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サポ限 新作プレ公開

 近況ノートにて、次の新作は完結まで書き終えてから公開すると言ってましたが、1話のみサポーター限定で先行公開します。
 1話のみだと消化不良かと思いますが、今日時点で21話まで書き進めてます。コレで終わることは無いので、一般公開をのんびりお待ち頂ければと思います。

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タイトル
『それは悪意なのか、好意なのか、それとも』




#01 消えた下着


 最初の異変は、洗濯物だった。

 ワンルームで一人暮らしの俺は、3~4日に一度のペースで洗濯機を回し室内に干す様にしている。
 5月の中頃、平日金曜の今日は、大学の授業が2コマ目から4コマ目まで埋まってたので、夜にバイトから帰ってから洗濯をした。
 バイトを終えて自宅へ帰り、いつもの様にシャワーを浴びて、その間に洗濯機を回して、シャワーを終えて着替えてから洗濯物を干し始めたのだが、トランクスの数が足らないことに気が付いた。
 この日は3日分の洗濯物だったので、3枚あるハズが1枚しか無い。

 今日も昨日も一昨日《おとつい》もバイトからの帰宅後、シャワーを浴びる前に間違いなく脱いで洗濯機に放り込んだ。
 毎回毎回意識して確認しながら入れている訳ではないが、脱衣所の洗濯機の前で服を脱いでバスルームに入った記憶はあるし、脱いだ物は無意識下の動作でも習慣なのでそのまま洗濯機に入れているはずだ。

 なのに、洗濯物を干す時には、今日着ていた1枚しか無い。
 洗濯機に残ったままなのかと確認しても空っぽだし、取り出している時や干す為に運ぶ途中で落としたかもと部屋中を探すが、見つからない。

 別にトランクスの1枚や2枚くらいは、予備や新品のストックもあるのでどうってこと無いのだけど、紛失する可能性が低い状況で物が無くなっていることがどうにも納得出来ず、ムキになって探し続けてみたが、やはり見つからない。

 小一時間ほど捜索してみたが、この日は日中は授業があり夕方は4時間バイトで立ちっぱなしの仕事で疲れていたので、探すのを諦めてモヤモヤしたままベッドにゴロンとなって付けっぱなしのテレビを眺めて居ると、ふと思い浮かんだ。

 彼女が俺に内緒で持ち出した?
 俺の使用済みパンツを?

 俺には交際10ヵ月弱になる彼女がいる。
 彼女は同じ市内とは言え実家暮らしなので、この部屋には週末くらいしか泊まりに来たりしないが、一応合鍵を渡している。
 俺の部屋の鍵を俺以外で持っているのは彼女だけだ。

 しっかり者で責任感も正義感も強い彼女の性格からして、黙って俺のトランクスなんて持ち出す様には思えないが、俺には明かせない性癖でもあるのかもしれない。

 最後に彼女がウチに来たのが先週の土日で、今日は金曜日。水曜と木曜に履いていたトランクスが消えているので、もし彼女が持って行ったとすれば、今日、俺が居ない時間に合鍵を使って入ったことになる。

 彼女のことを疑いたくないという気持ちもあり、彼女が犯人だとしても、そうで無かったとしても、モヤモヤしたままになりそうだが、一応確認のつもりでスマホのトークアプリで聞いてみることにした。


『俺のパンツ知らない? 数が足らなくて部屋中探したけど見つからないの』

『いつから無くなったの?』

『気付いたのはさっき帰って来てから。 洗濯物干してたら昨日と一昨日履いてたパンツが消えてた。 靴下とかシャツはある』

『私、知らないよ? 先週の週末ヒロくんちにお泊りしてから一度もお邪魔してないし』

『そうだよね。因みに、俺の部屋の鍵、無くしたりはしてない?』

『ちゃんと有るよ』

 メッセージの後に、キーケースに繋がった俺の部屋のスペアキーの写真が貼り付けられた。

『干してる時に飛んで下まで落ちちゃったんじゃないの?』

『いつも部屋干しだから布団以外ベランダで干したことないよ。それに無くなったのは、脱いでから洗濯するまでの間っぽい』

『後は…、他の洗濯物に絡まってるとかくらいしか思いつかないけど』

『う~ん、そうだなぁ。 あ、夜中なのに急に変な事聞いてごめん』

『ううん。 下着足りなくて困ってるの?』

『いや、そういうのは大丈夫。 無くなるハズが無いのに無くなってるからモヤモヤして気になっちゃって、合鍵持ってるのミキしか居ないし、それで念のために確認したの。 気分悪くさせたらごめん。もう少し探してみるよ』

『分った。 その内、忘れたころにひょっこり見つかるよ』

『そうだね。「失くしたと思ってたのになんでこんなトコに!?」って良くあるよね』

『そうそう』

『じゃあ、出てくるの、気長に待つことにするよ』


 もし『私が持って帰ったよ』と言われてたら、「ナニに使うつもりなんだよ!」と突っ込んで無理矢理笑い話にして済ませていただろうけど、そんな流れにはならなかった。

 彼女が言ってる様に、失くした物が忘れた頃に見つかることは確かに身に覚えがあったし、所詮は使い古したパンツ2枚だ。「気になるけどつまらないことだよな」と以降は意識しないように別の事を考える様にして、次の日の土曜日にはこの件のことで悩むことは無くなり、週末デートで彼女と顔を会わせた時も、彼女に「下着みつかった?」と聞かれるまでは忘れていた。



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