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『遺書投稿サイト』のエピソード「零通目 - 柳の人 【リレー小説企画概要あり】」の下書きプレビュー

遺書投稿サイト

零通目 - 柳の人 【リレー小説企画概要あり】

作者
柳人人人(やなぎ・ひとみ)
このエピソードの文字数
2,940文字
このエピソードの最終更新日時
2017年12月10日 20:05

【プロローグ的なやつ。↓に企画概要アリ】


 私は今、遺書を書いている。


 必死に半生を思い出しながら、だれかの顔を思い出しながら、タイピングとバックスペースを繰り返す。

 最初は真っ白だったスクリーンも三時間経てば、そこはずらりと黒い粒が並ぶ。白をベースとした画面を目の前にして、無機質な楷書体を少しずつ修正していく。まるで、心の隙間を埋めていくかのように。

 文末に「。」を入れて、キーボードから手を放す。背伸びしたときの「う~んっ」という唸り声が簡素な自分の部屋に響く。

 肩から力が抜ける。どっと疲れた。光を反射させつづけた目は乾いていることが感覚的に判った。自分の遅筆さを恨まずにはいられない。

 瞼をすこし揉んで、自分の打ちこんだ文章を読み返す。


 「人生観」「家族のこと」「友人のこと」「辛かったこと」「嬉しかったこと」「いままでの人生」「感謝と謝罪」……


「………まぁ、こんなものかな」

 もう一度だけ、読みかえす。誤字・脱字、文法の間違いがあったら恥ずかしいではないか。

「……大丈夫、か」

 私は最後に名前を入れるかどうかを悩んだ。名無しというのも味気ない。といっても、本名を入れるのは憚れる。その末にネット上で使っていたペンネームという折衷案に落ち着いた。

(まっこれから死ぬ奴がそんなこと考えるとは思えないけど)

 と、乾いた笑いが心の中で聞こえた。

 そして私は、一番下についている「送信」のボタンを押した。



 ◇◆◇◆◇



「遺書、投稿サイト?」


 世間的に馴染みのない単語の組み合わせに、私はおもわず聞きかえす。私は「しまった」と心の中で毒づく。目の前の噂好きの友人・時田映子は、ニタニタと笑う目を光らせて、講義中だというのに自分の席から身を乗り出してきた。

 こりゃ講義一本1時間半コースだな、と経験則的に理解して、軽くため息をつく。学生の話題なんて大したことはない。流行の音楽とか惚れた腫れたとか、似たり寄ったりだ。生きた言葉じゃない。

 講義半分、話半分で聞いていたが、どうやら都市伝説の類だという。「遺書投稿サイト」という会員制のネットサービスが存在して、そのサイトに自分の遺言をメールで送ると、一週間後にだれかの遺書が返ってくる、というものだそうだ。どうやら低年齢層の間で噂になっているらしい。……ちなみに、この話題は結局、講義時間を超えて昼休みにまで浸食した。

 とりあえず、一通り聞いた私は思ったそのままの感想を述べる。


「不謹慎じゃない?」

「都市伝説なんてそんなものだよ」

「まぁ、たしかに」

「それにさ、気にならない?」

「なにがさ」

「他人の遺書の内容」


 私は、……やっぱり不謹慎だな、と腹の内だけでつぶやく。


 たしかに聞くかぎりでは、そこに投稿される「遺書」は実際に死ぬ準備のためではなく、ただのお遊びだ。でなければ、「一週間後にだれかの遺書がくる」なんてオプションが付くはずがない。そんなの気になって死ぬに死ねないではないか。最初にそのサイトを作った人は、きっと自殺志願者の生命補助装置になってほしいと願ったのではないだろうかと思える。それに、本当に死ぬならこんなサイトに頼らず、手垢のつく手書きにしたほうがいいはずだ。

