聖剣と静かなる水

淡 深波

Prologue

 セントカルド王国に王子二人あり。兄王子はその気性粗暴にして民を虐ぐ。弟王子はその気性温和にして民を慈しむ。民の敬うところ、自ずから明らかなり。

 然れども、世の事は必ずしもことわりに従わざるものか。宮中に敢えて暗愚の王子を擁して権益を貪らんとする者共あり。ついにこれを唆して変を生ず。玉座を襲いて父王を廃し、弟の宮に火を放つ。哀れなるかな賢き王子。炎に捕らわれ失せ給いぬるか、煙に紛れ逃れ給いつるか。その存否、杳として未だ知れず——。

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