第6話

 その日は二日降り続いた雨が上がり、冬とは思えないほど暖かかった。

 車に乗り込み、いつもどおりに出勤する。

 いつものように桜の木が見えはじめたとき、会社の近くのあの川縁にパトカーが停まっているのを見つけた。

 姉のことは不思議と思い出さなかった。

 何事かと近付いて川を覗き込んだ。そこには紺色の軽自動車が、少しの姿を残して沈んでいた。

 隣で見ていた人が、「この二日間の雨で増水した川に落ちたみたい。まだ人が乗ってるんだって」と教えてくれた。

 もう一度川に視線を戻す。

 段々と引き上げられていく車に見覚えがある。あれは、まさか……

「由香!?」

 

 自分の叫び声で目が覚めた。


 ――夢、か

 今度は高校時代からの友達が死ぬ夢を見るなんて……


 しかし、この十日間の天気は気持ちとは裏腹に快晴で、雨で川が増水しているはずもない。

「私……よっぽど疲れてたのね」

 そう呟きながらカーテンを開けた。

 雨が静かに降り始めていた。

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