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謎解き「夢三十三夜」 その2

「玉座の間」に関しては、もう一つちょっと思い当たる節があって、それは前半部分は宮崎駿が1982年に書いた「シュナの旅」を意識していたらしいということである。

「シュナの旅」はチベット民話が元になっている、文庫で出ている絵物語である。漫画と呼ぶには漫画らしくないし、漫画と絵本と中間ぐらいの書き方になっていて、ストーリーは「もののけ姫」の原型のような話である。

アニメ化したかったらしいが、当時の宮崎駿はまだ原作の「風の谷のナウシカ」に着手したばかりで、一部の人にしか知られていなかった。企画案を形にしておきたい、といった姿勢で書かれたのだという。

で、この話の前半から半ばくらいまでは、タイトルの通り主人公が「旅」をする。この旅がかなり半端なく過酷なので「この先はいったいどうなるのか」という引き具合もまた半端ではない。

主人公が「いったんは壊滅的なダメージを負う」という流れは、古今東西の様々なエンターテイメントで繰り返されてきた、いわば常道なので、例を挙げるまでもないと思うが、この「シュナの旅」はかなりそれが厳しい。厳しいせいでその後の流れもまた素晴らしくなっている。この厳しさを何とか再現したいなあ、と思って書いたのが「玉座の間」の中盤なのであった。

ただ私の書いた話では、事件や障害や起伏が乏しいので、そこが個性といえば個性、没個性といえば没個性である。ミニマル的とでもいうべきか……。

しかしこれもまた、書いた本人が言わなければ誰も気づきようのない、指摘もできないような関連なので、一応ここに書き残しておく。

私の作品はともかく、「シュナの旅」は何度も読み返す価値のある、見事な作品なので、知らなかったという人(とくに書き手の人)には強くお勧めしたい。

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