歴代カクヨムWeb小説コンテスト受賞者インタビュー|合田拍子【第1回ファンタジー部門特別賞】

賞金総額600万円、受賞者はKADOKAWAからの作家デビューを確約する第4回カクヨムWeb小説コンテストを、今年も12月1日より開催します。

そこで、かつて皆様と同じようにコンテストへ応募し、そして見事書籍化への道を歩んだ歴代のカクヨムコン受賞者にインタビューを行いました。創作のルーツや作品を作る上での創意工夫、そして受賞後の変化などを語っていただいた受賞者の言葉をヒントに、小説執筆や作品発表についての理解を深めていただけますと幸いです。



第1回カクヨムWeb小説コンテスト ファンタジー部門特別賞
合田拍子
▼受賞作:豚公爵に転生したから、今度は君に好きと言いたい
kakuyomu.jp

──合田さんがWebで執筆活動をはじめたきっかけについて教えてください。Webで発表する以前にも小説は書かれていたのでしょうか?

小説は書いたことがありませんでした。元々、読書感想文が得意なタイプでもなく、むしろカクヨムWebコンテスト参加中にも研究をバリバリやっていたほどの理系です。
ですが大学生の頃、一時期学生演劇に関わり、脚本提供なんかをした記憶がありまして、あの頃の経験から活字を書くことに抵抗がなくなったような……。

ウェブ小説を書き始めたきっかけは自分のアイデアを形にしたいと思ったからでしょうか、リアルタイムで歯に衣着せない反応が新鮮で面白かったからこそ続けてこれたのだと思います。
『豚公爵』を投稿し出した当初は、どうすればコメントが沢山貰えるかに苦心していたような気がします。

──第1回カクヨムWeb小説コンテストで受賞が決まってから書籍化するまでの思い出や、印象深いエピソードを教えてください。

最たるものは、改稿でしょうか。登場人物の一人が男の子から女の子になったんです。
好き勝手に描いていたウェブ小説から商業に移行するにあたって、キャラクターの性別を変更することも多分あるだろうなと思っていましたが、想像していたよりもすんなりと自分の中では受け入れることができました。

ただ実際は自分の違和感よりも、読者さんの反応の方が気がかりで気がかりで……。

そうして、書籍発売後。
「あのキャラが女の子になってるぞ! おい、お前女の子になってるぞ!」みたいな感想をいくつか見ましたが、幸いにも読者さんの拒否反応もあまりなく、変更を受け入れてくださったことに安心した思い出があります。


▲登場人物の一人・ティナ。カクヨム版では男性キャラが担っていた役割を、書籍版で改稿した結果誕生した女性キャラ。(※イラスト/nauribon)

── 受賞作『豚公爵に転生したから、今度は君に好きと言いたい』は1巻が発売即重版し、現在は6巻まで刊行されています。受賞が決定してから作家デビュー、重版、続刊刊行といったことをご経験されたと思いますが、それぞれのイベントでなにか身の回りに変化はありましたか?

身の回りの変化は特にないです。変わらず、普通のサラリーマンをしています。
土日のプライベートな時間以外は中々、ライトノベルや本に触れる時間がないので、ライトノベル界の流れからはどんどん取り残されている気がしていて少し焦っていたりします。

やっぱり作家デビューとなった瞬間が一番身の回りの変化が大きかったです。「本出したんだって?」みたいな言葉を幾つか頂いたり。それぐらいだったりします。
当初はここまで続刊が続くとは思っておらず、安易にペンネームを決めてしまったことを後悔しています。人前でアイダリズムと名乗るのは無理です、恥ずかしいです。リズムってなんだ。
みなさま、ペンネームは大声で叫んでも恥ずかしくないものにして下さい

──『豚公爵』シリーズはコミカライズもコミックアライブで連載されており、単行本もつい最近発売されました。ご自身の作品がメディアミックスされた感想はいかがですか?

前月に漫画一巻が発売されました。本当に感無量です。
豚公爵は書きたいシーンが先にあって始めた物語なので、実は漫画に向いてるんじゃないかとこっそり思っていまして。特に最初の盛り上がり場面、主人公である豚さんがアニメのメインヒロインを助ける瞬間などですね!


▲コミカライズ版『豚公爵に転生したから、今度は君に好きと言いたい』(漫画:fujy 原作:合田拍子 キャラクター原案:nauribon)


頭の中でぼんやりとイメージしていた場面が、実際に活字から漫画のストーリーとして表現されているのを見ると、嬉しさ半分照れ半分。
滅多に出来るもんじゃない経験・幸運を、今後とも噛み締めていきたいです。

──現在は『豚公爵』シリーズの執筆で大忙しの日々だと思いますが、今後に向けて書きたい作品、やってみたい活動があればお聞かせください

明るい作品を書きたいです。どんな理不尽な目にあってもいつも明るくて前向き、苦労を楽しめるような主人公を描きたいです。
また小説への向き合い方として、自分は執筆一辺倒になると物語が重々しくなってしまう傾向にあるので、執筆自体とも程々の距離感で接していこうと思っています。

将来的にはそうですね。学生の頃、演劇に関わっていた経験から、いつかは劇団に脚本提供とか、そういった方面にもう一度関わりたいなとの思いはあります。

──これからカクヨムWeb小説コンテストに挑戦しようと思っている方、Web上で創作活動をしたい方へ向けて、作品の執筆や活動についてアドバイスがあれば、ぜひお願いします。

人にアドバイス出来る立場でもないので恐縮ですが、ウェブ小説のコンテストに関しては怒涛の勢い(更新量)が重要でしょうか。
ウェブ小説は沢山の数があるので、埋もれないように人目を引く何かが必要だと思います。文章力とかアイデア、完成度が分かりやすい例ですが、勢いも一つの力だと思います。

私はウェブ小説は読者さんとの距離感が近いことが美点だと勝手に考えているので、怒涛の勢いをそのままに、読者さんからの指摘で軌道修正しながら、物語を次々展開させていくことが重要な気がしています。
一つの例として参考にしていただければと思います。

──ありがとうございました。


【好評発売中!】『豚公爵に転生したから、今度は君に好きと言いたい』
著者:合田拍子 イラスト:nauribon

大好きだったアニメ世界の悪役に転生した俺こと豚公爵は、このままではバッドエンドを迎えてしまう。未来のすべてを知るこの力で、学園中の嫌われ者から人気者になって――そして、今度こそキミに告白するんだ!
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おしえて改善点! カクヨムWeb小説コンテスト応募作品反省会【第四回】



第3回カクヨムWeb小説コンテスト開催直前!

