• 異世界ファンタジー

07-28M 11月9日0700

ガーベラ会戦11月9日、開戦直前の状況


帝国軍

帝国軍は基本的に前日決定された作戦に沿って配置されている。
ベーグム・アリレザーは、当初、ヘロン旅団以外の帝国軍の指揮権を要求したが、バャハーンギール公子たちは、ヘロン旅団とゴルデッジ連隊を指揮下に留めることを主張。
妥協案として、ゴルデッジ連隊は、ヘロン城外に出ることとなったが、メハン川の旧街道渡河点の防備を担当することになった。

最終的に、クロスハウゼン・バフラヴィーの指揮下に入ったのは、ヘロン旅団とゴルデッジ連隊を除く帝国軍である。
帝国軍は東側から、ベーグム師団、アナトリス旅団、モーラン旅団、クロスハウゼン旅団、タルフォート旅団と並べられ、最左翼西側ヘロン河沿いがミッドストン旅団である。
トエナ大隊はミッドストン旅団の指揮下に入っており、レトコウ連隊はモーラン旅団地区で予備とされている。
帝国軍の当初の計画では、敵中央のケイマン第一軍団がクロスハウゼン旅団と戦闘に入り、拘束されたのを見計らって、右翼のベーグム師団、アナトリス旅団が攻勢を行う、というものであった。
渡河点まで突破したら、そこで、ベーグム師団が防衛体制となり、確保された突破口から全軍が脱出する予定である。
クロスハウゼン・バフラヴィー主導となり、この作戦は基本、破棄されたが、部隊配置を大幅変更するには時間が足りなかった。
また、部隊配置の変更は、敵軍に、『帝国軍の作戦計画がケイマン側に漏れている事実』を帝国軍首脳が把握したと宣言することにもなる。
このため、大幅な部隊配置変更は行われなかった。
唯一変更されたのは、ベーグム師団第一歩兵連隊並びに騎兵大隊である。
当初の予定では、ベーグム師団の攻撃は第二第三歩兵連隊で開始され、ある程度敵軍を押し込んだ所で、最精鋭の第一歩兵連隊を投入して突破することになっていた。
このため、ベーグム師団では第二第三歩兵連隊が最前列で、その後ろに第一歩兵連隊が配置された。
バフラヴィーはこれを「若干」後方に移動させた。
ベーグム・アリレザー師団長の突然死に伴う再編成との名目である。

バャハーンギール公子一派が『裏切る』と仮定した場合、最も可能性が高いのは、メハン川旧渡河点を守備するゴルデッジ連隊が敵軍を引き入れることと、考えられた。
ベーグム第一歩兵連隊の後方移動はこれを牽制することを狙っている。



メハン川旧渡河点には、ゴルデッジ連隊とヘロン旅団から一個大隊か配置されている。
当初の予定では、ケイマン軍が攻撃を開始すると同時に、メハン川対岸のケイマン軍第201歩兵師団に連絡し、渡河用の舟橋の建設を補助することとなっていた。
しかしながら、ベーグム師団第一歩兵連隊が後方に移動したため、それの関与を恐れたゴルデッジ侯爵は、計画の延期を選択している。

クリアワイン伯爵率いるメハン川東岸の残存帝国軍は、11月8日に拠点としていた村落に集結している。
帝国軍本隊の状況が不明なためもあるが、最高指揮官であるクリアワイン伯爵が何をするか決断できず、なんとなく、ここに留まっている。




ケイマン軍

ケイマン軍は野戦での決定的な勝利を目指して攻勢を開始している。
ケイマン・オライダイは、帝国軍に対する決定的な勝利により、ケイマン族の過去の汚名を雪ぐとともに、帝国以外に対しても決定的な優位を得るためである。
このため、ベーグム、クロスハウゼンを含む帝国軍を野戦で完全殲滅を望む。

ケイマン軍の作戦は、重装歩兵部隊を主力とした第一軍団による中央突破である。
兵力差が大きく、第一軍団の戦線突破能力に絶対的な自信があること、そして、戦力が優勢な側が下手な小細工はすべきではないこと、などにより、こうなっている。
第一軍団の突撃位置は高原中央部が選ばれた。
ヘロン高原は、中央部、街道とその周辺が最も整地され平坦であり、重装歩兵の突撃に向いている。
西側、ヘロン河沿いも比較的平坦であるが、西側の突破先にはヘロン要塞があり、突破による帝国軍包囲が困難である。
東側は不整地が多く、特にメハン川沿いには森林が残っているため、重装歩兵の突撃には不向きである。
故に、中央部である。
第一軍団の重装歩兵だけでも十分と考えられたが、敵魔道部隊に対抗するためフロンクハイトの魔道大隊二個もここに配置されている。

ケイマン軍は中央部第一軍団の突撃だけで、決着がつくと考えていたが、帝国宗教貴族からの情報も活用することにしている。
帝国軍のベーグム師団、アナトリス旅団が攻勢に出るとの情報があるため、ケイマン軍左翼東側の第二軍団は、一見攻撃隊形を取りつつも、実際には防御的な布陣となっている。
右翼、西側の第三軍団は、前日に損害を受けたこともあり、補助的な攻勢を行う程度とされた。

メハン川東岸の旧渡河点の第201歩兵師団は、舟橋建設準備を進めている。
帝国軍ゴルデッジ連隊が寝返る予定であり、ケイマン軍が攻勢開始後、対岸からの合図に併せて舟橋建設の予定である。
この地区には、前日、帝国軍モーラン旅団が建設した舟橋の杭が残されており、これを使用することにより迅速な架橋が可能と考えられた。
舟橋建設後は帝国軍の背後に進出して、挟み撃ちの予定である。
ただ、第201歩兵師団だけでは、心もとないと考えられ、このため、第二親衛大隊が第201歩兵師団の背後に密かに配置された。
また、攻勢開始後に、第二騎兵旅団がこの地区に移動する予定となっている。
騎兵旅団を事前に移動させておかないのは、騎兵は目立ちすぎるとの理由である。

第一騎兵旅団と他の親衛大隊はケイマン総司令部の予備として残されている。

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