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読書メモ㉖

うっう。「女はそれを我慢できない」と「幼馴染が魔王になったらしいので捜しだして更生させます」が、第8回ネット小説大賞一次通過しました。よかったよう、うう(/_;)

「女は~」はゼロコン応募用に書いたもので中間通過はしたものの、その後出してみた他所の公募コンテストでは箸にも棒にも引っかからず、自信作なのになんで~中途半端な書き方しちゃったからだな~紗紀子ちゃんごめーんと不甲斐ない思いでいたのですけど、ここで手ごたえがあって、心底ほっとしました。まだ一次ですけど。

にしても、私なろうでぜんぜん読まれてないんですよ。ポイントなんてたった2桁で。底辺of底辺てやつなのですけど、それでも一次通るのかとちょっと感心でした。


さて、読書メモです。

『カップルズ』佐藤正午(集英社)

以前Han Luさんに教えてもらった一冊。おもしろかったです!!

とある街に流れる、なんてことない噂を耳にした主人公(小説家)が、好奇心から証言を集めたり、それを元に噂に登場する人々の物語を構築してみるという連作短編。
描かれていること自体はなんてことないことばかりなのですよ、だから何なのっていう。その描き方がおもしろい。「え、どういうこと?」「それで、それで?」「ああ、うん。なんかわかるな……」って没入できちゃうんです。WHATよりHOWですね。

こういうのって、大仰な舞台設定や過剰なキャラ設定、派手だったり御涙頂戴の演出による面白さとは真逆の、なんてことないことだからこそ共感できる、じわじわくる面白さだよなあと。そしてこういう題材を面白くするにはHOWが必要なんだって。

もちろんエンタメ的な、遊園地のジェットコースターみたいなおもしろさだって良いのですよ。瞬間的にきゃーってなって、あー面白かったで満足できる。
一方で「読書は登山と同じ」といわれるように、一文一文をかみ砕きながら進んで、自分だけの感性で惹かれるポイントを見つけたり、気になったことがあったら立ち止まってみたり、自分のペースで休憩してみたり、そうして最後の文章を大切に大切に読み終えて、そこから見える景色は自分だけの心象風景なはずで。
そういった読書体験ができるように読書力を身に付けなければならないし、色々な読み方、楽しみ方をできるようになりたいものです。読書ってそれだけ奥が深いものですから。


ところで、私がずっと若い頃に鑑賞して、この「描き方」ですごい!となった映画がありまして。古典映画の名作『イヴの総て』です。

お話の筋立ては、今となってはありがちなストーリーなんです。業界の裏側、無名の若い娘が周囲を踏み台にして女優としてのし上がるっていう。
それで何が面白いって、女優さんたちの輝くような美貌と演技の迫力、セリフまわしも面白くて名言も多い映画ではあるのですけど、何より面白いのはその構成。
冒頭は、イヴが名誉ある賞を受賞したその受賞式。イヴに深く関わった人々はフクザツな表情で授賞式に出席している。その関係者たちのイヴについての回想がリレー方式で繋がっていくのです。そして徐々に明かされるイヴの本性。ひょえええってなるのです。ね、とっても古典的(笑) 
でもそれがすっごく面白い。最後、冒頭の授賞式のシーンに戻ってきて、イヴのスピーチをもう一度聞いてみると、もちろん違う見方になるという構成の巧さ。そしてラストシーンにもまた、唸らされちゃいます。今となってはとってもベタなのですけど。
でもベタだからこそ鉄板なのだし、鉄板を成功させるにはそれなりの地力が必要なんですよね。そういえば、こういうことを、『BANANA FISH』のラストでも感じましたね、私。

で、これに感動した当時の私は、こういう構成の小説をいつか書きたい、と盛り上がったのですよ。でも、読んでしまったのですよ、こういう小説。それが林真理子の『ミカドの淑女(おんな)』です。
明治の下田歌子事件を題材にした、林真理子はこれで直木賞を取るべきだったと多数の人がいう傑作です。

