運命の人は童話の中にいた

良い意味でネット小説らしくない、安心して読める作風。
異世界転移ものはそれこそ星の数ほど世にあるけれど、この物語の特徴は元の世界に帰る条件が最初から提示されていること。そのため主人公のユウキは常にこの条件を気にしながら進んでいくことになり、一種のスパイスとなっている。
元の世界に戻るため童話を完結させなければならないのに、水も食料もない森に放り込まれた危機的状況はまさにサバイバル。
そんななかでユウキが唯一頼ることができるクリスの存在は大きい。見た目は絶世の美少女、でも火付けから魚とりまで何でもこなすサバイバル能力の持ち主で、その男前ぶりには読んでいるこちらも惚れ惚れしてしまう。恐ろしい15歳だ…。
頭が固いけれどしっかり者のユウキと、聡明で美しいけれど実は子どもっぽいクリス。それぞれの葛藤やたがいに惹かれていく様子は十代の少年少女そのもので、若いっていいな…と素直に思ってしまった。
第1部のクライマックスでクリスと元の世界、どちらを選ぶか決断を迫られるシーンはまさに異世界ものの醍醐味。書籍版ではここで終わるが、続く第2部から明かされていく二つの世界の秘密にドキドキしながら続きを待つのが楽しい。異世界ファンタジーとしても、恋愛ものとしてもオススメの作品。

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