第7話 八月 夏と花火 下

 

 かつてかの福岡藩主、黒田長政公が政治の拠点として築いた福岡城。


 その風光明媚な福岡城が空襲で焼け落ち、外堀だけが残ったのを公園としたのがここ大濠おおほり公園だ。

 園内には外周十キロにも及ぶランニングコースと緑豊かに自然が生い茂げ、その隙間からのぞく城跡は時代の流れを感じさせてくれる。

 そんな歴史も自然も今に残る神聖な場所は今現在、ごった返すような人ごみに呑まれていた。


 夏の名物、大濠公園花火大会。

毎年6000発もの花火が打ち上がり、のべ50万人近くの観客を楽しませる一大イベントだ。

 その観客と言うのは地元の中高生のカップルや大学生のカップル、はたまた新婚ほやほやの夫婦に至るまで幸せムード全開の爆発オールスターである。


 (ハー、ハー……ハー、ハー、憎い……、幸せそうなやつが全て憎い……ッ)


 そんな中に明らかに来るところ間違えた変質者がいた。

 言うまでもなく俺だった。


 目を爛々とさせ、怪しげな笑みを浮かべながら人混みの中を練り歩いていく。

 途中、交通整理のお巡りさんに二度ほど職質を受けたが、それでも懲りることなく俺は花火大会を楽しんでいた。


 (やっべ、これやっべ……思った以上に効くわぁ……効くぅ……)


 もはや忽然としか言い表せない表情で、順調に自身のヘイトを稼いでいく。


 お分かりいただけるだろうか、俺は花火大会で花火を見に行たのではない。

それを見て楽し気に過ごす連中を見て自身の怒りボルテージを上げに来たのだ。

 女は涼し気な浴衣を着て自分を飾り、男はそんな女の注意を引くために汗を掻かない程度に着飾る。


そんな中をクタクタのジャージ姿でうろつき、一人孤独を味わう俺。


 その境遇は俺の怒り指数は急騰し、ついでにストレスもマッハである。


 こうすることによってやり場のない怒りを明日の勉強に打ち当てるのだ。

これこそがあるべき夏休みの浪人の姿といえよう。


 (はぁぁ~~~~~頭が……頭が、とろけちゃいそうだよ~~~)


 夏の暑さと祭りの雰囲気が思考を蕩けさせる。

 沿道に並ぶ露店からは活気の良い呼び声がひびき、そこら中から興奮と色香の混じった声が鼓膜を叩く。


 その度に俺の脈拍は大幅に揺れ、体内の血液が沸騰するかのような錯覚に陥る。

 行き過ぎた殺意や悪意は、もしかしたら快楽に近いのかもしれない。


俺の瞼は蕩けるように垂れさがり、悪意と快楽と得体の知れない何かが胸の中でグルグルと渦巻いていた。

 目の前には極上の幸せと喜びが満ちているというのに、それを味わえないどころかただ眺めていることしか出来ないこの屈辱とやるせなさ。


 そんな『焦らしプレイ』というものに本格的に目覚めはじめ、いよいよ浪人としてはおろか人間としても危うくなりそうになりかけたそんなときに俺の中の浪人としての最後のセーフティーネットが発動した。


 (落ち着け……今は、浪人中だ。来年には俺も……この輪の中に入れる。だから……今は抑えろ)


