で不完全な人間という生き物がいた、らしい。

Twitterで見かけた♯架空の夏休み日記 の企画が面白そうで、軽い気持ちで参加してみました。 ✔ 7月から1ヶ月間、1ヶ月後の日記を書く。 ✔嘘でも、 ✔1ヶ月後に本当に起こ…

夜の気配とカエルと私の3つ目の物語。

夜の気配とカエルと私。 二つのシュールな結末。 アルビノは何ものにも交わらず、関わらず、延々目的もなく泳ぎ続ける。 ナガレモノはせんもない一コマをくるくると、くらくらと廻り続け…

今どき、こどもはオールシーズン楽しむことができます。 でもやっぱり、4月のこどもが一番おいしいと私は思うのです。 そんな私の、日々徒然な拙い日記です。 ＊4月の分の日記は…

私が度なしの地味メガネを机に置いた時、 ボクは真っ暗闇で戸惑っていて、 俺はムシャクシャをリセットした。 三つの視点からなる物語。 エブリスタにも重複投稿しています。

「こんにちは、妖精さん」 「あらあら人間さん、こんにちは。どちらへお出かけ？」 「ちょっと町までお買い物」 ――女の子と妖精、それからおいしいパンケーキがでてくる童話。 ～…

春が終われば桜が散るように、夏の一週間が過ぎれば蝉が死に絶えるように。 永遠なんてないかもしれないけれど、限りある中での不変は、きっと、美しいに違いないのだから――。 …

独りぼっちの妖精と独りぼっちの女の子の、ちいさな物語。

　花は思った。 　なぜわしは太陽ではないのかと。

　くもが巣をはるように、私はキャンディーを売るの。 　ある人は陸のように、ふうんと無関心に相づちを打った。 　またある人は不思議そうに、それはどういう意味ですかとたずねた。 　ま…

　コンビニへ行く途中だった。 　眠れない夜はいつもこの近道である神社を通り、コンビニへ行く。別段何か欲しいものはないけれど、いつでも変わらずにこうこうと明るいので、行くとなんだか…

☆第1回Temple交流企画 参加作品。 ☆お題は「読めない本」。 ――かわいそうなグリュック。 　かわいそうと言いながら、お隣さんは全然かわいそうだとは思っていないのがわか…

　リモコンの電源ボタンを押したのに、テレビがつかない。 　私はしぶしぶリモコンをひっくり返し、電池をとり出した。 ……シュールで得たいのしれないある夏の話。 エブリスタ…

　私は再び目の前の喉仏に目を向ける。どうして男の人には喉仏なんてものがあるのだろうか。あのでっぱりの中には一体何が入っているのだろう……。 ――本文より。 私と私の友人、友…

ボクはあまり賢い方ではないけれど、まんまるが月という名前で呼ばれていることだけは知っている……。 ※少し残酷な描写があります。苦手な方はお気をつけください。