『魔物の森のハイジ』完結しました。
お読みいただいた方々には、心から感謝致します。
このお話、元はぜんぜん違うエンディングの予定でした。
どんな話だったか、軽く触れておきたいと思います。
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1. ノイエ君は『名もないはぐれの剣士」だった
ハイジが『はぐれ』と敵対すると力を失う設定は元からなのですが、リンはその事実を知らないまま終わります。
リンが苦戦しているところをハイジが割って入り、それからハイジはみるみるうちに衰弱してしまいます。
2. ハイジは『はぐれ』の役割を認識していた
ただし、役割はもっとぼんやりしたものでした。世界のバランスを取った副産物、みたいな。
それを哀れに思ったハイジが奮闘していたという感じです。
3. ハイジとリンの力の継承は行われた
割と早い段階で、リンはハイジを殺害します。
といっても、力の継承についてはリンは知らされず、愛ゆえに、死にゆくハイジの願いを叶えるためです。
その際に、ハイジはリンへ、リンはハイジへ、その愛を語ります。
本来、イチャイチャイベントは、ハイジの死の瞬間にしか行われない予定でした。
当然、その時の様子を知らない人達からは、リンは後ろ指を刺されますが、リンはそのことについて一切何も口にしません。
ここでペトラとの関係が破綻しますが、ニコ、ミッラ、ユヅキには漠然と理解され、友情が続きます。
4. リンがハイジのあとを継ぐ
ハイジが死ぬと、その力をリンが受け継いで、戦場で無双します。
また『はぐれ』の守護者を継承し、世界中の『逸れ』を保護して回ります。
5. リンが戦場で『はぐれ』の子どもを発見する
戦の最中『はぐれ』が発生します。
本編ではハイジがハリネズミになってましたが、本来はあれはリンの役割でした。
といっても、左手に毒矢を一発食らうだけなのですが、食らった瞬間にリンは自分の片腕を切り落として難を逃れます。
そこからリンは隻腕となります。
6. 拾った子どもに『ハイジ』と名付け、森で育てる
片腕になっても、いつもの「別に構いはしない」が発動、森で生活することに。
ミッラやニコなどはリンの理解者としてあり続けます。
(ただし、子どもに『ハイジ』と名付けたことに対して『狂ったんじゃないか』と疑われます)
7. 本来のエンディング
子どもはすくすく育って、本編通りの可愛らしい少年に。
リンは子どもの所作に、亡きハイジの面影を見ます。
生まれ変わり、かも? と匂わす程度ですが、リンは確信。
ハイジに対する思いを独白して終わり。
8. その他
・ユヅキはもっと活躍する予定でしたが、方向転換することで登場シーンが激減してしまいました。
・トゥーリッキはもともとヴィーゴの奥さんという予定でした。リンから蛇蝎のごとく嫌われたヴィーゴですが、奥さんにだけは優しい、みたいな設定でした。リンが登城する際、本来はトゥーリッキも同行予定だったのですが、ヴィーゴの相手にはアゼムのほうが良いと思い直し、トゥーリッキはほとんど話に登場させることが出来ませんでした。
・ヤーコブはリンに惚れる予定でした。あっさり振られてふてくされて落ちぶれそうになるところをニコが救い、恋仲になる予定だったのですが、リンが感じ悪くなりそうだったので、なかったことになりました。
・アゼムの死に様。ハイジが『キャンセル』によって「痛み」を事前に察知。だが間に合わず。アゼムから「俺を殺せ!」「どうせもう助からん!経験値はお前が持っていけ!敵に取られるな!」=> 殺す、という流れの予定でした。ハイジはリンに自分を殺させたのだ、というストーリーの補強のために殺されるアゼム師。
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……うわぁ。これは酷い。
こうして見ると、もとの話は随分と殺伐としてますね。
戦場・厳しい冬の森・死などの「冷たくて痛い」だけの世界に、対比として恋愛だけがぽつんと温かい、と言った構図だったのです。
テーマは誰にも理解されない愛情。
青春やら友情やらの温かい要素は皆無の予定だったのですが、一部から「あまりに酷い」といった意見を頂きまして、日和った結果、今のような結末を迎えました。
分岐点は、ノイエの登場ですね。
彼が登場しなければ、トゥルーエンドへ進んだことでしょう。
つまりノイエ = キューピッド。
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なお、登場人物に筆者自身を投影したやつが一人います。
ヴィーゴです。
それでは皆様、もしよろしければ次回作もお付き合いくださいませ。
(カイエ)