脚注1

〔Windows3.0〕

Windows3.0の日本語版は91年1月23日に販売された。マウスでアイコンをクリックすることを基本操作とするグラフィカルユーザインタフェース (GUI) を持ち、複数のタスクを同時実行できるマルチタスクOSで、4年後の Windows95の直接の先祖ではあるが、MS-DOS環境から起動させるためDOSを別途購入する必要があった。

その意味では独立のOSではなく、立ち上げる前にまずMS-DOSが動作している必要があるという点で、DOS上の「アプリケーションのひとつ」というポジションであった。

  当時CD-ROMはあったがCD-ROMドライブを標準装備したパソコンはごく少数だった。そこでアプリケーションはフロッピー・ディスク(FD)で提供されなくてはならず、Windows3.0の場合その枚数は半端ではなく、瓦せんべいの詰め合わせのような無骨な形で殺風景な箱に梱包されていた。

91年5月 の時点で全世界で300万本以上の販売実績があった。世界的なインパクトはのちのWindows95ほど大きくはないが、それなりに深刻な影響が広がったのは日本市場である。

折りしも発売時期がDOS/Vの登場と重なり日本でのIBM PC/AT互換機市場の形成に大いに貢献したのだ。

それまで、日本市場は国内メーカーがほぼ独占していた。PC/AT互換機は世界中で販売されるため開発コストは安価で高性能だったが、MS-DOSはそのままでは8ビット言語(アルファベット)しか扱えないため、16ビット言語(日本語)を扱う機能は国内メーカー各社の独自規格で製品化された。このため国内メーカーの数だけ国産MS-DOSの規格が異なりアプリケーションの互換性がないという「機種依存」の状況があった。PC/AT互換機は日本語の障壁のため価格競争力や機能スペックだけでは参入できない状態だったのである。

さらに言えば日本市場は日本電気のPC-9800シリーズの寡占状態にあった。これに対抗してグラフィカルユーザーインターフェースを前面に出して対抗していたのがアップルのマッキントッシュ、シャープのX6800、そして富士通のFM-TOWNSであったが、いずれも弱小勢力にとどまっていた。

WINDOWS3.0とDOS/Vはその膠着した世界を激震させる黒船になった。これがすべての始まりであった。


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