描かれているテーマは複雑で深いものがあって、ここではそれは割愛して、今はHOWに注目。この作品の構成も、明治天皇に始まり伊藤博文、大山捨松、日本のラスプーチン飯野吉三郎、宮女たちや内親王、そして乃木希典などなど、歌子に関わる人々の目線を通して下田歌子という人物が浮き彫りにされていくのですけど、その歌子を見る目にはそれぞれの思惑もあって……という、もう、とっても面白い。
で、そんなスリリングな中にもじわじわくるものがあって、終章の帝の決断と、歌子の処遇を任された乃木大将の判断とに、私は悲しくなっちゃうのです。たくさんの思惑がこんがらがってまっすぐではなくなってしまって、そんな中で結局歌子って〇〇を〇〇なだけの「女の子」だったんだろうなと私は思えてしまって。って、内容についても語ってしまいました、てへ。

とまあ、こういう巧い書き方をしてみたいものだと思いつつ、私にはできないだろうなと。だからこその憧れなのですよね~。

9件のコメント

  • 選考通過おめでとうございます!
    ネット小説大賞は一桁ポイントでも通過された方がいたようですね。
    この先、いい結果が出ることを祈っております!

    『イヴの総て』、気になりますね。
    やはり魅せるには構成も重要ですよね。
    ああ、文章も構成も、上手くなりたい(爆
  • ド底辺でも通過するって、夢があっていいですよね(笑)

    自分で話題にしといて何ですけど、構成、どうなんでしょうね。記憶違いがあったらいけないと思って『イヴの総て』の感想コメントをいくつか覗いたのですけど、構成や演出について触れてるのはひとりふたりでした。
    映画でも小説でも、大多数の人はそんなことに注意を払わないのですよ。パルプフィクションだって、拍手喝采する人は多いけど、よくワカラナイ、何が面白いのか分からないって人のが実は多そうだし。私はあれ大好きですけど。

    玄人に褒められたいのなら技巧に凝ればいいけど、しつこいですけど、出版社が求めているのはそういう巧さよりも、オリジナリティとアイデアなのだと思いますよ。
    あと、子どもが好きなのは、洋酒やらビーンズやらを利かせた高級なショートケーキではなく、不二家の三角ショートケーキですからね~。
  • 大丈夫です!
    次の子供向けは正義の味方ですから!
  • ネット小説大賞一次通過、おめでとうございます! なろうかー(遠い目)。確か2年前くらいに応募した気が……。最近テンションが下がり気味だったのですけど、私ももうちょっと頑張ってみようと思いました。

    『カップルズ』読んでいただいてありがとうございます! って私が言うのも変なんですけど、でも、やっぱり嬉しい。そうなんです、この小説、っていうか正午さんの小説はどれも、重要なのはHOWなのです。どれだけびっくりするようなことが起こっているかではなくて、どうってことない出来事をどうやって面白く読ませるかに腐心する。逆に、どうってことある出来事は、どれだけ本当らしく読ませるかに工夫を凝らす。もうほとんど職人と呼んでもいいのではないかと思います。小説巧者と呼ばれたりもしています。

    >一方で「読書は登山と同じ」といわれるように、一文一文をかみ砕きながら進んで――
    私にとっての小説を読む楽しさって、まさにそんな感じでした。書くほうも、それが最終目標ですね。そのためにはやっぱりある程度技法が必要で。

    で、『イヴの総て』。例が渋すぎて、びっくりしました。50年代ですよね。私、たまにふふふん、って感じで映画の話とかしますけど、すみません、見てません。いえ、むっちゃ有名な映画ですし、私の「いつか必ず見たい映画リスト」に入っているし、いい機会なので見ます。見てからまた来ます。ちなみに、『イヴの総て』の演出については……確かにあんまり聞いたことがないかも。『サンセット大通り』は聞くのですけど。

    『BANANA FISH』のラスト――は、アッシュがああなっちゃったことを指しているのですよね。確かにベタで鉄板なだけに、普通は避けますよね。ちょっとひねろうとする。でもあれは、納得のラストだと思います。『ミカドの淑女(おんな)』も未読だー。

    技巧って、本来は普通の人は気付かないようなものであるべきだと思うのです。分かる人は分かるけど、普通は気が付かない。でも、それがあることで内容が大きく充実する。その技巧が物語の本筋に対して有機的に絡まっていればいるほど、その技巧は目立たなくなるはずだと、私は思っています。