 暴れ馬という名の理性を、世間体という手綱で必死で抑えつけ何とか、危険な一歩を踏み出すこと留めるに至った。 

 人の脆さと強さをまさか夏の花火大会で知ることとなろうとは……


 とりあえずクールダウンするべく俺は出店の焼き鳥屋で、バラ肉と四つ身を頼んでたまたま空いていたベンチの端で一服することにした。


 思えば、師道達と昼食を摂ってから何も口に入れていない。

 今や結構な頻度で腹の虫がなっていることに今さらながら気づかされる。

暴走する理性をそんな空腹にも助けられ、串を頬張りながら俺をゆっくりとストレスを掃き出していった。


 しかし、なぜ屋外で食べる焼き鳥とはこんなに美味たるものなのか。

 旨い物はよいに食えとも言うが、それに視界いっぱいもの花火も加わればその味はもはや無類ともいえる。

 さらにこの場にカップルという悪しき存在がいなければ、なおいいのだが……


 隙あらば溢れ出そうとする悪意を体の一番深いところに押し戻すように、口に串を突っ込む。


 そもそも、本来なら俺は今年にでも普通に祭りを楽しむことが出来たのかもしれない。

 昨年度はセンター試験からのあの判定にも関わらず、頑なに第一志望を譲らなかった結果失敗したわけで、別の選択肢もあった。

 しかし、あの時の自分はそんなことに目をやる時間が持てずそこまで考えが持てなかった。


 いや、これは違う。

 他に選択肢があったことなど、俺は初めから知っていた。

それにも関わらず、ただ第一志望だけ目指し必死で勉強することを自分に強いていていたのだ。

 第一志望以外は逃げだと自分に言い聞かせ、私立など滑り止めだとしても無意味だと断じて。

 まるでそうすることが浪人にとっては正しいことだと決めつけていたのかのように、ただひたすら目前の試験だけを追いかけていた。


 そこに受かってみせるのだと心の底から疑わず……そしてその結果としてこの様だ。

 笑うに笑えない。

 ただ不思議なことに今の自分はそれほど後悔はしていない。

 もちろん、二浪目はしんどいことこの上ないし今の状態に満足などはしていない。

 ただやるだけやることはこの国では美学であり、努力は才能にも勝る宝なのだから。そう思うと、もう一年、さらに一年と浪人を重ねても……


 いかん、いかん!

