第5話 横断歩道の子猫

まるで猫のようだ。


染み入る寒さが背中を丸めさせる。


冷たくなった指先をポケットの中で生き返らせながら信号を待った。


何かを感じて顔を上げると横断歩道の向こう側に女が立っていた。


いい女だ。


そこだけ春の陽が射したように前髪を風に遊ばせている。


いつの間に現れたのか...子猫が女の脚にまとわりつきだした。



女は女神のように包みこむ笑顔で子猫を抱きあげた。


瞬間、俺はハートを射抜かれた。

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