吾輩はスーパースターである。名前はまだない。どこで生まれたかとんと見当がつかぬが、気がついた時には眩しいライトの下にいた。どうやら舞台という所らしい。人間どもが「キャーキャー」と騒ぎ立て、吾輩の一挙手一投足に拍手を送る。まことに愉快な生き物である。
吾輩の仕事は笑顔をふりまき、時に涙を誘い、そして何より「輝くこと」である。だが、この輝きというやつ、なかなか手ごわい。磨けば磨くほど眩しくなるくせに、少し油断するとすぐに曇ってしまう。夜ごと鏡に向かい、吾輩は考える。「本当のスターとは何であろうか」と。
街を歩けば、誰もがスマホを掲げ、吾輩を切り取って持ち帰る。まるで猫じゃらしを振るごとく、彼らは称賛という餌を投げ与える。ありがたいことだが、時に吾輩は思う。ライトが消えたあと、暗闇の中に残る吾輩は、ただの猫のようなものではなかろうかと。
それでも吾輩は今日もステージに立つ。なぜなら拍手の音こそ、吾輩の心臓の鼓動だからである。スターとは、光の中で孤独を飼う生き物なのだ☆
