7 コンピューターウイルス

★★★

「ゴーデン様……」

「どうしたモルト?」

ある路地裏。高校の制服を着たゴーデンは壁にもたれかかって目を閉じていた。その近くに黒いスーツを来て立っているのはモルトだった。

「高校ではどんな名前を……と思いまして……」

「なんだい?そんなことの為に僕をここに呼んだのかな?」

ゴーデンはナイフを数本取り出してモルトに見せつける。

「あの!い、いえ!ちゃんと新しい情報は手に入れてまいりました!」

「そうかい?……学校では『一柳夏月いちやなぎかずき』……と名乗ってるよ」

「そ、そうですか……」

「それで?その新しい情報とやらを教えてもらうとするか」

ゴーデンはニヤリと不気味な笑顔を見せる。モルトも同じく不気味な笑顔を見せながら言う。

にはまだ他の勢力の者が潜み込んでいる、とのことが」

「ほう?」

他の勢力。すなわち、ゴーデンの敵ともあれば味方でもある。さぁどっちだろう。味方が忍び込んだか、敵勢力が忍び込んだか。

「それで、命を狙っているのはバグ・レオンだけではない、とも」

「へぇ」

つまり、敵勢力だということだ。まぁ命を狙っているのはこの俺だと思うんだけど。たとえ命を狙われようが、俺を殺すことはできない。できるはずがない。奴らは俺のことに気づかない。この学校の生徒になりすましているという情報は掴んでいるらしいが、その生徒のうちの誰かまでは掴んでいない。いや、これからもその情報は掴めるはずがない。どんな情報力を持とうとも、尻尾を掴むことすらできない猟人となるだろう。

「それで?その勢力とは?」

「それが……〈浄土空宗じょうどくうしゅう〉と異世界連邦の1部……」

「ほう?〈浄土空宗〉がか?」

「は、はい……」

〈浄土空宗〉。それは数々の異世界の人々で構成された異世界連邦に敵対する宗教団体。トップは誰かは不明。目的も不明。その実態もほぼ不明に近い。そんな団体が俺の命を狙っている、と。まぁ面白い。が、それよりも

「異世界連邦の1部……か……」

「はい……裏切り者、といった感じでございましょうか」

「裏切り……か……まぁ裏切り者っていうのも面白い。勝手に泳がせておけばいいよ」

先ほど言った通り、どんな情報力があろうと俺の正体を暴ける者などいるはずがない。

「それより、レッカの方はどうなっているのかな?」

「うまく同盟を結べたそうです」

「まぁ同盟なんて形だけだからどうでもいいんだけどね。それで?」

「近いうちに〈異賊暴〉第1使徒〈神炎〉でバグ・レオンに総攻撃するとの報告が」

「おぉやっとバグ・レオンが殺されるのか?」

「うまくいけば……」

「……いや、体はニルバナ王国の女王だ。殺したら異世界連邦を相手どることになってしまうよ?」

「た、確かに……」

「それは神が望むことではない……」

「どういたしましょう?」

「……まぁ考えておくよ」

そう言いながらゴーデンは路地裏を出ていった。残されたモルトは「うまくいけばいいのですが……」とつぶやきながら闇の中に消えていった。


★★★

少女にオナラをぶっかけて数分後。俺らは少女の家に来ていた。マンションの一部屋で一人暮らしをしているという。親は3年前にどこかへ消えてしまったらしい。どうやって1人で暮らしているのかは教えてくれなかったが、なぜかとても悲しい顔をしていた。

テーブルに座って一休みした後、

「そういえば君の名前聞いてなかったね」

「わたしのなまえは★★★ーですっ!」

「何この子言ってんの!?」

「イったことはないですけど、みたことならありますっ!」

「違うわ!喋るの言うだわ!てか今なんつった!?」

「みたことならありますっ!」

「何見せてんだ親は!?」

「ママとパパではありませんっ!隣のおじさんですっ!」

「何汚いもんみてんだ!?」

もうこの子も抹殺していいですかね?

「きたなくないですっ!とてもせいそなものですっ!」

「どこが!?」

「貴様のムスコのことを言っているのだが?」

「もうややこしくなるからてめぇーは入ってくんな!」

「蓮雄殿の先端から白い愛液がでてくる、子孫を残しこの腐った世界をぶっ壊す最終兵器のことを言っているのですが?」

「俺の子供をなんだと思ってんだ!」

【キ★★イ(笑)】

「うるせぇ!」

見事にハモる。てかなんでこのクソガキまでハモってんだよ!てかこのクソガキ頭いいというかすげぇ言葉覚えてんな!?高校生並みだぞ!?

というより!

「本当の名前は?」

「ねむらあずきですっ!根っこの根に、村長の村に、亜米利加合衆国アメリカがっしゅうこくの亜に、服が透けてオッパイがみえるの透で、根村亜透ねむらあずきですっ!」

「……」

黙り込んでしまう。……いや、なんか普通の名前だとは思わなかったから……。あとその漢字の例え。最後のおかしくありませんか?亜なんてめんどくさくありませんか?

