「井戸があってさ」
私の言葉に、
「はあ? 井戸? なんの話?」
と友人は怪訝そうな顔をした。
「うん、井戸」
「……待って、それ、ホラーか何かなの?
今、書いてるって小説?」
嫌そうな顔になる友人に、私はちょっとネジが外れたように笑う。
「ふふふ。小説の内容じゃなくてさ」
「じゃあ、何の話なの? 突然」
「昔、あったじゃん、怖い映画が」
「あー、あったね。それで?」
「井戸からさ、出てくるの」
「……井戸からだった?」
「違った? 井戸からじゃなかったっけ?」
「え? あの最後のシーンでしょ? テレビからだよ?」
「そうだったっけ? どっちでもいいや」
「何なの、あんた」
「重要なのはさ。それを見た人が感染するってことだよ」
「え? 死ぬんじゃなくて?」
その言葉に、私は首を振る。
「ダメだよ、死んじゃ。読めないじゃん」
「私、あんたの話がぜんっぜん読めないわ」
「感染してもらわなきゃいけないんだよ」
「何に?!」
「私の小説を読みたくなる病、に!!」
「は?」
私は夢見るように遠くを見る。
「皆んな、私の小説を読みたくなるの。
それがどんどん感染して……。
ああ~読者いっぱい……」
「あのさ、酔ってるとこ悪いけど、どうやって感染させるの? 井戸掘るの?」
「え?」
そこまで考えてなかった。
「……」
「……」
「ダメじゃんそれ」
友人の心無い言葉に、私はガックリと肩を落とす。
「そだね。無理かあ……」
いつになったら読者数増えるかなあ……。
というのは、2017年エブリスタの「感染」というお題で書いたものです。
若い……。
そして、いまだに同じ思いです。
書かなきゃ読者は増えるわけないのですが、なかなか新作書けません。
ということで、今回の新作は、色んなところに書いたものを引っ張ってきてますが、短編書くのは好きなのでまた新しく書くかもしれません。
気になるタイトルがあったらそこから読んでいただけると嬉しいです。
全て独立してますのでどこからでも!
とりあえず生きています。
暑い日がまだまだ続いておりますが、皆様のご多幸とご健康を祈っております。