衒学趣味とライトな筆致の両立がここにある!

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ただ暗号を解くのみだとしたら、つまらなかったと思います。隠されたメッセージの仕掛け自体は極めて単純、小学生のクイズ本レベルのものもありますから。ですがこの物語は、『いろは歌』における逸話や、数字感覚の盲点をつく小噺、干支や十二支の概説などといった知識ネタを暗号解読に織り交ぜ、衒学的なおもしろ味をもって謎解きを演出することで、ストーリーを格段に面白くしています。作風としては北村薫の『空飛ぶ馬』の短編に近いものを感じました。

その一方、衒学趣味があるといっても、京極堂シリーズのような講釈ガチ勢とも立ち位置が違うと思いました。中高生をターゲットにできそうなライトさを保てるよう、ペダンチックさ(?)を抑えているように見受けられます。知識が濃過ぎれば重くなる、知識が浅すぎれば陳腐になる、その中で綺麗にバランスをとっているように思えました。


今はまだ第2話までしか読めてませんが、話の区切りが良いので、他の作品を読みつつ、暇なときに1話1話読み進めようと思います。連作短編としての出来次第で、評価をあげさせていただきます。

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