「あるいは深層に、遙かなる地平を夢見て」、本日朝6時に完結予定です。
でも、完結前にどうしても書いておかなければならないことがあるのを思い出し、慌てて近況ノートを更新しております。
先に告白しておきますと、これは懺悔文になります。
ぼくは作中で大変なミスを犯しました。
何の話かと思われるかもしれませんが、それは世界一有名な登山家、ジョージ・マロリーに関係します。
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ジョージ・マロリーは、登山に興味のある人であればまずほとんど知っているであろう、伝説の登山家です。
人類初のエベレスト登頂を目指した、いわば「山屋の神様」みたな人です。
マロリーを知らなくとも、「そこに山があるからだ」という言葉くらいは聞いたことがあるんじゃないでしょうか。
いろんなところで引用されまくってますが、あれは登山家の心情を端的に表した名言とされています。
マロリーはエベレスト登頂のためにかなり無理をしてたようです。
失敗しても失敗してもまだ挑戦し続ける姿を見た人たちが「なぜそこまでして山に登るのか」と、同じ質問をし続けたところ、マロリーはうんざりして、
「山があるからだよ!」
と答えた、というのが真相らしいです。(諸説あり)
ぼくはこのエピソードが好きです。
理由なんかいらない。登りたいから登るんだというマロリーの息遣いが、現代にまで届くような気がします。
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さて、ここからが懺悔となります。
「あるいは深層に」には、ジョージ・アンカーという登山家が登場します。
このキャラクターに「ジョージ」という名前をつけたことを、ぼくは非常に後悔しています。
なぜなら、作中で幾度となく「あんな記録に意味はなかったのだ」といった言葉が出てくるからです。
まるでマロリーの挑戦を軽んずるかのような表現です。
完全に失敗しました。別の名前を使うべきでした。
言い訳のように最終話で「あれはあれで偉大な記録だった」などとクラウディオに言わせたりしていますが、全然足りません。
言うまでもなく、マロリーはジョージ・アンカーのモデルではありません。
それより以前に「そこに迷宮があるからだ」と言った潜行者がいましたが、むしろそちらがマロリーのイメージでした。
あとは、実はギルド長もマロリーのイメージです。
彼も「もしマロリーが生きていて歳を取ったら」という妄想で生まれています。
じゃあ気軽に大ルドヴィクと愛人関係にするな! という話もありますが、あくまでイメージなのでそれはぼく的にセーフです。
何が言いたいかというと、つまりぼくはジョージ・マロリーが好きで、リスペクトしているということです。
それだけに、ロブ・アンカーの弟の名前を考えるときに「L73 にチームで初到達するパーティのリーダーか。じゃあやっぱりジョージしかないな」と安直に決めてしまったことに、ずっと後悔が尽きません。
というか「マロリーにはエベレストの頂上を踏んでいてほしい」という願望から選んでしまったのです。
あのときのぼくにクリームパイでもぶつけてやりたい気分です。
もしかするとそのうち名前をぜんぶ書き直すかもしれませんが、ここで表明しておきます。
ジョージ・アンカーは、ジョージ・マロリーと一切関係ありません。
もちろんモデルではありません。
マロリーは歴史に残る最も偉大な登山家の一人であり、その功績を汚すような意図は一切ございません。
ああ、言葉って難しいなぁ……。
もっともっと精進させていただきます。