……ということで、過去のカクヨムWeb小説コンテスト応募作を対象に、カクヨム運営による作品講評を行うオンライン勉強会「おしえて改善点! カクヨムWeb小説コンテスト応募作品反省会」をスタートします。
講評対象に選ばれた作品は、キャラクターやストーリーなど、作品を構成する5つの要素を5段階で評価して作品分析を行うとともに、長所や改善すべき点をコメントにまとめて指摘します。
この講評を参考に、作品の良い点や改善点についてを自分の作品にあてはまるポイントがないかを考えながら振り返ることで、今後執筆する際の指針として活かしてください。

反省会はカクヨムweb小説コンテスト開催までの四日間、全四回にわけて行われます。
最終回となる第四回では、こちらの5作品を講評いたします。

『もう一度会いたくて』 作者 紫藤 咲
『孕み人魚と惡の華』 作者 陸一潤
『誰が吸血鬼を殺したか?――または探偵ルードヴィッヒの推理』 作者 冬野ゆな
『竜の足元で魂は物語を紡ぐ【怪】』 作者 風嵐むげん
『竜斬の理』 作者 齊藤 紅人


【エントリーNO16】
過去も、今も、未来も、愛するあなたのためだけに――!!
『もう一度会いたくて』 作者 紫藤 咲
あらすじ:
「すべてを終わらせに行こう」
突然切り出された言葉に私は息を飲んだ。彼の眼差しに、強く差し出されたその手に、私は抗うことは出来なかった。
あなたに言えない秘密が私にはある。
十年前に忽然と姿を消した婚約者の存在。
もう一度会いたい……!!
密やかな想いを胸に秘めたままでいる私に突き付けられる現実は、想像以上に過酷なものだった――
ほどかれていく秘密の先にあったのは、あなたの大きな愛だった。
過去も、今も、未来も、愛するあなただけのために命を懸ける……これは純粋な愛の物語。

◆点数評価:
・作品のオリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
センシティブな物語だと思わせておいて、実は正統派ミステリであり、さらにはSFであるという構成に驚きました。
繊細な言葉づかいと、それをいい意味で裏切る物語運び――この組み合わせの妙は、著者の味として売りにできるものと思います。
主人公の心情がていねいに描き出されているのもいいですね。彼女の心の動きがはっきり見えていることで、自然と感情移入ができました。

◆改善すると良くなりそうな点:
特に前半部、ドラマ性及び真実解明へ繋がる伏線が大きく不足しています。
隠しておきたい著者の気持ちは理解できるのですが、この構成だと、賞では「冗長」と評価される危険性が大きいです。
それはもったいない話ですので、ドラマチックな伏線エピソードを惜しまず散りばめ、物語を彩ってください。
また、段落分けの荒さが目につきますので、ひとつの動作から別の動作に移るときは段落替えするほうがいいですね。


【エントリーNO17】
目玉は真っ先に溶けた。いつのことだったかは、もう忘れてしまったけれど
『孕み人魚と惡の華』 作者 陸一潤
あらすじ:
誰かが嘘をついている。
ひとり。三途の川を漂う船頭がおり。
ひとり。かつて、人間に恋をした天女がおり。
ふたり。かつての自分の姿を亡くした亡者がおり。
ふたり。山を降りた悪党と、さらわれた人魚がおり。
四人。
ーーーかつて山で生きた悪党と、人魚と、ふたりの子供がおり。
人間やめて三十路の秋。
黄泉路をいく人魚がふたり。
最後の記憶を思い出した屍もふたり。
夢かうつつか。この走馬燈は誰の記憶か。
この空舟が流れ着くのは、逆巻きの輪廻、二又に別たれた悪の路……。

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
まさに幽玄という言葉が相応しい作品です。
人魚、雪女といった日本人が聞き慣れた怪異に独自の解釈を加えて新しい妖怪像を築き上げた奥深い世界観に飲み込まれそうになります。
物語が展開して事の真相が明らかになっていくとともに、また次々と謎が持ち上がり、荒波のように繰り返して押し寄せてくるストーリー構成に翻弄されました。
文章もただおどろおどろしいだけでなく、どこか儚げで美しさがありました。まるで白昼夢を見たかのような異界感が見事。

◆改善すると良くなりそうな点:
ライトノベルとして評価する場合、作品にキャッチーさが足りないように思います。
最初からテーマに理解や興味のある読者ばかりではありません。さまざまな読者の興味を惹けそうな物語のフックを考えてみてください。
物語の着地点が読みづらいタイプの作品ですので、話を圧縮して適度なところで話を区切って結論をまとめるようにしましょう。
作者の思うこと、語りたいことが先走っている感があります。すべてを無理に詰め込まず、小分けにすることで読者も受け入れやすくなります。


【エントリーNO18】
旧聖堂で見つかった死体は吸血鬼なのか? ファンタジー×ミステリー
『誰が吸血鬼を殺したか?――または探偵ルードヴィッヒの推理』 作者 冬野ゆな
あらすじ:
歯車と水晶が都市を廻す、蒸気機関全盛期のヨーロッパ。
どれほど光が闇を照らそうと、色濃く残る影に魔物は潜む――小さな町ノースウェアの旧聖堂で発見された死体は、凶器である銀の剣を中心に焼けただれ、聖水が散乱していた。
町の中心人物だったアドルフ・ヴェンデルスは吸血鬼なのか?
死体を巡って警察の捜査は中断、吸血鬼ハンターが調査を開始。そんな中、息子であるテオバルトは父親が人間であることと、殺人事件であると主張。魔術絡みの事件を専門に扱うグリム探偵協会へ調査を依頼する。
はたして探偵ルードヴィッヒは奇妙な死体の謎を解けるのか?

