Dream or Real ? -Side A- ~夢と現実の狭間であがく男~

素焼き☆悠

The First day

山道を駆け下りろ! (3/13改稿)

 はっ、なんだ。 ここはどこだ。


意識が反転した、気がした。 あれ、俺はたしか研修室でテスターとして準備してたはずじゃ?


 ゴツゴツした岩場の上に立っていた。 キョロキョロ辺りを見回すと山道のようだ。 左右を見渡すと、うっそうな森が茂っている。


 服装は、普段着だよな。 登山する服装じゃないぞ、どうなってんだこれ。

いやいや、その前に、俺はなんでここにいるんだ。

獣道かと思ったが、人が定期的に歩いているだろう、と思える道にはなっている。


うーん、なんでこんな所にいるんだ、俺。


そう思った瞬間、いきなり頭に直接声が響く。


『走れ、そこから下山して公道の見える道まで。 そこが終点だ』


はっ? なんだ? 


「おい、誰だ。 俺はなんでこんな所にいる?」


 改めて自分の体を調べると首になにか付いている。 なんだこれ? 首輪か?

外そうとしたが、金属製のそれはびくともしない。


くっそ、どうしろっていうんだ。 走れだって、なんで? 下山って俺、山の何処ら辺なんだよ、何キロ走ればいいんだっての! くっそ、考えろ考えろ、なんで俺はこんな所にいるんだ。


バキッ。 木の枝が折れる音が後ろからして振り向いた。


「グルルルルル。 グァッ」   え? え? 熊・・・・・・? 白っぽいってええ、?? 


立った姿は俺の倍はある。 3メートルちょいってところか。 で、全身真っ白、金属製かなにかだろう。なんか首周りは黒いワイヤみたいな物が見える。


俺の方を見た。 なんだか、睨みつけているようにも見えるな。 え、ひょっとして興奮してる?


熊と出会ったらまずは落ち着いて対応だ、と聞いていたが、。 今の状況は逃げるが勝ちと見た。


どこの誰だかしらないが、逃げてみせろというならそうしましょう。 どうせ、これ夢かなんかだろうしな。全速で走ってみせちゃる。


「ガァッ!」 よく見るとロボット熊との距離は20メートルあるかないかだろうか? いや、山道だからあてにならんか。


気が楽になったせいか、緊張が和らぐ。 果てしなく先に感じる終点があると信じ、俺は山道を走りだしていた。


 「ガァオッッ」  ひゃっ、追っかけてきたみたいだな。

山道のせいでうまく走れないぞ。 なんでロボット熊なんかに追いかけられる羽目になってるんだっての。


獣道でないのが悔しいところだ。 後ろから丸見えじゃんか。 所々で、岩が邪魔して走りづらいのなんの。 さずがに焦ってきた。


チラと見ると、未だに後を追いかけて来ているなぁ。 余裕あるじゃん、と思った瞬間、ゴウッという音が聞こえて背中に痛みを感じた、え? 


や、やばい!! もう追いつかれたのか?! 冗談じゃない、夢のなかだろ、これ。痛みがハンパねぇ。


 走るの辞めちゃおうか。 流石にへばってきた。 どうせ、夢だろうし。


“ロボット熊と格闘したと語る男性。 精神病棟へ送られる”


 そんな新聞のニュースの記事が出たら、両親が泣く、きっと泣く。


あれ? 前方に林が切れて、ぽっかりと先が見える場所があるぞ。

走りながらサラサラという音が耳に入ってきて、やっと気づく。 左側に川がある?

ひょっとして、前は崖? だんだん水が落ちているらしき音が聞こえてきた。


道は? 前方を見ると右になだらかなカーブを描いて続いてる。

ってことは、道なりでなく真っ直ぐ行くと、滝があるのか? ダイブするのも面白いかも。 どうせ夢の中だしな。 寒くないだろ、きっと。


 今の状況を楽しみ始めてる自分がいた。

 

水音が大きくなる。 先は崖で滝がある、と勝手に決めた、いや間違いなくあるだろう。 イチかバチか。 飛んでやろうじゃないの。


ちらっと後ろを見た。 ロボット熊はもう、俺を捕まえる気満々に見える。 腕を伸ばして俺に掴みかかろうとしていた。 南無三。 


覚悟を決めて、走り続け、そして俺は迷わず飛んだ。 「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」


水面が見えた。 結構高い場所から飛び込んだ気がする。 とにかく口で息を大きく吸い込んで次に来る痛みに備えた。 


バッシャーン!!!


水の中は、澄んでいたように思う。周りを見てる余裕もない。必死で手で水を掻き、水面に出ると周りを見渡し岸に向かって必死に泳いだ。


ロボット熊、どうしてる?


「ガアウォォォォォン」 鳴き声だろうか、崖の上を見ると熊がこちらを見つけたのかどうか分からないが、引き返す姿がちらりと見えた。


はぁ、取り敢えず助かった。 岸まで必死に向かい這い上がった。


下山して、終点地点に向かうか。 そう、思ったところで、俺の意識が切れた。


***


「被験者対象 No.000125 実験はここまで。 次の実験は明日夜よりとする」


「下山終点地点で待機していた係員は状況把握後、解散とする」


「救護班、被験者を救護ののち、傷などの処置並びに回復措置の上、例の施設へ戻しておくように」


「しかし、なぜを見て逃げ出したのでしょう」


 そういうケースに当たったということだ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る