人生には必ず困難な時が訪れます。
自らが原因で招くこともあれば、
不可抗力や運命に導かれる場合もあります。
主人公「ベンタこと東弁太一(とうべんたかかず)」と、
もう一人の主人公、「分銅海斗(ぶんどうかいと)」。
親を失うという自分の力ではどうする事も出来ない人生の困難に、
「ベンタ」と「海斗」は遭遇します。
『自分の力で、自分の人生を切り開きたい』、
プロボクシングに人生をかける決心をします。
入門から半年、
村木コーチの厳しい言葉に反発し、
練習を勝手に変更してジムを飛び出したベンタ。
海斗はベンタを追いかけ、公園にいるベンタを見つけました。
ベンタは、海斗も自分と同じようにつらい思い出や境遇、先の見えない不安と戦っていることを知ります。
(ここまで第一章)ここからの続き……。
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夜になっても帰ってこないベンタと海斗を心配して、ジム会長の徳川、マネージャーの田口、トレーナーの村木、ジムのリーダー田上、寮の先輩矢尾板と小島が、今か今かとやきもきしながら、帰らないで残っていました。
会長の徳川は、かんしゃくを起こしたトレーナーの村木に、諭します。
「いいか、ボクサーを育てる前に、人間を育てるんだ。挨拶がきちんと出来る事。どんな時でも謙虚さを失わない事。常に節度と忍耐がある事。そして、人の心の痛みが分かる事。そういう人間に育てるんだ。ボクサーで成功すること以上に大切なものをあの二人にしっかりと教えるんだ」
「はい、分かりました」
田口が真剣な表情で、
「承知しました。申し訳ありませんでした」
村木が神妙な面持ちで、徳川に頭を下げながら答えます。
丁度その時、ベンタと海斗が長い時間をかけたロードワークを終えて、徳川ジムの入口の前に立ちました。
ベンタに向かって、海斗が、念を押します。
「さあ、ベンタ、入るぞ。ちゃんと村木さんに謝るんだぞ」
「うん、わかった」
ベンタが大きく深呼吸をします。もう迷いはありませんでした。
海斗が意を決してドアを開けます。
「すいません、遅くなりました」
海斗が大きな声で謝りながら中に入り、
「遅くなって申し訳ありませんでした」
ベンタが謝りながら後ろ手でドアのノブを締めました。
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このあと、はたして、ベンタと海斗を待ち受けている運命は?
「ベンタ」第二章は、ここから始まります。
生活や人生が思うようにいかなくて苦しい時、つらい時、どん底だと感じるとき、人は現実とどう向き合えばいいのでしょうか?
どう立ち直ればいいのでしょうか?
野﨑博之(のさきひろし)の「呼び止めざる事の為に」の本の中に、
阪神淡路大震災に寄せた、「道標」という作品が所収されています。
この作品に込められた思いが、第二章の場面で描かれています。
連載中、【ベンタ】第二章 をお楽しみください!
次回以降も、現在公開されている、
「ベンタ」【前編】 『 序章 ~ 第三章 』 に散りばめられた、
『エピソードの数々』を、
少しづつ紐解いていきます。
おたのしみに・・・。
野﨑博之(のさきひろし)
