「想う」を含む小説

雑木林の中に凄然と佇む、円柱形の郵便ポスト。今は使われていないそのポストへ、少年Kは想い人Mへの愛を綴った手紙を投函しようとしていた――。 人を想うことへの幸せと苦しみを描く青春…

　清龍滝の辺には、暗くて深い淵があった。滝壺から来る複雑な水の流れが、淵に落ちた者を水底へ飲み込む。そう言い伝えられる通りに、其所から水死体が上がる事は滅多にない。其故、またの名…

物心ついた頃にはいつも一緒にいた、 幼なじみの悠（ユウ）と怜奈（レナ）。 小さい頃からユウはレナを秘かに想い、 守り続けた。 高校生になってもいつも一緒に居るのに、 二人の関…

都会で仕事に明け暮れていた大和に、母から電話があった。 決して仲が悪いわけではなく、仕事人間となっていたせいで連絡もしていなかった大和。 地元の田舎で、美しい星空を見ながら様々…

見渡す限りの雪と氷に閉ざされた凍土を、たった一人、若者が歩いて行く。それは己のためではなく、故郷を想うからでもなく、自分が愛したただ一人の女性のもとへと帰るために―― 過酷な環…

曰く、価値すら汀の奥であると。 曰く、泥程見てきた人であると。 暫く、彼は彼女の姿だけを、声音だけを胸に刻んだのだと。 暫く、彼女は彼だけを考え、傷を刻まれたのだと。 彼、異…

　力を振るうべき「敵」がいない世界で、人類最強の少年は何を想うのか。　　 「ファイアーマン」と呼ばれる饒舌な殺人鬼の存在を知る者はあまりにも多く、だが、その内側を知る人間はあまり…

　記憶がなかった。何かに触れられる肉体もなかった。 　自分は何者なのか。ただわかるのは、自分は目の前の男から今生まれたばかりの、生霊だかなにかの訳の分からない存在だということだけ…

　人間の心の虚無をエンジンとして駆動する兵器《機械》は、近未来の東京、廃墟となったゲイテッド・コミュニティ「東京ヘブンズゲイト」から降り注ぐ「死神」と呼ばれる怪物と戦うべく開発さ…