◆点数評価:
・作品のオリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
探偵ものという王道の物語を、著者の持ち味を生かして調理できている点に感心させられました。
ひとつの謎を解き、次の謎へ至るための情報を積み上げていく……この過程をしっかりと描けているのはすばらしいですね。
推理系は解答よりもそこに至るまでの式が見せ所ですので、このように過程の確かな作品は安心して読み進めることができます。
賞でもプラス評価を得られますので、常にお心がけいただければと思います。

◆改善すると良くなりそうな点:
事件の軸、ここでは特に「起こり」の部分へファンタジー要素もスチームパンク要素もからめられていないのが第一の問題。
物語において、世界観の提示は冒頭部で行うべきものです。ここでそれができていないことが、一種の後出し感に繋がっているのは実にもったいない。
もちろんミスリードでかまいませんから、設定は真っ先に、物語の主軸になる事件とからめる形で書き込みましょう。続く展開にも説得力が増します。
第二の問題は、キャラクターの魅力が乏しいことです。キャラの心情や魅力を提示できるエピソードを、著者からすればやりすぎなほどの量挟んでください。


【エントリーNO19】
有名進学校で起きた連続怪死事件。犯人は黄金色に輝く巨大な竜だった――
『竜の足元で魂は物語を紡ぐ【怪】』 作者 風嵐むげん
あらすじ:
――魂とは計測可能な物質である。肉眼では捉えられず、触れることは出来ないが、確かに実体を伴って存在する。よって、魂から生まれた願いや想像もまた物質であり、それらが一点に集結すれば、想像は認識可能な現実となる――
夢宮市立花筏学園。国内では有名な進学校に突如、連続怪死事件が起こった。
およそ人の手で行われたとは思えない手口に、不気味な影が重なり、狂気は徐々に日常を侵していく。
小説家を志す女、勇希サネ。
彼女は事件の被害者となった恋人を生き還らせる為に、事件を終わらせる為に、運命を紡ぎ直す力を持つ黄金の『竜』を蘇らせることを決めたのだが……。

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
学生が集まる離島の学園で巻き起こる怪奇事件というシチュエーションが作品にハマっていて、小さな箱庭のような雰囲気作りがうまい。
年頃の少年少女らしさ、学校生活の空気をよく表現できていたと思います。
誰もが絵空事と思っていた雷竜様の存在が、日毎に現実味を帯びて生徒たちに畏怖を与えていくスリル展開が心胆を寒からしめます。
些細な日常の描写も丁寧に描かれていてスムーズにイメージがわきました。

◆改善すると良くなりそうな点:
後半にかけてストーリーの重厚感が増していくのはよいですが、読者にストレスを与えがちなので、どこか途中で読者を和ませる緩みを作りましょう。そうすることで緊張感もより引き立ちます。
脇役のキャラが濃いのは面白いのですが、肝心の主人公であるサネが力負けしています。
もっと困難な逆境に立ち向かっていけるような強い個性を与えてもいいでしょう。
雷竜様が顕現するプロセスがやや荒唐無稽に感じます。読者を納得できるように辻褄を合わせてください。


【エントリーNO20】
巨大な竜を手術せよ!
『竜斬の理』 作者 齊藤 紅人
あらすじ:
王国と契約を交わす古代種の竜の腹部に大きな腫瘍が見つかった。破裂すれば命が危ない。
宮廷魔術士ヅッソは前例のない巨大な竜の手術を決断する。
通常の刃物では傷つけることさえできない竜の皮膚を切開し、未知なる腫瘍を取り除き、適切に縫合するためには何が必要か?
新興国の妨害を回避し必要な道具を集め、再現不可魔法”竜斬”を求め、仲間とともに東奔西走する。
剣と魔法の中世ファンタジー長編。

◆点数評価:
・作品のオリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
ネタがとてもいいですね!
竜の手術という「答」に至るための「式」をあの角度から打ち出してくるとは、本当にお見事です。
あらすじを見た瞬間、読みたいと思わせられるだけのオリジナリティと期待感がありました。
緻密ながら小難しさを感じない設定も好印象。
謎理論はその場ではそれっぽく見えますが、結局は穴を埋めきれずに破綻するものですので、今後もぜひ意識して作品に盛り込んでいただきたく思います。

◆改善すると良くなりそうな点:
文章の結びが「る」の連続だったり、「た」の連続だったり、単調な点が気になります。
リズムは出るのですが、がっつり読ませる系の物語に文章表現の多様化は必須。ぜひご注意を。
また、物語においてドラマではなく、淡々と記されたキャラの一挙一動を見せてしまっていることも問題です。
情報を取捨選択してひとつの動作に描写を絞り、そこに込められたキャラの心情を書き込んでみてください。見せるよりも魅せる演出を。


今回作品が取り上げられた方も、そうでない方も、講評を通じて作品改善の手がかりを掴んでいただけたでしょうか。いま執筆中の作品に反映し、これから始まる第3回カクヨムWeb小説コンテストへの参加をお待ちしています。

第3回カクヨムWeb小説コンテストは12月1日から開催します。

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おしえて改善点! カクヨムWeb小説コンテスト応募作品反省会【第三回】



第3回カクヨムWeb小説コンテスト開催直前!

……ということで、過去のカクヨムWeb小説コンテスト応募作を対象に、カクヨム運営による作品講評を行うオンライン勉強会「おしえて改善点! カクヨムWeb小説コンテスト応募作品反省会」をスタートします。
講評対象に選ばれた作品は、キャラクターやストーリーなど、作品を構成する5つの要素を5段階で評価して作品分析を行うとともに、長所や改善すべき点をコメントにまとめて指摘します。
この講評を参考に、作品の良い点や改善点についてを自分の作品にあてはまるポイントがないかを考えながら振り返ることで、今後執筆する際の指針として活かしてください。

反省会はカクヨムweb小説コンテスト開催までの四日間、全四回にわけて行われます。
後半戦となる第三回、今回の講評はこちらの5作品です。

『フラットリリーはきらめかない -オタクな二人と同人誌-』 作者 坂神慶蔵
『Re :Life -異世界転生したら嫁ができました-』 作者 兎神 入鹿
『東京歌姫 (トウキョウ ディーバ)』 作者 RAY
『さよならアリア』 作者 原田はとる
『極大魔法戦争マジックシューターズVR』 作者 告井凪


【エントリーNO11】
アイドルアニメにハマったら、オタクな女の子と同人誌作ることになった。
『フラットリリーはきらめかない -オタクな二人と同人誌-』 作者 坂神慶蔵
あらすじ:
笠霧南高等学校一年生の冴城侑也(さえき・ゆうや)は、大人気アイドルアニメ『ラブトゥインクル』のファンだ。番組放映終了後も、同人誌を買い続けるなどして、充実のオタク生活を送っていた。
ところがある日、冴城は下校時にクラスメイトである織枝静葉(おりえ・しずは)から呼び止められ、思いも寄らぬ提案を持ち掛けられる。
「冴城くん。私と一緒に、同人誌を作りましょう」
知らぬ間に冴城は、地元の同人ショップに出入りしているところを目撃され、織枝にオタク趣味を把握されていたのだ。
そして織枝は、冴城を見込んで、同人誌制作を手伝って欲しいという。
実は、彼女もまた熱心な『ラブトゥインクル』のファンで――
つまり、二人は互いに「同好の士」だったのである。
何でも織枝は、夏休みに地元で開催される小規模な同人誌即売会で、自分たちが作成した新刊を頒布したいらしい。
やがて冴城は、織枝の勧誘に引き込まれ、同人誌制作に協力を決意する。
とはいえ、まるで過去に創作経験がないせいで、初めての同人活動は何かと戸惑うことばかり……
果たして、二人は数多の困難を乗り越え、アイドルアニメに対する愛と情熱を、原稿用紙の上に結晶化させることができるのか!?

