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★『かくりよ領事館の料理番』発売記念★ 矢古宇由佳氏インタビュー

2026年8月12日に富士見L文庫より刊行された『かくりよ領事館の料理番 龍神をもてなす洋風コース』。

第8回富士見ノベル大賞で〈審査員特別賞〉を受賞した作品です。 本作の発売を記念して、著者の矢古宇由佳さんにお話をうかがいました。

裏側を知ることで、いっそう作品が楽しめること間違いなしです。 最後には、富士見ノベル大賞の応募を考えている皆さんへのメッセージも! 作家デビューを目ざす方にとっても必見の内容となっておりますので、ぜひ最後までお楽しみください。

イラスト/Shabon

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――刊行される作品はどんなお話ですか。

 闘病していた父親を失って天涯孤独になった主人公、上條咲良が代々上條家が祀ってきた神社である大口真神社にお参りをしたところ、あやかしと神々の世界・隠世に迷い込んでしまうところから始まる和風恋愛ファンタジーです。

 たどり着いたのは人間の世界・現世とあやかしの世界・隠世の狭間を守る領事館で、大口真神社の神でもある山犬(狼)・昴が関守を務めており、元の人間の世界に帰るには神である昴の力が必要でした。 でも、昴は大の人間嫌いと有名。幸運にも、咲良のことを上條家の最後の生き残りと知っていたあやかしたちに助けられ、正体を隠してあやかしの「さく」として領事館で働くことになります。咲良は元々都会のレストランで働いており、ワインと洋食の知識が豊富で、洋食がとても珍しい隠世において彼女の知識は武器になりうるものでした。早速困りごとを料理で解決した咲良は、徐々に領事館の仲間たちに受け入れられていきます。

 ある日、領事館は龍の仲間であるとある池の主とのとんでもない大トラブルに見舞われた上、昴は大怪我をしてしまいます。しかも、昴の元には、舞台である東北地方の大河を治める龍神たちが乗り込んでくるとのこと。気難しい龍神との交渉をすることになる昴はまだ体調も万全ではありません。宴席でもって力添えしようとする咲良をはじめとする職員たちですが、果たして——。

 相次ぐトラブルと困難を乗り越えていく中で、徐々に惹かれあうふたりの関係性の変化。初めは現世になんとかして帰ろうとしていた咲良の心境の変化や、限られた食材や調理器具で作る洋食と合わせるワイン、無茶振りをする神々をもてなす咲良の機転。そして、領事館の個性豊かなキャラクターたちとの掛け合い。サブタイトルである、龍神のもてなしは果たしてどうなるのか——。といったところをお楽しみいただければと思います!

――どんなきっかけで作品を思いつきましたか。

 実は、休みの日に友人と動物園に行き、タイリクオオカミを見たことがきっかけです。そのタイリクオオカミは女の子なのですが、あまりにも精悍で、黄色の目が本当に綺麗で、灰褐色の毛並みも美しく感動したことを思えています。そして、ふと狼信仰の話を書こうと思いつき、流行り要素の「あやかしもの」と掛け合わせようと考えました。

 初めは江戸時代が舞台で、昴の「弟」がヒーローの話を考えていたのですが、なんとなくこの話はこの賞に出すのは違うなと思い、思い切って脇役だった「兄」の昴をヒーローに据え、舞台を現代にしました。富士見L文庫さんは以前拝見したインタビュー記事で読者さんは三十代〜が多いとあったので、ヒロインは十代後半ではなくもう少し上にしました。刊行作品の傾向からお仕事ものにしようと思ったので、それなりに仕事経験値を積んでそうな二十台半ばとし、その年齢ならお酒も飲めるので、趣味であるワインを出すことにしました。それならば、「ワインはお供えと現世からのお土産でしか手に入らない珍しい飲み物」「あやかしや神々は洋食を食べ慣れていない」ということにしたら面白いのでは、と世界観を膨らませていきました。

――作品内のお気に入りのキャラクターとその理由を教えてください。

 やはり昴と咲良がお気に入りです。昴は普段は穏やかで余裕のある大人の男性ですが、戦闘や喧嘩となると少し口調が荒くなったり、山犬(狼)姿の時は咲良に尻尾を振ったり撫でてもらって喜んだりと途端に「犬」っぽくなるところのギャップが気に入っています。

 咲良は真面目で仕事を頑張る前向きなところですかね。読者は先述したインタビューで八割くらいが女性とあったので、読者さんである女性に好かれそうなヒロインになるように意識して書きました。

 他は狐の隆爺です。領事館では昴の補佐をする役目なのですが、咲良のよきおじいちゃんポジションのキャラです。昴のプライベートにおける片腕としても、咲良に隠世のことを教えてくれる先生としても、とてもよく働いてくれました。あとは、昴の「弟」くんですね。昴との掛け合いというか、喧嘩は書いていて楽しかったです。

――富士見ノベル大賞に応募したきっかけを教えてください。

 子供の頃富士見ファンタジア文庫さんでライトノベルに出会い、現在は恋愛ファンタジーものを好んで読む私にとって富士見L文庫さんは憧れのレーベルで、「いつか叶うなら、富士見L文庫さんから書籍化したい」と思っていました。

