男子選抜二人三脚 フルマラソン

おおお? あれぇ? ちょっと待て!


「どうしたよ?」

「だ、男子選抜ってなんだよ、これ?」

左右に見える幕にでかでかと書かれた文字を見てつい声を出す。

「は? 今更なに言ってんの?」

「いやいや、隣の女性はどこ行った?」 俺、さっきまで、女性と走ってたよな?

「これから走るんだろが、ほんと頭おかしくなったのか?」

「男となんて嫌だぁぁ」

「おい、ほんとどうしちゃったんだよ」

 と、そこに大きな声。 

『落ち着け、この馬鹿ちんが!』

え? いや、だって? 二人三脚ですよ? 男同士ってなんなの……


「やっと落ち着いたか?」

「いや、納得はしてないが、現状把握はできたわ」やる気が出て来たわ。

 と、相棒の首をチラと見やると、これってさぁ。


また、既視感デジャブが……


『二人三脚フルマラソンを完走せよ!』


 きたぁ! 今日は多いな、何度目だ? って、ええ? フルマラソン!?!


「さぁ、行きますか」

「えーっと、フルマラソンってさぁ」

「要所要所でメンバーが待機してて、補給食や水は万全だ!」

「で、ですよねー」とほほ。なんでこうなるの。


 パァァン!


 スタート音とともに、周りの選手が一斉に走り出した。

「そやぁ!」 「どつぜい!」 もう、どうにでもなれ……


 俺と、相棒は、華麗に駆け出した。


「ふっ、はっ」相棒に合わせ、足並みをそろえる。

何組かの選手と抜きつ抜かれつのデットヒートを繰り返す。

「ちょっとペース下げて様子を見よう」

「10組以上抜いたしな」ペース配分は大事だもんな、うん。

やっと景色を見る余裕が出てきたぞ。


「景色が綺麗だなぁ」つい、声が出た。

「そうだな、今日はマラソン日和になってよかったな」

「心地よい風が吹いてて、気持ちいいよな。最高だぜ」

「やっと、本調子になったようだな。スタート前はびびったぜ」楽しそうにいいやがる。

「あー、うん。さっきは混乱しててすまん」素直に謝る。

「まぁ、俺も隣が女性だったらなぁ、って思ったこと何度かあるしな」

「そ、そうか」

お互い、照れ隠しのように「「ハハハハ」」と笑い合っていた。


***

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る