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
オタクな男子高校生が可愛い女の子と「美少女アイドルアニメ」の同人誌を作成するという近年の流行を捉えたテーマがよかった。
地味系女子が私服では清純派美少女に大変身するギャップが萌えます。
同人誌作りを通して、自分の好きなものに妥協しない意識の高いオタク二人の熱意が伝わってきました。
初挑戦が力不足に終わってしまった寂寥感と、ほんの少しの達成感、悲喜交交な結末が心を揺さぶりました。
文章も読みやすく、同人誌制作の過程もわかりやすく説明できていたと思います。

◆改善すると良くなりそうな点:
主要登場人物が少ないので、世界観が狭く感じます。また同人誌完成までが順調すぎて物足りなく感じます。
例えば、推しカプの異なるライバル同人作家や、創作活動に無理解な親など、二人にとっての壁や敵を設定することで展開も盛り上がりますし、読者の応援や共感を味方につけられます。
二人の意見を対立させてから、和解させ、より絆を深める「雨降って地固まる」演出を盛り込んでもいいでしょう。
物語にさらに起伏を作って恋愛イベントを積極的に起こすようにしてみてください。


【エントリーNO12】
10,000pv やっと突破!応援ありがとうございます!
『Re :Life -異世界転生したら嫁ができました-』 作者 兎神 入鹿
あらすじ:
駄女神の手違いで死んだ須藤 檸檬(ライム)は異世界で人も魔族も亜人種もみんな笑って暮らせる町を作るために奔走するハートフルファンタジーライフです!

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
ゴブリンやオーガ、スケルトンなど、一般的には嫌われがちなモンスターをあえてヒロインにおく着眼点がよかったと思います。
魔物だからと差別せず、人間と魔物の共存を目指す主人公の博愛精神に好感が持てました。
牧歌的なスローライフ風景がほのぼのとして、次々と新ヒロインが登場して賑やかになっていく村のハーレムぶりが微笑ましかったです。
文章テンポがよく、キャラクター同士の掛け合いも活き活きとして、ストレスなく読みやすかった。

◆改善すると良くなりそうな点:
モンスター娘は最近のトレンドではありますが、その種族にしかない魅力や萌え要素をもっとアピールするとよいでしょう。
現代知識を取り上げる場合は資料による裏付けを得るようにし、また土台となる異世界の時代観をさらに練るとよりリアリティが増すと思います。
プロット通りに進行させるためか、キャラの言動がやや性急で唐突に思える部分があります。焦らずに自然体になるように心掛けましょう。
顔文字や特殊文字の制限はありませんが、乱用するとクドくなりますので、ここぞというギャグシーンで効果的に用いましょう。


【エントリーNO13】
東京の火消しと江戸の歌姫が出会うとき――物語は始まる
『東京歌姫 (トウキョウ ディーバ)』 作者 RAY
あらすじ:
人は時として出会うはずのない誰かと出会う。
その中には時空を超えた出会い――「奇跡」と呼ばれるものもある。
そんな出会いを「偶然」と言う人もいる。
しかし、それは偶然のような「必然」――出会った意味は必ずある。
「渡 清志郎」と「シオン」の出会いもそうだった。
江戸時代から続く火消しの家系・渡の末裔で消防業務に従事する清志郎は、江戸時代に端を発する「ある出来事」に遭遇する。
日常が非日常に変わった瞬間、数百年の時を隔てて開かれる、運命の扉。そして、そんな運命を変えようとする、江戸の歌姫シオン。
江戸と東京を舞台に繰り広げられる、火と水の戦い。
過酷な運命に翻弄されながら戦いに身を投じる、清志郎とシオン。
これは、いつも真っ直ぐな気持ちと熱い心を忘れない二人の時空を超えた物語。ぜひご覧ください。

◆点数評価:
・作品のオリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
時代を超えてひとつの事件が結び合うという設定に目を惹かれました。
発想はなにものにも勝る武器ですから、今後もどんどんネタを打ち出していただきたいと思います。
物語の軸を成す謎、そのキーマンとなるキャラの正体を追いかけていく構成もいいですね。
このように読者の目を物語の先へと引っぱることのできるしかけは、審査でも「構成がうまい」ということでプラス評価がつきやすいものです。

◆改善すると良くなりそうな点:
ダッシュ(――)や三点リーダ(……)の多用が目につきます。
著者にとっては余韻や間を表現する手段なわけですが、これらに頼り過ぎる文章はそれだけ非テクニカルで稚拙なものだと判断されます。これらに頼らず、明確に情報を伝える文章を心がけてください。
説明が長く、くどいことも気になりました。特にセリフで延々と語られてしまうと、読者は物語への興味を失い、冷めてしまいます。
説明は最低限に絞り、セリフと地の文で自然に伝わるよう配置しましょう。


【エントリーNO14】
さよなら、にせもの
『さよならアリア』 作者 原田はとる
あらすじ:
高校二年生の冬。学校に行かなくなって三日目、東雲まりあは突然自分の中に入り込んできた「ありあ」と名乗る人物に乗り移られてしまう。
ありあは既に死んだ人間であり、所々記憶をなくしながらも、まりあの通う高校に未練があると告げてくる。
それが何なのか確かめたいというありあの言葉と、度々自分の体を好き勝手に使うその態度にまりあは困惑を隠せず、その存在を迷惑に思う。
ありあを受け入れられないまま、まりあは友人であり、彼女にとって「重い存在」となっていて避けたい相手である少女・森久保来美と再び関わるようになり、その心に苦い思いを再び溜めていく羽目になる。
そして、それは最悪な形で爆発し、彼女の口から飛び出してしまうのだった。
他人や家族に都合のいい自分を見せて、本音を隠してきたまりあと、孤独故に人との繋がりを求め、一つの愛を追い求めようとしたありあの「本当」を探す物語。