 そんな考えを知ってか知らずか、私の目の前を友人はぴょんぴょんと跳ねる。


「今や、遺書が趣味って若者がいるくらいだよ!」

「遺書が趣味、ねぇ……」

「ねぇねぇねぇ! 本当に興味ないの?」

「ないことは、ない、けれど」

「あ、やっぱりあるんじゃん! やーい、偽善者ー!」


 友人の言動に苛立つより呆れが先立った。口の中に出かかった欠伸を呑みこむ。


「………私は偽善者じゃないよ。ただ、」

「ただ?」

「ただ………はやく昼飯を食べたいだけ」


 口ではそう言った。しかし、他人の遺書に興味がないかと聞かれれば、―――気になっていることはたしかだった。



 ◇◆◇◆◇



「へぇー、たくさん出来てるんだな、いつのまにかに」


 自室のパソコンの前で独り言をつぶやく。寄宿舎に帰ってきてから、すぐにパソコンで「遺書投稿サイト」のキーワードで検索したら、それらしきサイトがいくつも出てきた。

 友人が話すかぎりでは、名前のインパクトのせいで噂に尾ひれがついて、【呪いのサイト】になっているらしい。「4時44分にしかつながらない呪いのサイト」とか、「一週間後に来たメールに呪詛が書かれていたら死ぬ」とか「自分の死に方を書いておけばその方法で死ぬことができる」とか。なんとわかりやすい都市伝説の仕様だろう。しかも、すこしWebの知識があれば簡単に作れてしまうので、面白がった輩たちがそういったサイトを乱立させているのだとか。

 どうやら若者の間で流行している都市伝説なのは確実のようだ。これだけの量のサイトがあれば一つくらい曰くつきが混ざっていても不思議ではないな、と感想をこぼす。

 最初の、つまり本家本元のサイトは今では特定不可能だそうだ。というのも、削除されたサイトもいくつかあって、そのときも祟りだとかと噂になり、都市伝説に拍車がかかった、ということがあったりなかったり。そこらへんも都市伝説に則って曖昧なのだ。

 映子が興奮のままに豪語していた言葉を思い出す。


「『遺書が趣味』、ねぇ」


 遺書。

 それは、今までの人生を振りかえった言葉。

 そして、最期の言いたい言葉。

 それはそのまま、人生の重たさだ。

 その人の生きた言葉―――死ぬ準備の一環であるはずなのに、皮肉が聞いている。


「偽善者なんかじゃないんだよ、私は。もっと質の悪い、ただの、独善者ヽヽヽだよ」


 私はモニターをのぞく。

 個人フォルダの受信箱にいくつもの遺書メールが入っていた。

 なぜなら、―――私は『遺書投稿サイト』の管理者きかくしゃだから。


 差出人に『時田映子ヽヽヽヽ』と書かれた、そのメールを開いた。

 黒い文字が敷き詰められた遺書に、歪んだ笑顔が映った。


 ―――さて、どんな最期ことばを返そう?



―――・―――・―――・―――・―――



 こんにちは、作者の柳の人です。

 そして、これはリレー小説の企画ものです。

 ですが、リレー小説ではほぼ存在しない【短編完結作品】のリレー企画です。「それってリレーじゃなくない?」と思われるかもしれませんが、ちゃんとリレー小説企画です。


 内容としては、上の物語で書いたように、趣味の悪い言い方になりますが―――


『他人の書いた遺書の内容、気になりませんか?』


 ―――という企画です。


 できるだけ分かりやすく書きます。


 ・条件は三つです。

 ①他人からもらった『遺書』を作中に一度は改変なく載せること。

 ②1万字以内で完結させること。(前の人の作品とクロスオーバーするのはあり)

 ③次のバトンを持つ人に『遺書』を渡すこと。

 (④『遺書投稿サイト』を登場させるかどうかは作者次第で。一応他人の遺書が見やすい、っていう設定として提示しただけなので)


 つまり、『遺書』がお題になっており、そこから物語を考えて、次の人に新しい『遺書おだい』を渡していく、という(たぶん)新しい企画です。


 上の条件をクリアしていればジャンルは問いません。現代ドラマ、ミステリー、ホラーなんかが狙い目でしょうか。もしかしたら恋愛、SFというのもできるかもしれません。




 まだ企画段階ですが、参加したい人がいましたら一報ください。

(遺書じゃなくて恋文ラブレター企画のほうが良かったかな……? そこらへんの指摘もお受けます)

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小説情報

小説タイトル
遺書投稿サイト
作者
柳人人人(やなぎ・ひとみ)
公開済みエピソードの総文字数
0文字