第15話 始まりは迷子から。

暗い暗い夜の森で、ピリオは一人さ迷っていた。


「うぅ、怖いなぁ。

夜の森なんて怖すぎるよぉ。

ダンク〜何処にいるの〜?」


ピリオはダンクの名を呼ぶが、ダンクは何処にもいない。

灯りの代わりに魔法の杖を輝かせてはいるが、どうにか足元が見える程度である。

ピリオが幾ら照らしても暗闇と木しか見つけられなかった。


「うう、まさかダンクを追ってノダリアを越えて山の中で遭難するなんて思わなかったなぁ。

ダンク、何処にいるんだよぉ」


暗い夜の森、ピリオの体力は確実に減ってはいるがそれでも休もうてはせず、震えながら必死にダンクを探していた。

しかし、ピリオ自身全く気付いてないが彼は強力な不運の持ち主だ。

湖の街では筋肉痛で湖を見る事が出来ず、

食べ物の街では食べ物を食べる事が出来ずと、

ハズレクジばかり引いているのだ。

そして今回も例に漏れず、彼の不運から物語は始まる。


「あれ、なんだろこれ」


ピリオが見つけたのは洞窟だ。

暗闇に包まれた森より更に暗闇が岩穴の中で蠢いている。


「ど、洞窟?

まさか、ここにダンクいないよね?」


そう言って洞窟から視線を外そうとする。

すると茂みからガサガサ、と何かが動く音が聞こえた。


「ヒッ、熊!?」


ピリオは急いで逃げ道を探し…そして洞窟に目を向ける。

人という者は危険を感じたら建物の中に逃げたくなる習性がある。

それがピリオの洞窟に対する恐怖を消してしまった。


「早く逃げないと!」


ピリオは急いで洞窟の中に逃げ込み、その姿が闇と同化していく。

そしてダンクの姿が完全に見えなくなった頃、茂みから小さな兎が飛び出した。

そして兎はある物に気付き見上げる。


それは小さな看板だった。

小さな看板には小さな文字でこう書かれている。


『この先魔窟!

人間は絶対立ち入り禁止!』



果たして、洞窟に逃げ込んだピリオの運命やいかに?

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