◆点数評価:
・作品のオリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
情感のある冒頭部が実にいい「つかみ」になっていました。
冒頭部は作品の顔――第一印象を決める重要ポイントです。ここで読者の目をつかめるのは強いですから、少々あざといくらいにやってやろうと意識していただければ。
視点をブレさせず、主人公に固定できているのもいいですね。
小さなエピソードのひとつひとつにまで主人公の感情が行き渡っていて、それが読者の共感を呼ぶ効果を演出できていました。

◆改善すると良くなりそうな点:
性別の異なる相手が自分の中に入ってしまった!その異常事態に対する主人公の感情の動きが薄いため、ご都合的に見えてしまっています。
この「著者の都合」は、本来作品が受けられるはずだった評価をぐっと下げてしまいますので、まずはそのキャラの自然な感情とはどうあるべきなのか(驚くのか、とまどうのか、さくっと受け入れるならなぜそれができるのかの背景設定をどう説明するか)? を第一に考えてみてください。
また、主人公の動作や感想をていねいに書き込もうとしすぎる余り、かなりの冗長感があります。なにを書くべきか、はぶくべきかの取捨選択を。


【エントリーNO15】
ダイブじゃないVRゲームで、主人公がチームメンバー集めて頑張る青春物語
『極大魔法戦争マジックシューターズVR』 作者 告井凪
あらすじ:
「キミが負けたのはね、魔法の使い処が悪いのと、正面から敵に突っ込んじゃうからだと思うなっ! それから――」
ある日、少年がゲーセンで連敗して落ち込んでいると、可愛らしい女の子に声をかけられた!
慰めてくれる――わけではなく、少年の敗因を語り、ゲームについて熱く語り始めたのだった!
そんな羨ましい――もとい、変わった出会いをした、少年と少女。
沖坂晃人と早瀬理流那は、共に魔法使いの頂きを目指すようになる。
もちろん『極大魔法戦争マジックシューターズ』というゲームの中で。
この物語は、そんな彼らとその仲間たちが紡ぐ、青春の物語であり。
……何故か、VR空間が現実のように見え始める、主人公の物語だ。

◆点数評価:
・オリジナリティ
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
VRゲームという題材が現代の流行を捉えていて、プレイしてみたくなる魅力がありました。
ヒロインが多く、それぞれの可愛らしさが現れていて、シリアスなドラマや熱いバトルの最中でも華やかな雰囲気が楽しくなりました。
ゲーマー特有の精神性や文化がよく表現されていて、プレイ中の暴言や、すれ違いによるチーム分裂など、対戦ゲームのあるあるネタが共感できました。
キャラ同士の掛け合いのテンポがよく、ストレスを感じずに読みやすかったです。

◆改善すると良くなりそうな点:
個性的な女性陣に比べ、主人公のキャラが負けています。ゲームへの熱意やユニークな動機付けを与えるなどして「主人公らしさ」を作りましょう。
よりゲーム性や戦略性を高めましょう。
さらにファンタジーに寄せて、魔法の道具やモンスターを加えたり、個々の役割を魔法剣士や黒魔術師などの職業にしたりするとイメージが掴みやすくキャラも立ちます。
会話が弾んでいるぶん、地の文の薄さが気になりました。情景描写と人物描写に注意してディテールを詰めましょう。
敵味方の状況や位置関係は丁寧に説明しましょう。MOBA系ゲームのようにレーンで明記したり、将棋の棋譜のように座標で表記したり、俯瞰的に伝える工夫をしてみましょう。


今回作品が取り上げられた方も、そうでない方も、講評を通じて作品改善の手がかりを掴んでいただけたでしょうか。いま執筆中の作品に反映し、これから始まる第3回カクヨムWeb小説コンテストへの参加をお待ちしています。
第四回の講評は11月30日に公開します。

▼【12/1~1/31開催】第3回カクヨムWeb小説コンテスト
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▼おしえて改善点! カクヨムWeb小説コンテスト応募作品反省会 kakuyomu.jp kakuyomu.jp kakuyomu.jp

おしえて改善点! カクヨムWeb小説コンテスト応募作品反省会【第二回】



第3回カクヨムWeb小説コンテスト開催直前!

……ということで、過去のカクヨムWeb小説コンテスト応募作を対象に、カクヨム運営による作品講評を行うオンライン勉強会「おしえて改善点! カクヨムWeb小説コンテスト応募作品反省会」をスタートします。
講評対象に選ばれた作品は、キャラクターやストーリーなど、作品を構成する5つの要素を5段階で評価して作品分析を行うとともに、長所や改善すべき点をコメントにまとめて指摘します。
この講評を参考に、作品の良い点や改善点についてを自分の作品にあてはまるポイントがないかを考えながら振り返ることで、今後執筆する際の指針として活かしてください。

反省会はカクヨムweb小説コンテスト開催までの四日間、全四回にわけて行われます。
第二回となる今回は、以下の5作品を講評いたします。

『帝都つくもがたり』 作者 佐々木匙
『ブルーウィング・ストライカーズ』 作者 柏沢蒼海
『ルナティック・ブレイン【-特殊殺人対策捜査班-】』 作者 橋依 直宏
『狼牙と王下冥喚術師』 作者 鶯ノエル
『異世界ゲート審査官の日常』 作者 ゴッドさん


【エントリーNO6】
百物語にどこか足りない、夕闇の中の恐怖譚
『帝都つくもがたり』 作者 佐々木匙
あらすじ:
昭和初期の帝都・東京。酒浸りで怖がりの文士・大久保と利に敏い記者・関の二人は怪談を集めるため、あちこちを奔走する。中には本物の怪異も紛れていて……。

◆点数評価:
・作品のオリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
レトロティックな世界観が物語の最初から最後まで、きちんと貫かれていたのは好評価。
応募作は世界観が途中でブレてしまうものも多いですので(主にストーリー的な辻褄合わせで)、ここがしっかり構築できているのは評価ポイントとなります。
そして文中で、妙にひねった難読語が使われていない点もいいですね。
誰にでも伝わる言葉を選ぶことはエンタメの基本ですので、ぜひその姿勢を貫いていただきたく。

