『小説の読み方の教科書』(岩崎夏海 潮出版社)
私が「決めつけ本」と軽蔑するタイプの本です。なにごとにつけても、決めつけた言い方をする人っているものですが、私はそういった人が嫌いです。
一言で決めつけられるほど、世の中の事象は単純ではありません。なんでも決めつける人は、思考を単純化するために自分には都合の悪いことを「なかったこと」にしているのです。
この国の首相もそうらしいですね。
それはさておき。「決めつけ本」ではありますが、私はこの本ではじめて知った考え方に感銘を受けました。それは――
『小説家は言葉を使って「言葉で説明できない何か」を行間に描いている。その行間に描かれたものこそが「小説でしか味わえない何か」である』
――ということです。それは――
『正しい小説の読み方とは、その小説でしか味わえない代替不可能な何かをそこに見いだすこと』
――と言い換えることができるというのです。
その上で「話の筋を追う読み方は正しくない」と断じ、「一度読んで結末を知った後で、二度、三度読むことで「小説としてのおもしろさ」が分かるようになる」というのです。
とてもおもしろい考え方です。