 これでは、予備校で大きい顔をするあの多朗生たちと同じでないか。

もし、もう一年でもしてしまえば、俺は本格的にずぶずぶと泥沼に足を突っ込みかねない。そのまま、高校生活よりも浪人生活の方が長くなってしまうことになるかもしれない。


 しかし、そんな気持ちだけで受験を乗り越えられないの事実。

 やっぱり、成績を上げるしかないのか。

 しかしそれが出来ていれば最初から浪人などしてはいないのだが……


 今朝帰って来た、変わり映えのしないテスト結果のことを思い出す。

あの時は喜んではいたが、思えば自分は二浪だ。

 現役生の中には俺よりも二年少なくしか勉強していないというのに、俺よりも成績の高い奴が巨万ごまんといる。

 果てして、そんな現状を素直に喜んでもいいものなのか……

華やかな周囲の喧騒を他所にどんよりと勝手に落ち込み始める俺は最後の串を口に放って、そろそろ帰ろうかと腰を上げる。


 一応は当初の目的は達成したのだ。それも過剰なほどの効果だ。

これ以上は俺のメンタルにも関わってくるからと、とっとと家路に着こうと思ったその時に不意に目の前を歩いていた男女の集団にぶつかってしまった。


 「あ~、すんませ~ん」

 全く謝意の籠っていない謝罪を口にする。

正直、傷心中の今は他人に気を配れるほどの余裕はない。

それに相手は大学生っぽい一団だ。俺が気を使う必要は微塵もない。

もし絡まれたらとっと人混みの中に紛れて退散しようと歩幅を広げたそんな時、集団の中から二人分の聞き慣れた声が響いた。


 「先輩!」 

 「えっ!?ぱいせ~ん?」

 嫌な予感が一瞬で嫌な現実になった。


 「やっぱり、ぱいせんじゃないですか!おっす、おっす」 

 それは挨拶のつもりか。だったら、俺は無視するぞ。


 「来てたんっすね」

 「ん~~まあな」

 目的は花火でないが。


 半分閉じた目で小声でそう言いながら足早にその場を離れようとする。

浪人の身でこんなところだけでも周りの目が怖いというのに、一人でいるなどと知られればもはや立つ瀬がない。

 しかし、そんな時に空気を読まないのが元後輩の片割れ《くどう》だ。


 「ところで、パイセン今一人すっか?だったら俺達と一緒にあっちの方行きませんか~?」

 いい席があるんですよ~とのたまうアホに無言のボディブローをプレゼントする。

 「ちょ、パイセン~痛いっすよ。なんすか、何をそんなにお怒りなんすっか~。」

 自分の心に聞くといい。


 そんなやり取りの裏で文太の方が勝手に話を進めていた。

 「先輩、一人くらいなら余裕あるみたいです。行きましょうよ」

 え~~

 「迷惑でしたか?」


 迷惑ではないが、普通に嫌だ。

この空気に埋もれるのも、大学生と同じ空気を吸うのもご遠慮願いたい。

 とは口にできず、結局場の空気に乗せられて付いていく羽目になった。

空気って怖いね。

 

 

 空に打ち上がる満開の花火を眺めながら、池のほとりのそこそこ見渡しの良い席で俺は仏頂面で胡坐をかいていた。

 「ぱいせ~ん、聞いてくだせ~よ」

 「なんだ、帰るぞ」

 「まだ、はえっすよ~。祭りはこれからすっぜえ~、それより聞いて下さいてっば~」


 多めの人数を見込んでいたのか、割と余裕のあるシートの端で一人焼き鳥を食んでいた俺の隣のくどくてうざい後輩、通称

工藤はこれまた鬱陶しく絡んできた。ちなみに文太は前の方で大学生になにやら真面目な顔でやり取りをしていた。


 「そんなことより、お前寮生なんだろ?こんなとこにいていいのかよ?」

 老婆心ながらに心配してしまった。

 何を隠そうこの工藤、例の失恋の後何を血迷ったのか予備校の寮に入寮し始めたのだ。


 なんでも、元々満寮だった一室に空きが出来たとかですんなり入寮出来たという。

 ちなみに大手ともなるとこうした寮があることが多い。

 なんだったら全寮制の予備校だってある。(もちろん男女別だが)


 そして予備校の寮の一番の特徴といえば、それはもちろん規則の厳しさ。

まず、門限が厳しい。これは予備校によってまちまちだが21時だったり20時だったり、早い所では18時。

そして遅刻をすれば即退寮。


 そのため、カリキュラムの都合で少しでも授業の終わりが遅くなれば門限を守れなくなるため夕暮れのアーケードを全力で走り抜けるジャージ姿の浪人生たちを見る事が出来る。

 そうやって必死で帰って来た寮で再び、自習を開始する。

 寮の中にはもちろん、テレビやパソコンの類は存在しない。

携帯も没収、もしくは入寮時に解約証明書を持ってこなくては入れない場合もある。


 与えられる部屋は一人部屋だが、他の部屋の入室は禁止されており廊下に監視カメラが、部屋の窓には重厚な鉄格子が嵌めれてるため出入りはドア以外では不可能、まさに勉強をするめの施設。