◆改善すると良くなりそうな点:
セリフに頼り過ぎている印象を受けました。
セリフは心情や感情、情報を端的に見せられる便利なものですが、著者が表現したい作品の雰囲気――「におい」をかき消してしまうものでもあります。
セリフは大事なものに絞って、効果的に配置していきましょう。
そして地の文がほぼ説明、という点も気になります。
「におい」を感じさせる叙情表現や、文字を使ったビジュアル的演出(一行にひと文字だけ印象的なワードを置く等々)などを考えていただくと、完成度はさらに高まります。


【エントリーNO7】
僕らの夢と希望を懸けて、群青の空と紺碧の海を駆ける――
『ブルーウィング・ストライカーズ』 作者 柏沢蒼海
あらすじ:
大陸のほとんどが海に沈んだ世界。
多くの人々が残された大地にしがみつくように生きていた。
それでも人々は争うことは止めることが出来ずにいた。

世界では比較的平和な「ノースポイント諸島」で学校に通いながらも民間パイロットとして働く「レオ・ムラクモ」
各地で転戦している少年傭兵「シュウ・セラフィード」
2人は普通の女子学生の「シイナ・クロス」に巻き込まれる形で、小型戦闘機<シエラ>を用いたエアレースに挑むことになった……

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
まず航空機レースという作品のウリが明確で、格好良くて男性読者全般にウケがよさそうです。
青春を感じさせる青い空と海の島国を舞台に躍動する少年少女の姿が眩しい。傭兵として争いに明け暮れていたシュウが日常の尊さを知り、パイロットとして自分の殻を破って成長していくレオの、両者の変化が描かれていたのもよかったです。
空戦シーンでは臨場感と緊張感にあふれ、大空を自由に飛び回る開放感や爽快感が伝わってきました。

◆改善すると良くなりそうな点:
物語で発展しているのが戦闘機の技術だけなのがもったいない。サポートメカやドローンなど、もうひと捻りSF要素があっても楽しい。
バディものであればシュウとレオの意見の対立や、男同士の友情がもっと見てみたかった。例えば、シュウを冷徹な現実主義者とするなら、レオを熱血漢の理想主義者のようにもっと対比させるキャラに描くと互いの個性が引き立つと思います。
地の文が冗長化する傾向があります。会話文を交ぜてテンポを良くし、専門的な説明が淡々と続かないようにしてください。


【エントリーNO8】
あなたは本当に一度も、【人を殺したい】と思ったことないですか?
『ルナティック・ブレイン【-特殊殺人対策捜査班-】』 作者 橋依 直宏
あらすじ:
2042年、ある『政策』によって、世界一安全な国となった日本。
父の死をきっかけに刑事となった三輪蕗二は、念願の警視庁へ異動する。しかし、そこで待ち受けていたのは、蕗二最大の敵≪犯罪者予備軍・通称ブルーマーク≫だったー。

人は、なぜ人を殺すのか。
誰も口にしない禁忌と人間の狂気を≪ 視る ≫。
その答えを知ったとき、あなたは目を背けずにいられるか。

ここで描く事件、悲劇、未来……全て【あり得る】!

◆点数評価:
・作品のオリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
作品から匂い立つ雰囲気がありました。これからハードでタフな物語が始まる、ということが数行で伝わってきました。
このことがもたらす期待の高さは、審査でもかならずプラス要素となりますので、ご自身の武器として大事にしていただければと思います。
そしてウェットなテーマと、海外の刑事ドラマを思わせるドライな展開が両立しているのもおもしろい。著者の持つセンスがしっかりと感じられました。

◆改善すると良くなりそうな点:
表現のエッジを立てようとしすぎて、むしろ陳腐になってしまっている文章が多々目につきます。
基本的に読みやすくわかりやすい文章を心がけ、見せ場で一文、印象的な表現をする。
それだけで大きく評価が変わる点ですので、ぜひ心がけていただければと思います。
次にキャラクター。かっこよさを出そうとして上滑りしてしまっている感を受けました。
個性はセリフだけで表現せず、地の文による動作表現(しぐさ等々)や心情描写で補強してあげると際立ちます。


【エントリーNO9】
少女と奴隷武闘士の少年が出会うとき、壮大なる運命の歯車は回り出す――。
『狼牙と王下冥喚術師』 作者 鶯ノエル
あらすじ:
「――名はエリカ・S・ブラックバーン。こう見えて王下冥喚術師をやっている。よろしくな、レオ・バイマイスター」

奴隷武闘士だったレオは、ひょんなことから小便臭いガキ、エリカにその身を買われて、異邦の逆徒と戦う王下冥喚術師付きの狼牙となった。
母であるアンネリーゼの魂を収奪した異邦の逆徒の長、炎髪の戦駆天姫への復讐を誓っていたレオに、それは正に僥倖。
しかしレオは知らなかった。己の私怨が世界の趨勢に影響を与えるトリガーだったことを。
王道のヒロイックファンタジー、ここに胎動す――。

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
北欧神話をベースに独自のファンタジー世界を再構築しようする工夫が見られました。
駆け出しで世間知らずなエリカとそれを見守るレオの姿が仲の良い兄妹のようで和みましました。
エリカの力の秘密が明かされるにつれて話のスケールが広がって、先に待ち受けるルカとの戦いを盛り上げていく展開の流れがよかった。
最初はお堅いイメージの王道ものと思っていたのですが、キャラの掛け合いが弾むようで過酷さや困難を意識させない文章がよかったです。

◆改善すると良くなりそうな点:
世界観にもっと「異世界らしさ」があるとよかったと思います。
例えば、獣人や妖精のような異種族であったり、空飛ぶ島のような幻想的な土地であったり、その世界に訪れてみたくなるような魅力を考えてみましょう。
主人公とヒロインの関係に必然性があるとさらによいでしょう。
二人を衝突させてから和解させたり、あるいは絆が増すと戦闘力も増すとか、主人が死ぬと護衛役も死ぬなど、能力に制約を加えたりすると恋愛やバトルにも緊張感が出て読者の応援を引き出せます。


【エントリーNO10】
変人審査官 VS 迷惑異世界人! 勝つのはどちらだ!?
『異世界ゲート審査官の日常』 作者 ゴッドさん
あらすじ:
遠い未来の日本にて、異世界へ通じる門が発見されました。
その結果、いつでも異界から色んな人(?)がやって来るようになります。
しかし、その中でこの世界に危害を与えそうな人物は入界拒否をしなくちゃいけない訳で、人間の科学力を用いてそのチェックを行います。

あなたもこの職場で働きませんか?

