真章18~不伝~怪力乱神御伽噺~そこにいる~
悪魔の兵士から王へ。
只今不審人物を確保した。彼女が乗っていた鉄の怪物は破壊。現在は『ジコシュウフクサギョウチュウ』という意味不明な言葉を繰り返すだけだ。
彼女に外傷や武器の類いは見られないが、治療道具や包帯を所持している。
何でもダンスを探しにここまで来たらしい。
王よ、この意味がわかりますか?
あのダンスを探す者が現れたのです。
急いで王城へ連行します。それでは!
〜デビルズヘイヴン・魔城『マクガフィン・キャッスル』。
悪魔と堕天使が行き交う城の一番高い場所にある部屋にその王は居座っていた。
デビルズヘイヴンの王、堕天使ベル。
魔王とダンスは、ベルの前に立っていた。ベルはダンスに向け笑みを浮かべ、魔王はベルに頭を下げる。
「ダンスよ、よくぞ戻ってこられた。
もう二度とこの場所に戻らないかと心配していたぞ!」
「王よ、お話があります。
現在地上の国は『ナンテ・メンドール』を名乗る侵略者により壊滅状態にあります……どうか兵を出し、彼等の味方を」
「ダンス!大丈夫だったか、怪我をしてないか?
私は非常に心配していたんだぞ!」
ベルは魔王の報告を無視してダンスに近付く。
ベルは姿こそ人間の、それも美しい顔立ちをした青年に見えるが、その正体は神に対する狂信者であり 神を信じぬ人間や悪魔を何百人と殺し、その残虐さのあまりに堕天した天使なのだ。
ダンスは冷や汗をかきつつも冷静を装う。
「王よ、お願い申します。どうか地上の民を助けてください。
私は貴方達の力を便りにここまで来たのです」
「地上?あいつらを助けるだと?
バカな、あんな神を信じぬ奴等など助ける価値はない。
疾とく炎に焼かれてしまえば地獄の奴等が喜ぶだろう」
「王よ、お願いします。
彼等は一方的な真実のせいで何も罪を犯さないまま苦しみ死ぬのです!
このままでは」
「真実!そうだそれだよ!
ダンスに伝えたい事があったんだ!」
ベルは嬉しそうに魔王を指差した後、給仕に何かを運ぶよう声をかける。
ベルは嬉しそうに笑みを浮かべていた。二人はその笑みに底知れぬ恐怖を感じる。
「ダンス、喜びたまえ!
君の両親が見つかったぞ!」
「はあ?」
思わぬ一言に、ダンスは思わずすっとんきょうな声を上げる。
そして、次に目を丸くし、驚きの声を上げる。
「エエエエ!?」
「そうだその声が聞きたかった!
今給仕の者が両親を案内しておる!」
「べ、ベル様!?
それは本当なのですか!?
本当にダンスの両親なのですか!?」
「その通りだ!両親もお前に会いたがっておるぞ!
ほら、両親を連れた給仕が今扉を開く!」
ダンスが扉にむけて振り返ると、給仕が扉を開けて入室してきた。だが他に人の姿は無く、代わりに給仕が金色の盆の上に何かを持っている。
「え……?
両親は、何処に?」
「いるじゃないかここに……ほら、良く見たまえ。
これが君のお父さんだよ」
そう言ってベルが給仕の盆から取り出したのは、注射器だった。
無機質で透明な筒の中に写るダンスの顔が歪んでいく。
「え……?」
「お母さんもいるぞ、感動の対面だから抱き締めたまえ」
そう言ってベルがもう一つ盆から取り出したのは、試験管だった。
それを放り投げ、呆気なくダンスの手に収まる。
「え…?なんだ、これ?
おい、なんだ、ふざけるな。
こんなのが俺の両親の訳ないだろう!バカにするな!」
ダンスはベルが王である事も忘れ叫び、怒りに身を任せて試験管を床にたたきつける。
試験管はあっさり砕け散り、ベルの笑みが深くなる。
「フフ、ダンス君今大罪を犯してしまったね?
母を殺すなんて行けない事だ」
「ふざけるな!
こっちが真剣に話を聞いてるのに悪趣味な冗談かましてんじゃないぞ!」
「落ち着けダンス!だが王よ!
今の仕打ちは両親が居ない者に対し最大の侮辱!王とて許される事ではありませんぞ!」
魔王がベルを抑えながら王を睨む。
たがベルは笑みを崩さない。
「侮辱?冗談?いやいやこれは本当の事なんだよ。
君は確かに試験管の中の培養液に注射器から遺伝情報を注入され生を受けたんだ。
彼等から聞いた話だから間違いないのさ」
「彼等?」
「紹介しよう、来たまえ」
ベルが指をならすと同時に、背後に誰かが現れる。3、40代のスーツを来た男性だ。
男性は二人を見て狂気染みた笑みを浮かべる。
「初めましてお二人方。
私の名前はナンテ・メンドール。
未来から真実を伝えに来た者であり、アタゴリアンを破壊しつくそうとしている男だ」
続くか?続かないか?
未来から来た更なる真実だけがそれを知っている。
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