第3話 王都までの道のり

一先ず、方向とやることは決まった。


王都へ(無断で)進入し、身分証を作る。

そして面白そうなイベントをチェックし、適宜参加する事だ。



取り急ぎ、必要なものはない。

今あるのは、魔法袋位か。

魔法袋は、持ち主の魔力の大きさによって収納量がかわる。

地球時代の安心安全の食べ物がたくさん詰まっている。ざっと10年分はあるだろう。



そして、まだまだ余力容量はたっぷりとある。

この世界の貨幣は持っていないのが心許ないが。


情報収集という事で、先ずは、王都の正確な距離が知りたいので、地図のある場所を目指し、自分の眼に、言語変換魔法を使う。

モデルは某青だぬきの ホンヤク○ンニャク である。



魔法を掛け終わると、露店をの文字が見知った文字になる。


そのまま少し先を進むと、広場があり、広場の隅には案内板と近隣を含む地図が立て掛けてあった。


王都クランシュタットまでは、大体10km程度だ。

転移自体も、ある程度熟練すれば、地図で把握できる場所なら、座標の指定で、ある程度正確に飛ぶ事ができる。


「この辺りの地理が把握できたところで、行きますかな」


そうポツリとつぶやいた時には、既にその場所には誰もいなかった。





*********




結論を言いますと、無事に入れました。

ええ、入れましたとも、びっくりするくらい簡単に。


流れは、転移で王都の南門の前に飛び、そのあと、入門手続きをしてる人にくっ付いて、門番だけ不可視の術をかけて、周りの人間には、前の人の子供だと思わせるような仕草をすれば、なんの疑いもなく入れた。


身分証いらなかった。

ついでに、街に入るのにお金が必要だったが、通行料の支払窓口では、前の人が払っていた。


払ってくれた人も、言われた金額を疑問も持たずに払うなよ・・・

まぁ、結果的に楽できたんだけどね。



無事に街に入る事ができた。

これからやる事は、手持ちの品を換金する事と、宿の確保、あと換金である。


現在の時刻は、まだ昼を少し過ぎたあたりだ。


さて、換金する前に、この街では何が必要なのか、売れるものを確認するために、街を適当に歩こう。


************


どうしてこうなった


13時30分現在

絡まれています。

「いや、僕何も持ってないんですけど」


この世界にもDQNいるんだ。

異世界版DQN

って言っても、ここの街の人は、髪の色は薄茶~金髪、少人数であるが、藍色、赤、グリーン、カーキ色、紫、青など、カラフルな人もいる。


さすが異世界。


そして今絡んでいるこの若者、髪はくすんだ金髪、瞳は臙脂色、カラコンかな?って思ってしまう。


「何も持っていないなら、身ぐるみだけでも置いてけよ。最悪雑巾くらいにはなるかもなァ」

ギャハハハ

笑うこいつら、沈めていいかな。


ちなみにここは、表通りとは少し離れた、裏路地でスラム街にも面している。

ちょっと冒険心でここまで来てしまったのは内緒の話だ。


じゃあ少し痛い目見てもらおうかなっと、


あくまで殺さない。ちょっと痛い目見てもらうだけだ。


僕はこの不良を水攻めにするべく、手をかざそうとした



「貴様ら、何をしている!」


っぶねー、魔法が暴発する所だった。結果的に魔法も見られずに済んだ。


声の主を見ると、赤銅色の髪を持った屈強な騎士がいた。

体つきは、申し分ないくらい鍛えられているとわかる。比較的軽装なのか、鎧姿ではなく、胸当てや膝あてなどの、急所部分を保護する防具を身につけている。


見た目も、騎士職だからなのか、甘いマスクではないものの、野性味あふれた精悍な男前の見た目だ。顔の造形自体も、ヨーロッパ系に似ているせいか、彫りが深く、目鼻立も整っている。


まったく! うらやまけしからん!

ホント羨ましいぞコンチクショウ!


そんなことを考えていたら

おい、お前ら待て!

と、声が聞こえたような気がしたが

「坊主、大丈夫か?」


「へっ?」


すっかりこの騎士に見惚れてて忘れていたが、この騎士は、僕が絡まれていたのを助けてくれたのだろう。

先程のDQNはいない。


とりあえず、礼を言っておこう。そしてお金の稼ぎ方を教えてもらおう。


「助けていただいてありがとうございました」


一瞬目を丸くしたこの男前は、ニカッと笑い、


「なに、気にすんな。これも騎士職の務めだ。

だが坊主、このあたりは安全とは言い難い、用がなければ一人で行く所ではない」


成る程、確かにと思った。明らかにスラムを彷彿とさせる場所に子供(見た目だけ)が一人でいれば事件に巻き込まれるだろう。


この後、謝罪とお礼を述べ、再び表通りに案内してもらえる事となった。


表通りは、思ったよりあっさりと到着した。


「ここなら変な奴らには目をつけられんだろう」


そう言って爽やかに笑うこの騎士はイケメンだ。

ちなみに名前はアドフィルゲインというらしい。愛称はアドフだ。


僕もこの呼び方にさせてもらった。


異世界はじめての知人?知り合い?はアドフさんなのは都合がいい。この人の性格ならば、後々助けてもらえるだろう。


国勤めの騎士さんだから、お国事情も詳しいかもしれない。


よし、彼に追跡魔法を掛けよう。そして度々お世話になろう。


自分本位過ぎるよなーと、考えながら、彼に魔法を施した。


別れ際に日本円にして、一万円相当の貨幣をもらった。


内訳は、

銀貨9枚

大銅貨9枚

銅貨9枚

鉄貨10枚


貨幣を分散して貰えたから、この国の貨幣価値はなんとなくわかった。後は物価を調べれば問題ない。



ありがとうの意味を込めて、アドフにハグをした。見た目ただ抱き着いただけという状態になったが。


アドフも子供に向ける様な優しい笑みで、返してくれた。


自分自身はもう数百年生きてるから、全く子供じゃないんだけど、基本的に人を頼るには、大人の姿よりも子供の姿の方が都合が良いのだ。



寄り道せずに帰るのだぞ。と言いアドフは去っていった。


アドフはイケメンだった。しかも、優男系ではなく、硬派系ハンサムな頼もしい男だ。きっとこれからも助けてくる、そんな気がしていた。

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