 そのためか、毎年のように脱走者が後を絶たない。


 『陸の孤島』、『煉獄』、『地獄の底』、『虚無』

 と様々な呼び名のつく寮の遼生の一人になった工藤がなーぜ、こんなところにいるのか。


 「面談があったんすよ~。」

 その理由がこれだという。

 意味が分からぬ。


 「なんだ、悪い成績でもとったか?」

 「そんなもんじゃないっすよ~」

 ウザったい仕草で、長めの髪をぐりぐりしながら語りだす。 

 「いえね、俺の隣人にカトーさんっていう神がいまして」

 「突然何の話だ」

 「カトーさんの話っす」

 「聞いてねえよ。誰だそいつ」

 「いや聞いてくだせ~よ、そこは」


 工藤がしつこく絡んでくるため、もう黙って聞くことにする。

 「そんでそのカトーの兄貴っていうのが、すげー人でよくお世話になっていたんですよ」


 さっきからどうも話が見えてこない。

もしかして、こいつただよく分からんカトーとやらの自慢がしたいだけじゃないのか。

 まあ、普通の浪人よりも寮生はヘビーな生活を送っているからな。


 つい語りたくなるのも分からんでもない。

あそこまで、規則でギチギチに縛られていては人との交流こそが唯一の娯楽なのかもしれん。


 「一週間前の夜なんてカトーさん、俺にDVDプレイヤーと秘蔵のDVDを格安で貸してくれましてね。それはもう……」

 しかし、工藤に関してはその限りでもないらしい。

若干、赤面しているのが見るに堪えない。


 「それで?お前がその夜にいかがわしいDVDを借りたのと、今日の面談がどう関係するんだ?」

 ついにアホらしくなって、こっちから結論を求めた。

 すると工藤は急激の顔を曇らせ、顔を伏せる。


 「それは、昨日の昼間の話だったみたいなんですけどよりによって、こんな日に限って、不幸にも部屋の抜き打ち検査があったんすよ!」

 ほう、なんとなく分かってきた。


 「それで、屋根裏の俺の秘密スペースに隠していた物たちもその時にまんまと見つかってしまって……」

 どうやら、色々バレて白日の下に晒されてのだろう。

 工藤の顔は曇り気を増すばかり。


 「そんで、昨日帰ってみたら早速寮長に呼び出しを喰らってしまって二時間説教っすよ。もう腹立っちゃって」

 いや、普通に自業自得だろ。

そのくらいで、寮を抜けだしでもしていたら後が持たないぞ。


 やや気の持ち方の甘いこの後輩アホに説教をしてやろうと俺が串を全て口に含むと、再び工藤が口を開く。


 「いえ、別に怒られるのはいいんですよ。ただやっぱりカトーさんに申し訳なくてっすね。なんせ、DVDプレイヤーもあの秘蔵の品もみんな没収されちまって、でも俺の物じゃないとは言えないじゃないですか」

 「まあ、そうだな」


 要はそのカトーとやら庇っているわけだな。

 醜い友情だと思うが。


 「そして、今日夏期帰省前の三者面談があったんすよ~」

 「ん?帰省ってことは、お前今実家暮らしなのか?」

 「そうっすよ~、あれ言ってませんでしたっけ?」

 「初耳だ」

 良かった~、そのことで説教とかしなくて。

 聞いていなかったとは言え、完全に的外れな指摘をする所だった。素知らぬ顔をしながら内心で胸をなで下ろして肩を下ろす。


 「それで、どうしたんだ?さっきから話が進んでないぞ」

 「ああ、そうですよ。聞いてくださいよ!それで今日の三者面談で寮長と親で実家返りでの諸注意を適当に聞いていたら、寮長が急に忘れ物があったとか言い出して、例の品とDVDプレイヤーを差し出してきたんですよ~」