「★★★」

「急にどうした!?」

【★★★★ゥゥゥゥゥ!】

「てめぇーら3人そのネタはもういいからとっとと精神科行ってこい!もしくは刑務所に!」

もう黙ってくれませんかね!?下ネタ言えばいいって話じゃねーんだよ!てかなんで3人でハモってんだよ!奇跡か!

「選べ!1、オ★ホ★ルに閉じ込められる。2、根村亜透に絞め殺される。3、透明人間になる(但し★★★だけは透明にならない)」

「どれも地獄じゃねぇか!最後とかまじおかしいぞ!?」

「うるせぇ!貴様に拒否権はない!」

「うるせぇのはてめぇーだゴルァ!」

「なんだと貴様!この肛門が目に入らぬか!」

そう言って肛門の絵が描かれた札をドシッ!と見せてくる。何この肛門汚ーい。

「肛門じゃなくて水★黄門な!これが目に入らぬかぁぁ!って言われてそれ見せられたら笑いが止まらんわ!目に入らんわ!入れたくもないわ!」

「なんでだ!?」

「★★★だっ!」

「てめぇーは黙ってろこのクソガキ!これは大人の世界だ!」

「プププっ!何言ってんの貴様ー!大人の世界?何それ(笑)これが大人の世界だと思ってんの?(笑)違うに決まってんじゃん(笑)そんなんもわからんの?(笑)中二にもほどがあるわ(笑)」

「いちいち(笑)つけるのやめてくれませんかね!?ムカつくんですけど!?」

何この会話。する必要あるの?という疑問はしないでください。悪いのはこの頭が腐った奴らのせいです。決して俺のせいではありません。って、俺誰に言ってんの?(笑)

「蓮雄殿落ち着いてください。ほら、みなさんも」

と、なぜか真面目なゼロが言ってくる。おいてめぇーなんだよ。あん?いきなり真面目キャラになって読者のみなさんに気に入られたいのか?あん?だったらこの場で裸で逆立ちすれば一気に人気になるよ☆彡ってほんと俺何言ってんだろ。読者って何?

いつの間にか立ち上がっていた俺らもゼロの声によって座る。ちなみに、亜透は床に足がつかないため、立ち上がることすらできない。プププっ!ザマァないぜ……自分で言って大人げないと思いましたすみません。

ていうか……ゼロ何やってんの?いつの間にヘルの椅子になってるの?……見ると、ゼロがハイハイポーズをして、その上にヘルが足を組んで乗っている(座っている)。え?何のSMプレイですか?

「……おい貴様……なんで私の椅子になってんだ?」

「……おい蓮雄。なんで私に座ってくれないのだ!」

「うるせぇ!今日これ言ったの何回目だゴルァ!」

「いいから俺に座れよ!?」

「なんで逆ギレしてんだあんた!?」

目輝かしてるんですけどこの光潰していいですかね?

「いいからゼロ!さっさと私の……豚になりなさい」

「ブヒー!」

「だかれなんのSMプレイだよ!?」

「女王と豚のSMプレイだけど?」

「真面目に答えんでいいわ!」

なんだ?いつの間にヘルがドSでゼロがドMになってんの?何そういう設定だったの?

「……ったくもう……ほんとロクなもんじゃねぇな……」

【それ、貴様(蓮雄殿)(おにいちゃん)が言えることか?】

「だからなんでハモってんだよてめぇら!」

誰か助けてください。

「あー!もう!話が進まねぇじゃねぇか!」

「誰のせいだと思ってるんだ!?」

「なんで逆ギレ!?」

「お前がキレてる理由がわかんねぇよ!てかここに来るまでがなげーよ!」

「おにいちゃんはやくはなしすすめよ」

「うんお前まともなこと言うな!?」

ったく誰のせいでこんなんになってると思ってんだよ……もうふざけるのはやめてくれ。てかまだ名前しか聞いてないからね!?

ちょー叫びたい……発狂したい……キ★★イになりたい……って元々キ★★イか(笑)

亜透の言葉で落ち着きを取り戻す。しばらくして口を開いた。

「★★★」

……マジ空気読めよ……今良い感じだったじゃん?なんで静かになったところでそれ叫ぶの?カマチョですか?

ちなみにこれを言ったのは亜透である。将来どうなるんだろう。

「……っで、まず、なんでお前は俺のことをお兄ちゃんって呼んでるんだ?」

「おにいちゃんだからですっ!」

「いやいやいや俺お前の兄ちゃんじゃないから。妹2人もいないから」

「蓮雄殿私が説明しましょう……ようはこういう設定なのです。こういう攻略ゲームには設定というものがないと成り立たないのです。ほら、ライトノベルだってそうでしょう?設定がないライトノベルなんて見たことありますか?てかそれライトノベルとかいうの?設定ないって意味わかんなーい」

「あんたなんで最後らへんオネェになってんだ!?……ふーん、っで?この根村亜透は俺の妹、という設定というわけか」

「ちょっとたりないよおにいちゃん。たしかにいもうとというせっていだけど、わたしはこのホリスモおうこくのコンピューターの1部で、しゅじんこうのおてつだいをするためのおたすけコンピューターなのですっ!」