 コンテストや賞に関しては、実は今まではその時連載しているものを「みんな参加してるし、読者さんが増えたらいいなぁ」とボタン一つで応募できるカクヨムコンテストに出したことしかありませんでした。しかも、文庫本一冊のボリュームで完結、あるいは区切りのつく話、というものすら書いたことがありませんでした。 しかし、富士見ノベル大賞が第8回からカクヨム経由で応募できると知り、今回は思い切って富士見L文庫さんのカラーに合った話を考え、十二万字まででなんとかストーリーをまとめて書いてみよう、それで書けたら出してみよう、最初の目標は要項に合ったものを書くことだと思って執筆し、なんとか書き上がったので応募しました。

――応募が完了したときや受賞の連絡を受けたときのお気持ちを教えてください。

 私はカクヨム経由なので、応募時は要項にあったあらすじをまとめて最後にタグをつけただけなのですが「本当に大丈夫だろうか?」「何かやらかしてないだろうか?」と不安になった記憶があります。一次選考の結果に自分の名前を見つけた時は、出張で富山にいました。応募要項も守れていたし、きっとレーベルカラーからも外れていなかったのだろうと思って本当に嬉しくて、せっかく富山にいるので一人で少しお高めの寿司を食べにいきました。

 この後は、「まあここまでだろうな、初めてだし一次選考通過だけで十分頑張ったし、雰囲気は掴めた。一歩前に進めた」と、先の選考には進まないだろうと別のコンテストの話を書いたり、次回の9回の応募を目指してネタを探して資料を読み込んだりして過ごしていました。ですので二次選考の結果はもうダメなつもりでいたのですが、ご連絡があって少々パニックになりました。二次選考通過作の一覧は拝見したことのあるプロ作家さんのお名前も並んでいて、さすがにここまでだろうと思っていたところにメールで受賞のご連絡をいただきました。その時は確か部屋の大掃除をしていたのですが、あまりのことに信じられなくて掃除をほっぽらかしてスマホを手に部屋中をうろつき回ったことを覚えています(笑) とても嬉しい気持ちと、「ここからが始まりだ」というとてつもない重圧を感じました。それから数日間は、「自分に都合のいい夢を見ているのでは?」とメールを毎日十回以上見返していました。

――改稿の過程や編集との打ち合わせの中で印象に残っていることはありますか。

 驚くほど丁寧に物語を読み込んでいただき、とても丁寧なフィードバックをいただき感動しました。今になって思うのは、一つ一つのありがたいご指摘が、一冊の書籍としてパッケージングされた状態でとても魅力的なものになっていたことです。気づけば、試し読みの範囲ですらヒロイン咲良の活躍の場が増え、昴も大きく構える魅力的なヒーローとしての描写が追加されました。料理は華やかなメニューに様変わりし、そうして追加したメニューのガレットが装画になりました。本当に勉強になりました。また、紛らわしくなるから削除した方がいいとコメントいただいた部分は確かにその通りで、読者さんの視点を考えるきっかけになりました。改稿したところをたくさん褒めていただいたことも印象に残っています。

 デビュー作になるので書籍化作業は初めてでした。校正記号なども自分なりに勉強したのですが、資料をくださったり、参考になるサイトを教えてくださいました。また、わからない部分・疑問点など質問をすればいつも丁寧にご相談に乗ってくださったり、教えていただいたりしました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

――これからどんな作品を書いてみたいですか。

 本作は和風恋愛ファンタジーでした。西洋ファンタジーの長編作品は書いたことがないので、まず西洋風世界観の異世界ファンタジーに挑戦してみたいです。今回は「狼・あやかし」と「ワイン・洋食」の掛け合わせでしたが、他にも私にしか書けない掛け合わせがあると思うので、それを探していきたいと思います。

 まだまだ未熟ですが、大人が日常をいっとき忘れてワクワクできるような物語を書いていきたいと思います。

――これから富士見ノベル大賞に応募しようとしている方へのメッセージをお願いいたします。

 今回、あまり肩の力を入れず、まずは要項通りの作品を書き上げ、応募してみるのが大切なんだなと学びました!カクヨムを初めた最初の数年は、まったくコンテストなど参加せず、ひたすら公開するだけの日々を送っていました。そもそもコンテストや賞は「私が応募してもいいのだろうか……」と思っていました。実は初めて応募したカクヨムコンテストが始まる少し前に、カクヨムの「特集」に掲載していただいたことがきっかけで少し自信を持てるようになり、コンテストに出しても大丈夫かな、一応小説の形にはなっているのだろう。そう考えて徐々にコンテストに応募するようになりました。あの時「特集」に掲載いただいて前向きになれていなければ、きっと富士見ノベル大賞にも応募していなかったと思います。 まずは出さないと始まりません。尻込みしている方は、思い切って応募してみるのがいいと思います。その作品は、富士見L文庫さんの読者さんに刺さるものかもしれません。

 あとはやはり、自分が好きなこと、得意なジャンルを書くといいのだなと実感しました。和風ファンタジーも狼も、それからワインも、私の好きなものばかりです。私はまだまだ至らないところも多いですが、これからも自分の「好き」がいっぱいの話を書きたいと思います。 同じ創作者として、一緒に頑張っていきましょう!

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気になった方はぜひ書籍を手に取ってみてください!

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