無類の力で世界を旅する

神海 芽衣

第1話

八月十一日、それは学生達が夏に自由にできる期間の間である。(夏休み)

しかし、そんな学生達もこの日だけは行かなくてはならない。この期間の中、一回だけ学校に集う事を集会と呼ぶのであった。

しかしその前日、こんな生徒もいた。


「明日、学校で集会があるから手短かにしろよ?」

「この数を、お前一人で倒せるのか?無理だよなぁ」


細い身体の学生が、路地裏で複数人に囲まれていた。囲んでいるのも学生であったが、不良と呼ぶにふさわしい者達であった。

一人はナイフを持ち、もう一人は鉄パイプを持ち、そして釘バットを持った者もいた。しかし囲まれている学生は、怯えもせずにただ立っているだけだった。

そして、その学生は一言だけ言った。


「ここの治安、どうなってんだろうなぁ?」


次の瞬間、不良達が押し寄せた。しかし、そこに立っていた学生はバク転を何回か行い、高く跳び上がった。

そして落ちている時に、不良の顔を踏み台にしその近くに居た不良の顔を鷲掴みし、近くにあったゴミ箱に顔から入れた。


「どうした?気合い入れてんのはいい格好だけか?」


少し獰猛な笑みを浮かべて挑発を不良達に向けて行う学生。その挑発に乗るかの様に不良達が学生に攻撃を仕掛ける。しかし、学生は、不良の一人に向かって足を引っ掛け転ばせる。

その時に、相手の持っていた武器を奪う。

その武器は、鉄パイプだった。そして奪った鉄パイプで一人、また一人と転ばせて武器と意識を落とさせていた。

そして、最後の一人が意識を落とされた時、不良が最後に見たのは、その学生は少しだけ物足りない様な顔をしてその場から立ち去ろうとしている姿だった。


「あ、もしもし警察ですか?今、路地裏で不良達に襲われたんですけど、来てもらって良いですか?えっ、此処で待機ですか?嫌です、帰えらせてもらいます。では、さようなら〜。因みに、場所は〇〇商店街の路地裏ですから」


警察に電話をしながら。

_________

山の所に一つの教会があった。その教会は、少し前まで肝試しに来る連中が、たくさん来る所だった。しかし、住人が住んでいる事がわかり、肝試しスポットから外された、その教会には、一人の青年が住んでいた。


「へぇ〜、昨日〇〇商店街で不良狩りが出たのか〜。怖いな〜ってこれを、やったのは俺か」


その青年は、学生服を着ていて、目は鋭く、顔立ちも整っていた。って言っても中の上ぐらいだと思うけどな。

俺の名前は、上代 洸夜 かみしろ こうやただのお節介な学生だ。まぁ、お節介過ぎて相手から、喧嘩の催促を受ける事がしばしばあるけどな。そして俺は親無し、親戚無し、の孤児院育ちだ。本当の名前も有るが、名前なんてコロコロ変わるから忘れちまったけどな。

前に居た町で、少しだけ問題を起こした為この町に帰って来た。

この町は、俺が最初に居た町なんだが、ここの教会を管理する爺さんが、管理できなくなったから預かっていた子供を他の孤児院に移したんだ。そして、中学三年で卒業した時、その爺さんが逝っちまって、遺書に俺が管理しろって書かれてたから、ここに住んでいる。

少しボロかったから、最初の時は大変だった。家具やら揃えないといけないからな。ん?金はどうしたって?あのな、株って案外簡単なんだぜ?

そんな事を考えていると。


『〜〜〜〜〜♪』


着信が来た。


「もしもし〜どちら様でしょうか?」

『僕だよ、僕』

「・・・僕僕詐欺は、ご遠慮下さい」

『え、ちょ』


すぐに電話を切った。

しかし、また電話がかかってきた。

「もしもしどちら様でしょうか?」

『僕だよ僕、真斗だよ』


電話をかけてきたのは、中三の時の孤児院のメンバーの一人。名前は、下宮 真斗しもみや まと結構、顔立ちがよく、性格も良し、顔面偏差値は多分、上の中ぐらいだと思う。

そんな奴が俺に電話を寄越すって事は何があったのか・・・ヤベェ、心当たりしかねぇ。


「で、なんの様だ?まさか彼女が出来たとかか?」

『そうなら、良かったんだけどね。というか洸兄は?』

「出来る訳、無いだろ?俺みたいな平凡な顔面偏差値の奴が、モテると思ってんのか?」

『いや、洸兄の顔が平凡だったら、僕なんてもっとモテ無いからね!?』

「ん?そうか?」

『そうだよ。だって十人中九人が振り返るくらいの顔立ちだからね』


そうだったんだなー。そういや、中学時代なんか告白されまくってたな。なんかの罰ゲームかなんかと思って断ったが。


「で、用はなんだ?」

『・・・新聞見てないの?』

「新聞?読んでる途中で、お前から掛かってきたんだよ」

『取り敢えず読み進めてみてよ』

「了解」


有名な会社で、横領事件だとか、暴力団が活発になったとか、俺の事が書かれた不良狩りとか、孤児院が火事で燃えたとか、銀行強盗が捕まったとか・・・ん?孤児院が燃えた?


「あの孤児院、燃えたのか?」

『・・・うん』

「因みに原因は?」

『・・・カップ麺』


洸夜は、思わず顔を手で覆った。


「どうせクソ野郎ファザーが、コンロ掛けたの忘れてて焼けたんだろ?」

『・・・そうだよ。何でティ〇〇ール買わなかったんだよ馬鹿父ファザー!!』


チッ、まだ懲りてなかったのかよ!今度会ったら、病院送りにしてやる!!

実は、この間クソ野郎ファザーがキャバクラに行って、火を掛けたまま行って、火事になりかけた事があった。


「で、何の様なんだ?俺はこれから学校なんだよ」

『ん?今日、洸兄学校なんだ。なら早く話さないとね。洸兄の家に泊めて欲しいな〜って』

「良いぞってか、どうせ俺が良いって言うまで粘るつもりだっただろ」

『だって泊まる所が、無いから仕方ないじゃん』

「取り敢えず、赤いガラスが、付いた十字架の下に、家の鍵が入ってるから掘り出して中に入っとけ」

『わかった。取り敢えず学校頑張ってね』


そして電話が切れる。

洸夜は大渕眼鏡を掛け学校に出て行った。

しかしあんな事になるなんて思いもしなかった。


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