うん意味がわからない。ゼロと亜透の説明によると、

ホリスモ王国は元々ホモ王国として成り立っていたのだが、ある日突然ホリスモ王国はコンピューターウイルスに乗っ取られてしまい、そのコンピューターの下で動かされるようになった。とは言ったものの、国民は自由に動ける。変わったのは、常に監視されているのと攻略系異世界になったということぐらいだ。

コンピューターウイルス。最近異世界連邦の間で流行っているウイルス。ウイルスに感染した異世界は、出入りが不可能となり一切外との関わりが閉ざされる。攻略系異世界になり、たちまち廃界化はいかいかしてしまう。発生源不明、感染方法不明、治療方法不明というほぼ正体不明のウイルスと言える。このウイルスに感染したらもうアウト。

コンピューターウイルスは何を考えているのかわからず(というかウイルスの考えとかわかんの?(笑))やりたい放題だ。このホリスモ王国には、設定としてこの根村亜透をその主人公の妹として、異世界攻略を手助けするということらしい。この根村亜透はコンピューターウイルスから生み出されたもので、すべての動作やこれから起きることやどうすればいいかなどはすべて知っている。つまり、コンピューターウイルスが根村亜透という個体に変化した、といっても過言ではない。チート、と呼ぼうか。てか俺の周り……チート多くね?なんで?なんで主人公チートじゃないのに、その周りはチートばっかなの?それじゃあ主人公いらなくね?

まぁ理解できたっちゃーできたけど、でも信用できない。

「蓮雄殿、私に座ってください」

「もうそのネタいいわ!つまらん!クソつまんねーよ!」

「なんだとゴルァ!」

「それはこっちのセリフじゃボケェ!」

というふうに少し静かになると誰かが頭のおかしいことを言い出す。これがキ★★イという。覚えとけ。

「まだしつもんはありますかっ?」

「あぁ私がある。私を女に戻してくれ。このコンピューターならできるだろ」

「ちょっときいてみますねー」

すると目をつぶり出す。

質問というかただたんなる願いだけどな……まぁ俺も男に戻ってるわけだし、そんぐらいはいいだろう。

「はいっそんなことぐらいならいいそうですっ!」

「そんなことってどういうことだゴルァ!」

「しゅうちゅうっ!」

「意味わかんねーし!」

ヘルが元に戻る、か。想像しただけでも吐き気が(ウォエ

「……さっさと戻せ……」

「りょうかいですっ!」

そう言って亜透がヘルを見つめる。ヘルはその時、亜透の目の色が変わったような気がした。

亜透がヘルを見つめて数秒後、突如ヘルが光出して、それがだんだんと大きくなりこの家が光で包まれた。ゼロと蓮雄は眩しくて目をつぶってしまった。

目をつぶって数秒後、光が消えてくのを感じて目を開ける。すると、そこにはニューヘル・ゴルンがいた。女姿のヘルが。

「どうでしょう?」

そう亜透が聞くと、ヘルは体中を見回し

「お、おう!やったな!」

「女王様ァァァァァ!」

「あんたは絶対違うこと言ってるよな!?……よかったなヘル」

「ふ、ふん!」

「やっぱこう見ると、女王って名前が伊達じゃなく可愛いんだよな〜。ついさっきまで俺もその姿だったもんな〜」

「……!」

するとヘルの顔が少し赤くなり、背を向けてしまった。何か俺変なこと言った?え?

「き、貴様は相変わらず★★★みたいな顔してるな」

「それどんな顔!?それどっかのアニメ映画のやつ!?」

てか背中向けたまま言わないでくれますかね!?人と話す時は相手の顔見てですよ!?わかってます!?これ小学生の国語授業ですよ!?

「それよりなんで顔見せないんだ?」

「う……」

黙り込むヘル、

「……………………………………………………………」

長く溜めてから放つ、

「私の顔が今★★★みたいな顔をしているからよ」

「なんで溜めたし!もっと真面目なことかと思ったらただふざけたいだけじゃねぇーか!」

「ダメなの!?」

「ダメじゃないけど下ネタは言うな!……それよりこっち向け――」

蓮雄がヘルの肩を持ち、こちらに向けようとした途端、蓮雄の意識は遠ざかっていった。そんな中ヘルの顔が真っ赤っかに染まっていたのが見えたのは多分気のせいだろう。


★★★

ある真っ暗な部屋。都茂龍架はキリストのように貼り付けにされていた。身動きも取れず、声を発することすらできない。なぜ拘束されているのかわからない。何か悪いことでもしたのだろうか……やっぱり私はいらない存在なのだろうか……。

龍架はだんだんと『光』を失っていく。

この暗闇には『光』などない。また、『光』を失ってしまった。せっかく蓮雄が取り戻してくれたのに。もう嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ!

いつの間にか涙がポロポロと流れていた。

もう失いたくない!蓮雄が教えてくれた『光』を、蓮雄が取り戻してくれた『光』を、蓮雄がくれた『光』を。もう……絶対に失わない!だから、


――助けて、蓮雄!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る