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
何もかもがユニークで他に類をみない作品。
異世界と現代社会のギャップから巻き起こる事件や大騒動が笑ってはいけないのに思わず笑ってしまう独特な世界観が面白い。
主人公が無気力無感動にみえて思いやりや芯がある不思議なキャラクターであり、異世界人たちもキャラが濃くてツッコミが間に合わない。
ほとんど審査ゲートの場面しかないのに、門の向こうの異世界の情勢が変化していくのが読み取れてちゃんと世界観の広がり感じる。
ストーリーは笑いあり涙ありで起伏もあり、読者を翻弄させる怒涛の急展開が素晴らしい。

◆改善すると良くなりそうな点:
きわどい描写やバイオレンスな展開が多いため、やや読者を選びそうです。もう少しマイルドにすると読者層も広がると思います。
キャラクターの人物描写が簡素に思います。ヒロインのビジュアル面の可愛さや魅力をしっかり伝えましょう。
ロゼットと恋人になるまでが駆け足気味なので、文化の違いで気持ちがすれ違ったり、それまで気づかなかった相手の一面を発見したり、もっと恋愛イベントを盛り込みこんで、お互いに歩み寄っていく情景を厚く描きましょう。


今回作品が取り上げられた方も、そうでない方も、講評を通じて作品改善の手がかりを掴んでいただけたでしょうか。いま執筆中の作品に反映し、これから始まる第3回カクヨムWeb小説コンテストへの参加をお待ちしています。
第三回の講評は11月29日に公開します。

▼【12/1~1/31開催】第3回カクヨムWeb小説コンテスト
kakuyomu.jp
▼おしえて改善点! カクヨムWeb小説コンテスト応募作品反省会 kakuyomu.jp kakuyomu.jp kakuyomu.jp

おしえて改善点! カクヨムWeb小説コンテスト応募作品反省会!【第一回】



第3回カクヨムWeb小説コンテスト開催直前!

……ということで、過去のカクヨムWeb小説コンテスト応募作を対象に、カクヨム運営による作品講評を行うオンライン勉強会「おしえて改善点! カクヨムWeb小説コンテスト応募作品反省会」をスタートします。
講評対象に選ばれた作品は、キャラクターやストーリーなど、作品を構成する5つの要素を5段階で評価して作品分析を行うとともに、長所や改善すべき点をコメントにまとめて指摘します。
この講評を参考に、作品の良い点や改善点についてを自分の作品にあてはまるポイントがないかを考えながら振り返ることで、今後執筆する際の指針として活かしてください。

反省会はカクヨムweb小説コンテスト開催までの四日間、全四回にわけて行われます。
第一回となる今回は、以下の5作品を講評いたします。

『にごろあまた』 作者 二五六九
『人間兵器のグロワール』 作者 草詩
『花嫁日和は異世界にて』 作者 和本明子
『Qutie Crazy Doll ~僕は彼女の着せかえ人形~』 作者 神坂 理樹人
『右カウンター赤道より』 作者 梧桐 彰


【エントリーNO1】
「美しさ」や「正しさ」に惑わされるな!心の声に従え、抗うな!
『にごろあまた』 作者 二五六九
あらすじ:
全ての事象を最大限観測せよ!
「美しさ」や「正しさ」に惑わされるな!心の声に従え、抗うな!どんな過去であっても受け入れろ!今を生きてくれ!
2569開発ログより

◆点数評価:
作品のオリジナリティ:
キャラクター:
ストーリー:
世界観:
文章力:

◆良かった点:
キャッチーなネタを冒頭で正しく提示できているのはすばらしい。
応募作には「この後でおもしろくなる保証」がありませんから、冒頭でしっかりその保証を示しておくのは有効です。特に連作短編の場合は読む側の気持ちが一話ごとに切れてしまう部分がありますのでなおさらに。印象づけは非常に重要となります。
そして著者ならではの世界観。これをなんとなくではなく、各話で角度を変えながら見せられているのは好印象です。次作でもぜひこだわっていただければ。

◆改善すると良くなりそうな点:
時間という「場面」を使った構成ですが、これらの繋がりに含められたしかけがうまく起動できておらず、著者が目ざしたカタルシスをうまく演出できていない点は問題です。
各エピソードにパズルの1ピースのようなヒントを明示する、ミスリードできるようなしかけを作るなど、構成的にもうひとひねりできるとかなり印象が変わりますね。
読者は作者ではありませんから、いろいろ察してはくれません。
読者をエンディングまで引っぱることのできる構成を心がけてみてください。


【エントリーNO2】
ゴブリンと人間。 血塗れの種族間抗争が、そこにはあった――。
『人間兵器のグロワール』 作者 草詩
あらすじ:
辺境の地を襲ったゴブリンの侵略と、それに立ち向かう守備隊と巻き込まれた住民たちをめぐる物語。
人間たちの国、イスハルト帝国の東端に位置する、小さな街で事件が起こる。
祭りの日だというのに、港からは誰もやってこない。おかしいとは思いつつも、問題にはせず、のどかだが地域復興をかけた祭りが始まっていた。
そこに忍び寄るゴブリンたちの気配も知らずに。
街の青年オルフとヘンリーは、その日も守備隊長から訓練を受けていた。
彼らの頭は祭りのことでいっぱいで、守備隊長が港から荷が来ないという問題に駆り出されても、大して気にしてはいなかった。

◆点数評価:
・作品のオリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
戦場という舞台の臨場感がありましたね。物語の入りに一見地味な食の話題を持ってきたことで、それを塗り潰すように到来する戦いの物語が際立っていました。
日常と非日常のスイッチングが描写できることは、作品執筆において強い武器になります。
また、あれもこれもとネタを詰め込むことなく、ひとつの戦いを書き抜いたストーリーに視点ブレがなく、充分以上のドラマ性を感じられたことも評価させていただきたい点です。

◆改善すると良くなりそうな点:
セリフに頼り過ぎていて情報不足です。
作者は作品のすべての構造を知っていますが、読者はちがいます。まずはこのことを意識してください。
その上で地の文を活用し、状況説明や心情描写、セリフ同士の区切りとして活用してみてください。
そして文章ですが、一本調子且つ読点過多でテンポがかなり悪い印象を受けました。
メリハリをつけるためにも、文章ごとに長短や句読点の打ち方での変化を心がけていただければ。