 「それって……」

 「俺、今母親から競泳水着かブルマを着た幼児体型にしか発情しないと息子(意味深)だと思われてんっすよ~マジ勘弁」


 おうふ……

 俺だったら余裕で死ねるな、親に性癖がばれるのは。


 「俺は年上の家庭教師かナースが良いって言うのに」

 「いや、そこじゃないだろ」

 こいつも余裕だなぁ。

 ある意味大物になるかもしれんが……

 ただまあ、正直感心もする。がっくりと肩を落としながら、大仰に落ち込む工藤を見ながらそれとなく励ましてみる。


 「まあ、いいんじゃねえのか、お前のそういう経験って最近じゃ結構味わえないもんだぜ」

 「どういうことっすか?」

 「考えても見ろよ、今この世の中で、実用的にエロ本やら持っていたり、レンタルショップでDVDを借りる奴なんてどのくらいいるよ?」


 ネットが中高生に浸透する中で、今晩のおかずなどデータとして簡単に入手できるようになった今。

 わざわざ形として残ってしまうアナログな本やらDVDを自分から借りる若者も少ないだろう。リスクだけが残るわけだし。

 「そういう意味ではお前は、この今の情報化社会に一石を投じたことになるんじゃねえの?若者の活字(写真も含む)離れの深刻化とか、少子化問題とかによ」


 なんだか途中から面倒臭くなり、もう後半とか完全に適当だが、それでも工藤は目を輝かせる。

 「そういえば、そうっすね!俺って今回の事で結構な人生経験を積んだっすね~」

等と言いながら、急激にテンションを上げる。

ちょろいわ~。


 そんな感じで別に屋外でする必要も、ましてや花火大会の場でする必要もない話をしていると前方から文太が這い寄ってきた。


 「なんだか、楽しそうっすね」

 「いや、ぼちぼちしんどいぞ」

 文太に渡されたお茶を口に含み、疲れを滲みだす。

 「人も多いし、なんか火薬臭いし、爆音はうるさいし……」

 「花火大会の会場なんで」


 真面目に返す文太にもうどうでもよくなりながら、お茶をさらに喉に流そうと面を上げると……


 「やべっ」


 咄嗟に頭を下げて、文太と工藤の陰に隠れる。

 「どうしたんすっか?」

 「なにごとっす~」

 「いや、別に」

 別にどころではない。


 目の前の沿道を、見知った顔が通った。というより、詩織おさななじみだった。

 浴衣姿で団扇うちわ片手に女友達とキャッキャッとはしゃいでる姿は何とも平和だ。しかし俺は穏やかではない。


 今思えば、一昨日くらいラインで花火がどうとか言っていたような、なかったような……

 あまりにきつすぎて普通にスルーしてしまったが、どうやらこの日のための布石だったようだ。いや、流石に堅実な浪人たる俺は行けないな。とも思っていた時期が僕にもありました。


 さりとてあの時、詩織の誘いを断っておいて、今ここに居るのがバレれば、俺の居心地がすこぶる悪くなる。詩織は気にしないだろうが、俺が気にする。


 「大丈夫っすか?」

 「先輩、ゲリピー?ゲリピーなら早く便所行きましょ」

 何も知らず心配してくれる後輩二人には申し訳ないが、ここは大人しく撤退することにしよう。なんか幼馴染も自分も裏切ってしまった今は軽くナーバスだ。今日はもう帰りたい。


 「という訳で俺は帰るわ」

 「えっ、もうっすか?」

 「突然ですね」

 「まっ、本来はここに来る予定ではなかったんからな」


 素通りするくらいのつもりだったのだ。これくらいで十分だ。いや、十分すぎるほどヘイトは溜まっている。これ以上はいけない。頭がもたない。

 俺はその場で、を低くしたまま足早にシートから立ち去る。

 焼き鳥は何本か食べていたが、それでも腹が満たされたわけではない。むしろ中途半端に食べたせいで余計に空腹が募る。

 「じゃっ!」 

 「お疲れ様です」

 「ちーっす」

 

 その後、妙に見かける詩織の視線を掻い潜りながら、帰路に着く。人混みの絶えない歩道は帰り路を急ぐ花火客でいっぱいだ。その中をトロトロと緩いスピードで走る。


 何だか、今日は無駄に疲れた。特に花火大会は体力的にも精神的にも持っていかれる。とっと家で母親作の夕飯でお腹を満たしたいい。出店も良いが一人でベンチの端で喰うのは、どうも味気ないものだ。

 思い出したかのような夏の暑さに焼かれながら、汗だくで家にたどり着く。


 そして家の扉を開けると待っていたのは……

 『お父さんと、花火に行ってきます。お金はテーブルの上に置いてあるのでそれで焼きそばでも買ってきてね♡

 十年ぶりの浴衣ではしゃぐ母より』

 

 その日は、結局何も食べずにすぐに寝ることにした。

 

 



 センター試験まであと……179日



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