    ただ、難しいのは、作り手って結構無意識にやっちゃってることがあるんですよね。タランティーノは……そのあたり微妙ですね。私も『パルプフィクション』むっちゃ好きで、映画館で観たとき思わず「かっこえー」って声に出ちゃいました。

    タランティーノは、ものすごい量をインプットしていて、それもいわゆるB級と呼ばれている膨大な数の映画を見ているので、もう体に染みついて無意識にやってるところもあるのではと。あと、とにかく自分が見たいもの、自分が見て楽しいと思えるものを単純に追及しているだけの気もします。『パルプフィクション』の時系列シャッフルも、とにかくそうすることでかっこよくなる、を追及しているだけの気がしますし。ああいや、どうだろ。むっちゃ計算している気もするし。少なくとも「何が面白いのか分からない」って人のことは考えてませんよね。痛快。

    タランティーノの話をするとこれまた長くなっちゃいますので、このへんで。ではでは~。
  • 私なろうは最終手段だと思ってたのだけどね(超失礼)
    ムーン作品対象のコンテストがあるのも非常にありがたい(掌返し)
    pixivでもノベル大賞やるようになって短編やR18オーケーなのは嬉しい。私の作風のなんてお呼びじゃないだろうけど、間口を広くしてもらえる分には望みを持てるものね。って、なんかもう宝くじの感覚。もう、運だね運。

    「~とは私のことである。」ってめっちゃクセになりますね! キター!って、にやってなるのが楽しい(笑)

    >技巧って、本来は普通の人は気付かないようなものであるべきだと思うのです。

    うんうん。私もそう思います。分かる人には「やるのう」ってにやってしてもらって、気付かなかったとしても「なんかすっごい面白かった!」ってなってもらえたら、それが理想だよねえ。
    ドヤ!って鼻につくのは失敗。さりげなくスマートに技巧を凝らしたいものだけど………… 

    パルプフィクションの時系列は、とにかくインパクトでかくてカッコいいシーンをどん! どん! どん!!って持って来ただけの気がするの。その証拠に、段々退屈になってくるんだよね(こらー!) でも、ヴィンセントがしょーもないタイミングであっさり殺されちゃったことにびっくりして、は!?ってなるんだけど、また退屈になってきて、最終的にエピローグとプロローグが繋がることで、「おお~すげ~~」ってなるっていう……うん? やっぱり計算なのかな???

    私は映画館よりおうち派なので、テレビで深夜枠に放送されるような(つまり流行はもう過ぎた)映画をたくさん観ているのです(笑)
    80年代の『アグネス』『フライド・グリーン・トマト』も好き。比較的新しいのだと『理想の女』とか『イン・ハー・シューズ』とか、こういうのが好きなのだな。

    『イヴの総て』は、『サンセット大通り』と比べたら~って感じの感想が多いのだけどね(汗)
    『BANANA FISH』のラストは、私もあれ以外はなかったと思います。今でいう毒者みたいな人ががーーがー言ってるのもあんまり聞かなかったし。みんな納得だったんだろうね。
  •  遅くなりましたが、一次通過おめでとうございます。
     自分自身の確認はちょうど一週間前に済ませていましたが、今日、なんとなく発表ページを見直していたら、奈月沙耶様のお名前を発見。慌てて駆けつけた次第です。
     私が気づいたのは『幼馴染が魔王になったらしいので捜しだして更生させます』だったので、最初「奈月沙耶様が、いかにもなろうっぽいタイトルの小説を書いておられる!」と驚いたのですが……。カクヨムに来て確認してみたら、以前に自主企画経由で読ませていただいた作品でした。しかも、自分が書き込んだ感想を見て「ああ、なるほど」。

     なろうのネット小説大賞は、本当に低ポイントでも一次選考通過するので、その点は良いですね。特に私のように「せめて一次選考だけでも通過したいなあ」という人間には最適であり、このコンテストがなければなろうを辞めているかもしれない、というくらいです。
     私は今年、たった4ptで一次通過した作品があり、さすがに驚きました。一次通過による宣伝効果で読んでいただけたらしく、その後すぐに14ptに増えていましたけれど、これでも一般的には、まだまだ低ポイントなのでしょうね。

     なろうの方では、私はあまり感想をいただいたり書き込んだりしていないので、「交流ある」という認識の方々がほとんどおりません。だからお知り合いの名前を通過発表ページで見かける、という経験もなかなかできないのですが、こうしてカクヨムユーザーのお名前を目にすると我が事のように嬉しい、というのをおかげさまで実感できました。
  • こんにちは~。

    私も、なろうの方は(というかカクヨム以外はどこも)作品を置いているだけです。なろうの話をカクヨムでするのもあれなのですけど(汗

    カクヨム作家さんのお名前もたくさんありますね。そして鳥川さんの作品はいくつも……! すごいですねえ。

    >「せめて一次選考だけでも通過したいなあ」

    ほんとこれですね。これ以上に行けないにしても、眼には止めてもらえたのだろうということで、ポイントとかPVとか星とは違う評価軸でひっかかったということで、モチベーションを保てます(爆)

    欲を言えば、上に行きたいですが……
  • 『イヴの総て』見ました~。むっちゃ面白かった! こんなに昔の映画を見たの久しぶりだったのですけど、いい。すごくいいです。まず、セリフ。字幕だとかなり端折られているでしょうけど、婉曲表現、比喩表現が素晴らしいです。メモメモ。こんなセリフ書きたい。っていうか、こんなセリフが出てきてもおかしくないような作品世界をやってみたい。

    構成、びっくりするようなものではないですけど、うまいですよね。前半はイヴの内面を描かないので、彼女の本性は分からない(まあたぶんそうなんだろうなとは思いますけど)。初めて彼女の本性が現れるのって、中盤の楽屋でかつらを鏡台に叩きつけるシーンでようやく、なんですよね。

    全く同じ構成で小説にしようとすると、神視点ですよね。それを回避するとなると、複数視点が入れ替わっていく形しかないのかなー。最初からイヴ視点っていうのは……小説だと、それはそれでいいのか。

    ラスト、確かにベタといえばベタなんですけど、これ以外に考えられないラストですよね。私、授賞式が終わって、ラストどうやって締めるんだろうと思ってたんですけど、ああーそうか、そうだよなーと超納得しました。この落ち、この後いろんな作品に影響を与えることになったみたいですね。

    『ミカドの淑女』は未読ですけど、複数視点がパズルのように組み合わさって全体像を浮き彫りにする構成ですぐ思いつくのが恩田陸さんの『ユージニア』です。ジャンルはエンタメ、ミステリですけど、超超超傑作ですので、機会があればぜひ。

    『フライド・グリーン・トマト』ありましたねー。この辺の90年代から00年代にかけての映画、今見たら面白いかもってふと思いました。

    『パルプフィクション』むっちゃ見たくなったー。

    ではまた~。
  • 「今夜は荒れるわよ、シートベルトは締めた?」は覚えてる(笑)
    ウェットの利いたセリフ憧れます。

    字幕って訳者さんによって変わるものね。『インタビューウィズヴァンパイア』の同人作家さんが、どことどこだったか、版元ごとに比べてて(映画のシーン再現のイラスト付き)面白かったっけ。

    そうそう、イヴの本性発露のシーンで「ひえ~~キター……」ってなる。

    そうだね。小説なら、三人称で回想人物ごとに視点を固定かな。視点人物の受け取り方がどうあれ、イヴの言動で読者がうん? ってなればうまくいくと思う。『ミカドの淑女』が三人称、リレー式に登場人物が代わって(帝ではじまって帝に戻って来る)固定視点だから。どちらかといえば心理描写重視で、視点人物の漠然としたもやもやが見えて不穏な感じが伝わってくるの、そこがまた巧い。

    だよね、こうでなきゃってラスト。これからなのか~なるほど。

    そうそう。『ユージニア』前にも教えてもらったよね、読まなきゃー。

    90年代。「ザ・ロック」も好きだったな、何回も見た。
    おうち派だけど、「ダヴィンチコード」と「天使と悪魔」は映画館に観に行ったんだよ、早く見たくて。あれも衝撃だったー。

    映画といえば、今LINEノベルで『キネマ探偵カレイドミステリー』って読んでるんだけど、面白いの。文章もいいし、映画の情報がすごくて。電撃小説大賞受賞作なんだね、ちょっと見直しちゃったー。

    なんかまだ話題があった気もするけど、とりあえず~。
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