【エントリーNO3】
異世界で食事を――美味しいのは料理だけとは限らない?
『花嫁日和は異世界にて』 作者 和本明子
あらすじ:
若林日和(ワカバヤシ ヒヨリ)は、料理が少し得意な普通の女子中学生(15歳)。
変わった…珍しい所があると したら、飛芽島という島民で、先祖が海賊だったというぐらい
買い物で訪れていた本土から、船で島に帰る途中で事件が!?
船が沈没して、何者かによって海底へと引きずり込まれてしまった。
命からがらに浮上して海面へと顔を出すと――船上で兵士と海賊たちが斬り合いをしている異様な光景が!
そして息つく暇もなく異形な生物が襲いかかってくる!
あきらかに現実世界(地球)とは違う世界――そう、ここは異世界(ミッドガルニア)。
危機の所を助けてくれたのが、若き海賊の頭目―ヴァイル―
元の世界に戻るための交換条件にと、料理をご馳走したのが切っ掛けで彼に気に入られて求婚を!?

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
異世界料理ものという流行り要素を取り入れている点がキャッチーで、イケメン海賊に惚れ込まれてプロポーズされるという展開が乙女の夢にあふれていました。
大胆で男気あふれるヴァイルと、女らしくも芯の強いヒヨリの組み合わせがお似合いで胸がときめきます。
妖精や海魔といった生き物や巨大樹の森なども異世界感が出ていました。大凧で帆船を牽くというアイデアも潮風や海賊らしい自由奔放さが現れていて爽快感がありました。
文章もバランスがよく安心感があります。

◆改善すると良くなりそうな点:
いろいろな個性の男性キャラを登場させて、好みのタイプの異なる読者も満足感を得られるようにしましょう。
料理以外にも掃除洗濯などの女子力を発揮するシーンがあってもいいと思います。例えば、衛生管理を徹底させることで病気を減らしたり、着こなしを洗練させることで王国民に一目置かれるようになったり、異世界の生活習慣や意識を一変させる活躍を考えてみましょう。
ヒヨリが異世界に召喚された理由をもう少し掘り下げましょう。
実は神さまの加護を持っていたとか、異世界から地球に渡った偉人の血を受け継いでいたとか、異世界との繋がりを作るとより深く関係性を感じられます。


【エントリーNO4】
お嬢様に誘拐されて、女装しながら彼女の振りってどういうことなの?
『Qutie Crazy Doll ~僕は彼女の着せかえ人形~』 作者 神坂 理樹人
あらすじ:
小山内直《おさないなお》には秘密があった。
それは幼馴染の大串遥華《おおくしはるか》にたびたび女装をさせられて町中を連れ回されていること。
いつ誰にバレてしまうかとビクビクしながらも、断りきれずにいた。
いつものように女装して出かけさせられていたある日、直は地元一番の地主の娘、中条玲《ちゅうじょうれい》に誘拐されてしまう。
彼女曰く、
「私のお人形にならない?」
窮屈な家を飛び出すために彼女の振りをしろというわがままな命令に仕方なく従っていた直は、玲の秘密を知り、その実現とお人形の地位から脱却するため奔走する。

◆点数評価:
・作品のオリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
なにより目を惹かれたのは展開の大きさでした。状況が動くことで、キャラクターに無理矢理なにかをさせずとも物語が動く。
読む側に冗長さを感じさせない物語運びを心がけられている点は、賞の選考でプラスポイントとして挙げられるプラス要素です。
これにつきましては、衣装ごとに章分けされた構成もそうですね。
読者にとっての読みやすさとはなにか? それを考えるだけでなく、実現できる力は大きな武器になります。

◆改善すると良くなりそうな点:
女装というネタをうまく転がせていないのが最大の問題点。
エピソードごとにプロットを整理し、大きな見せ場になるネタを用意してください。
そしてキャラにももっと極端な個性づけを心がけてください。
これだけの種々多様な作品が溢れるライトノベル界において、著者が思う「極端」は読者にとって「よくある平常」にしかなりません。
もっと大げさに、理不尽に、ぶっ飛ばしたネタとキャラで勝負を!
また、文章のテンポが一定でメリハリに欠けますので、長文と短文、読点の付け方で工夫を。


【エントリーNO5】
33才、弱気でぐうたら。どこにも勝てる要素がない
『右カウンター赤道より』 作者 梧桐 彰
あらすじ:
インドネシアの首都ジャカルタで開店休業中のボクシングジムを経営する老ボクサー、ロニーのところへ、日本で売り出し中のボクサー、薮田から試合の依頼が飛び込んでくる。
とある事情からやけっぱちになって日本を飛び出しジムに居候していたアキラはこんな試合は無理だろうと言うが、普段は弱気なロニーがなぜか出ると言ってきかない。
しょうがなく練習に付き合い始めると、予想しなかった出来事がいくつも起こり、さらにわずかながらロニーにチャンスがあることもわかってきた……
ボクシングという過酷なスポーツを通じて、不器用ながらも情熱にあふれる男たちを描く現代ドラマ。

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
ボクシングへの熱い意気込みが迫ってきました。
辛いことがあってもボクシングを諦められないロニーとアキラがチャンスを得て再び立ち上がる不屈の精神に胸を打たれました。
相手の出方を待ち構えて臨機応変に立ち向かうリング上の駆け引きが深く、移り変わる状況を克明に表したスピード感と躍動感のある描写が手に汗握ります。
あまりボクシングに興味のない自分も一気に読ませてしまうストーリー展開の勢いがすごかった。

◆改善すると良くなりそうな点:
さらにインドネシアの観光地や名物、お祭りなどを登場させて現地感を盛り上げましょう。
善意の協力者が向こうからやってくるのではなく、主人公が事件や騒動に巻き込まれ、そこから人望や人脈を獲得するようなイベントを起こしましょう。
さらに勝つための動機付けを積み上げて読者の応援を引き出しましょう。
負けたらジムが閉鎖されてしまう、対戦相手の支援者を悪役にする、交際相手の父親の許可を得るためなど、背負うリスクや勝ったときの見返りが大きいほど試合にも緊張感が生まれます。



今回作品が取り上げられた方も、そうでない方も、講評を通じて作品改善の手がかりを掴んでいただけたでしょうか。いま執筆中の作品に反映し、これから始まる第3回カクヨムWeb小説コンテストへの参加をお待ちしています。
第二回の講評は11月28日に公開します。

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