我慢して何とか「スクラップ・アンド・ビルド」を読み通した自分としては、読書会で他のメンバーはどういう感想を言うのかなと興味津々、というほどではないが予想がつかないのでやや楽しみだった。
で、全体として今回は「面白い」という人は少なかったものの、介護が主題になっているため、参加者それぞれの「私の経験した介護」とか「これまでに見聞きした介護の話」の発表会のようになっていて、聞いていて楽しめた。
つまり自分の話をするためのきっかけとしては、この本は一定の役割を果たしているので、そう考えてみると悪くない本なのかもしれない。
それから新しいメンバーで、図書館の前々館長という初老の男性が入ってきた。この人がなかなかハッキリした意見の持ち主で、よく通る声で、褒めるにしても貶すにしても一家言ある人なので面白かった。私の言うことにもあれこれ反応してくれて、こういう人がいると読書会はたいへん面白くなるものだなと感じた。
逆にゴニョゴニョ、ふにゃふにゃした感想を言う人は、それを十分間じっと聞いても、後で何を言っていたのか全く思い出せないほど印象に残らないものだ。
で、次回の課題図書は多和田葉子の「献灯使(けんとうし)」である。
何となく新聞の書評で目にした気はする本だが、それにしてもなぜこのように、絶妙のさじ加減で自分が読みたくならないような本をチョイスできるのであろうか。
この人の作品は以前「所有者のパスワード」という短編を勧められて読んだ記録が残っているのだが、それを読み返すと「前半だけ面白くて後半は空中分解している」と当時の自分が嘆いている。同じ短編集に入っている「目星の花ちろめいて」は面白かったと書いてあるが何も思い出せない(勧めてくれた人に気を遣って書いたのかもしれない)。
今回の本も「とても良い」という評価になる可能性がなくはないが「とても悪い」になる可能性もかなりありそうで気が重い。