第13話 風向きの変わる予感編(4)

「付き合うことは無かったって言ってたけど、告白はしなかったのか?」



ヤナセは、話しの核心にれる質問をした。



「タカオカさんは、学校ではマドンナ的な存在でしたから。男子十人のうち、七人は憧れちゃうような。告白したところで、どうせ無理に決まっている。駄目だった時、今まで通り、友達としてもいられなくなってしまう……。そう思うと怖くなり、気持ちを隠し続けました」



「その後は何も起こらず、今にいたるというわけか」



「結果的にはそうなるんですが、その後、思いもしていなかったサプライズがあったんです」



「サプライズって、ちょっと想像がつかないな」



「タカオカさんとは、今までと変わらず、友達として接していました。そのまま何事もなく、時は流れていきました。そして、僕は地元の専門学校に、タカオカさんは、東京の大学に進学することが決まりました。もう、会えなくなるだろうなぁって思い、想いを伝えようか悩みました」



「卒業式の日、私からサクラギ君に告白しました」



アヤが久々に口を開いた。ここから先は私に言わせてほしいといった素振りである。



「えっ、 ウソだろぉ~。まさかの展開だな。てか、いきなり話しが飛んだな」



ヤナセは言った。



「ホント、あの時は驚きましたよ。夢か現実なのか分からなくなりましたも」



「早く続きが聞きたいところだけど、その前に、タカオカさんは、いつからサクラギのことを好きになったんだ?」



「中学三年の時の、修学旅行がきっかけだと思います。その時をさかいに、サクラギ君のこと、気が付いたら目で追っていたり、他の女の子と話してるのを見ると、イライラし、嫉妬しっとしたりしてました」



アヤがそう言うと、ジュンペイは少し驚いた表情を見せた。



「何だよオマェ~! カミさんといい、タカオカさんといい、なんで美人からそんなにモテるんだよ!」



ヤナセは嫉妬した。ジュンペイは、気マズそうにしている。



「それからずっと、私も振られるのが怖くて、アクションを起こせませんでした。でも、卒業したらもう会えなくなるかもしれない、サクラギ君の笑顔が見られなくなるって思ったら、気持ちはちゃんと伝えようって決めました。卒業式が終わった後、学校の近くにある公園に来てもらい、告白したんです」



「なんだよ! ハッピーエンドじゃないか!」



ヤナセの嫉妬心はおさまらないらしく、少し声を荒らげて言った。



「でも、振られちゃいました」



「……サクラギ、おまえはなんなんだよ!」



ヤナセは、両手の手のひらをテーブルに叩きつけた。



「ヤナセさん、落ち着いて下さい。昔の話なんですから」



アヤはヤナセをなだめる。



「……昔の事だって分かっているけどよ、なんでまた振ったりなんかしたんだよ?」



「なんといいますか、予想もしていなかった事がいきなり起こってしまいましたので、頭の中が真っ白っていうよりは、パニックになってしまいました。それで『オレ、女に興味ないからさ、付き合うとかありえないから』って、心にもないことを言っちゃいました。それっきり会うこともなく、二週間前に、偶然再会したというわけです」



ジュンペイが告白の日の真実を語ると、アヤの表情が少し明るくなった。



「サクラギ君、ちょっとビックリだよ! だって、あの時のサクラギ君、すごくめた目で私のこと見て、ぶっきらぼうな感じに言われたから。異性としては見てくれていなかったのかなぁって思ったよ」



アヤはジュンペイを見てそう言うと、再び、二人交互に目線を向ける。



「それに、もしくはホントにそっちの気があるのかなって。いまその話を聞くまで、ヤナセさんと何かあるのかなぁって、少しうたがっていたんですよ」



アヤが冗談まじりに言うと、ヤナセは、はしでつまもうとしていた唐揚からあげを取り損ねた。



「昔のいい思い出です」



アