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実家住みおじさんダンジョン番外編、完結!(&カズヒロのお話)

 無事、本作も完結いたしました!
 オリジナル長編で唯一の完結作品……達成感もひとしおです!
 応援いただいた皆様、本当にありがとうございました!

 ……というか今までの作品と伸び方が桁違いでビビってます。
 テンプレ……恐ろしい子!!

  * * *

 さて、本作も無事に完結したところで、ちょっとした裏話と言いますか。
 番外編のキャラ紹介には記載しなかった、主人公「山神カズヒロ」の経歴について、ちょっと語らせていただきます。
 基本的には「#22 山神カズヒロ」で書いた経歴そのままなのですが、彼の人間性について補足を。

 本作においても書いた通り彼は「身内には甘く、身内に迷惑をかける人間には容赦しない人間」です。
 迷惑不法侵入者の黒栖やモグラ野郎も仲間として受け入れたのは、彼らの中に一抹の義侠心を感じ、「身内」として認定したからです。
 正直大分好みの別れる主役像ですが、一言で言えば「マイルドヤンキー」みたいなものですね。地元は嫌いですが、家族は大好きです。

 彼は、自分から他人を攻撃することはありませんが(HIMIZUの件はバナナや赤甲羅みたいなもんという認識です)、他人が自分のテリトリーで好き勝手したら、手段を択ばず迎撃します。
 これは、彼の出身地が北関東の車社会であることにも関係し、地域性に根差したものとして書いています。
「激安の殿堂」とかも好きでスウェット買ったりしますが、地元の知り合いに会うのが嫌で避けてるところもありますね。

 反面で、上京して大学に通い、ホワイトカラーで働いていたインテリとしての一面もあり、世間体を取り繕う能力もあります。
 メディア取材では猫を被っていましたが、まあ彼の仕事中の通話会議の口調とかは、大体あんな感じです。
 ……そりゃまあ、オラついたプライベートの様子なんて、普段は同僚に見せないでしょうしね。

  * * *

 彼は身内の中でも「自分が守らなきゃいけない存在」には際限なく甘くなります。
 このことについては、ミツキが甘えん坊に育った経緯からも明らかで、実家の猫の「ミケ」にもダダ甘でした。
(おふくろの影に隠れがちですが、彼もミケをさすって話しかけたり、爪切りをしてやっていたのは、本編で書いた通りです)

 彼が実家に帰ってきた時にはミケも高齢でしたが、弱っていくこの子を見るのも、母や自分の「老い」の写し鏡だったことでしょう。
 それでも、最後の最期で看取ってあげられたのは、彼にとって数少ない「実家に帰ってよかったこと」だったと思います。

 彼がレイちゃんに対して持つ過剰なまでの庇護欲は、このミケの影響も大きいです。
「猫扱いしちゃいけない」と思いつつも、年老いて弱々しいミケの姿が、現世に来たばかりでおどおどしていたレイちゃんと重なります。
 そのため、カズヒロがレイちゃんを「一緒に戦う仲間」と認めるまで、ただひたすら甘く、何から何まで世話を焼こうとしていました。
 最終回時点では改めつつありますが、それでもまあ、恋人に甘くない男なんて……まあ、いないでしょう。

  * * *

 他人に対する攻撃性とのコントラストは、まさしくこの男を表す一面です。
銃で不法侵入者をぶっ殺したり、ショッピングモールでガキを問い詰めたり、正直大分「やばい人」の面はあります。
 自分もリアルではあまり関わりたくないです。マイルドでもヤンキーって怖いですし。

 舐めたことをしてきた輩は、暴力なり口八丁なりで屈服させてやりたいし、大事な人にはいくらだって優しくありたい。
 ですが、明確な非を持つ相手への「暴力性」は、事実として物理とネットの暴力に翻弄された彼の青春時代を想うと「必要」なものなんですね。
「舐められないために力を見せる」は、治安の悪いコミュニティにおいては、その必要性を否定できないのです。

 番外編は、彼の暴力性が明確な論理に基づき、家族を守るためだけに運用されていることを示すためのものでした。
「身内にだけ甘い猫かぶり野郎」に映るかもしれませんが、じゃあ万人に等しく「恋人や家族に、暴力やモラハラをするか?」というと、そんなカスに主人公の権利はありません。
 優しさと厳しさを履き違えず、目的のためにこれを行使する者。これがカズヒロの持つ「家庭のためだけのヒーロー」という像です。
 社会的には危うさもありますが……まあ彼も大人なので、よほどのことが無ければ、過度の法の逸脱もしないでしょう。
 それは、レイちゃんの「公助」の獲得のために動いたことにも表れており、彼は直情的であると同時に現実主義です。この辺はインテリの面ですね。

  * * *

 ……筆者は、典型的陰キャ独身おじさんなんで、彼を自己投影で作ったキャラというのは大分無理あると思います。
 勝手知ったる友人の前では若干オラつくときもありますが、基本的に内弁慶ですし、他人と表立って喧嘩とかもできないタイプです。
 そう言う意味では「感情移入する主人公」ではないのかもしれませんが、「家族のために頑張れる大人になりたかったなぁ…」という憧憬の投影はあると思います。
 三男坊である自分が、長男の横暴さと家庭への責任感の両面を見て「これをヒーローにするとこうなるかな?」と膨らませて産まれたキャラ、という感じですかね?

 時に、主語の大きな話になりますが「人間の本質」として「家族」とか「絆」って、別にヤンキーじゃなくても憧れでもあると思うんです。クサいけど。
 現実味を感じられないゆえに白々しい言葉に聞こえますが、「信頼できる家族」や「一緒に何かを成し遂げた人との切れない絆」は、誰だって欲しいものでしょう。
 当のカズヒロ自身も「俺、ヤンキーじゃねぇし、家族とか絆とか感謝とか言わねぇよ」って自認です。……どの口がって感じですが。

 自由と個人主義が重要視される現代社会においても、人々は家族や絆に飢えているのではないか。
 その仮説が形作ったダーティーなヒーローが、山神カズヒロです。

「百鬼の忍」の明松朱弘のような「万人の味方」ではありません。
 カズヒロも、流石に目の前で困ってる人を無視したりこそしませんが、自分の身を顧みることを厭わないのは「身内」に限定されます。
 義理の無い人間は、余裕があれば助けますが、無理してまで助けません。その時点の「敵」は、排除が最優先です。

 ……まあ、「願望機がないと、病床の母さんが死んじゃうんだ!」レベルまで言われたら、流石に譲ったりも検討するでしょうが、逆に言えばそのレベルじゃないと揺るぎません。本件はレイちゃんも命が掛かってるので。

 家族だけを大事にしていることも、時に他人に非道を行うことも、彼の内面では矛盾なく完結してるわけです。
 カズヒロはどこまで行っても「大事な人の味方」であり続ける性分であり、それを使命とし続けるでしょう。

  * * *

 最後に余談。マジモンの蛇足です。

 本編のノイズになるので描写を省いたのですが、当初はモグラ野郎との通話でカズヒロの大学生活にチラッと触れるつもりでした。

 カズヒロが高校で配信をやめて大学進学したあとの話です。
 彼は憧れの東京生活を送り、親の目の届かない中で少なからずやんちゃ(加害行為じゃなく酒やタバコやギャンブルですね)してました。
 そんな中、大学の先輩の誘いを受け、ワンチャン狙いでパチスロ実践として配信者に復帰します。
 ……ですが、金銭トラブルの結果、先輩と喧嘩別れして、ギャンブルと配信両方嫌いになってしまいました。
 あるあるな無軌道大学生の生活ですが、あまり深入りをしてなかったからこそ、ちゃんと建て直せたところはあります。

 タバコについても、パチ屋から足が遠のいたことと、世間の禁煙の潮流もあり、帰郷前にすっかり足を洗っていました。
 ミケの世話もありましたし、レイちゃんと出会うことを考えれば、やめて大正解でしたね。


 ……本編には入れなくて正解というか、これを明確に描写すると「ヤンキー」感強まって、読者も引いてしまったかもですね。
 ただ、彼が聖人的ヒーローではなく、世間と折り合いをつけたマイルドヤンキーであるということを把握しないまま、主人公像を見誤って読み進めてしまう所は感じたので、早い時期で開示すべき情報だったかも、という気持ちも。


 ちなみに、筆者はパチスロよりおさかなさんの泳ぐパチンコが好きです。煙草は加熱式ですね。
 ……ヤンキーではないですが、ずっとオタクやってた割には、こういう不良行為に憧れる気持ちは持ち続けてました。だからカズヒロみたいな主役を書こうと考えたのでしょう。

 なお、パチは30過ぎてからハマって、えらいことになりました。
 みなさん、ギャンブr……「遊技」は、節度をもって楽しみましょうね。

 ……というか、やったことない人は永遠にやらないようにしましょう。
 知らない方が幸せです。



 ……それでは、よき人生を!


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