書籍発売につき、小話を載せています。
楽しんでいただけたらうれしいです。
たくさん本が売れて、次巻が出せるといいなぁ。
どうぞよろしくお願いします!
**** ここから小話 ****
332話くらいの話――ミラ視点
ママとのおやつの時間が終わってしまったボクは、運動のため屋敷の中を走っている。
このところおいしいものを食べ過ぎて、ちょっと太ってしまったかもしれない。みんなは何もいわないけど、心の中ではそう思っているかもしれない。
どうしよう。丸々太った子豚みたいになってしまったら! もしかして、みんなから食べられてしまうかもしれない。
聖竜の肉を食べると寿命が増えるとかいうウワサがあるのかも。それはまずい。
どうする? こうなったらユリウスにやせ薬を作ってもらおう。それを飲めば、ばんじかいけつするはずだ。ボクってほんとにあたまいい!
えっと、ユリウスは確かファビエンヌお姉ちゃんといっしょにいたはずだから、お薬を作る部屋にいるはず。ちょうどいいぞ。
ん? なんだかおいしそうな匂いがしてきたぞ。これはまさしく、さっきママといっしょに食べたクッキーの香りだ! もしかして、ボクのために作ってくれているのかな。
急がねば。出来立てホヤホヤのクッキーを、一度食べてみたかったんだよね。
目の前に扉が見えてきた。この扉の向こうに、クッキーたちがボクを待ってる。でも、この扉は勝手に開けちゃダメなんだよね。中で危ないお薬を作っていることがあるかもしれないからだってさ。
でも今は、ぜったいおいしいクッキーを作ってるだけでしょ? ボクにはわかるんだからね。
でも約束は守らないと。そんなことをしてクッキーを食べさせてもらえなくなったらぜつぼうてきだ!
ボクはユリウスのいいつけを守って、扉の横にあるピンポンを押した。すぐに扉の向こうからピンポンという音が聞こえてきた。面白いよね、このピンポン。ユリウスは面白いものばっかり作ってくれる。
「キュ、キュー!」
せっかくなのでピンポンれんだをしようかと思っていると、すぐに扉が開いた。
扉が開くのといっしょに、ものすごく甘い香りが漂ってきた。これはすごい。一枚や二枚じゃないぞ。もっとたくさんのクッキーがある!
「キュ、キュ!」
「ちょっとミラ様、落ち着いて!」
ボクを止めようとするネロくんの手をすり抜けて先へと進む。そこにはクッキーの山が! うひゃ~、がまんできねぇ!
だがしかし、飛びかかったところでネロくんに捕まった。
くっ、まさか動きを読まれていたとは、いっしょうのふかく。でもそのあとファビエンヌお姉ちゃんが出来立てのクッキーを食べさせてくれた。
うまい! てーれってれー! ほっぺたが落ちるとはまさにこのこと。出来立てホヤホヤのクッキーってこんなにおいしいんだ。ボク、とりこになったよ。
……あれ? そういえば、ボクは何しにここへ来たんだっけ? まあいいや。おいしいクッキーが食べられたのでよし!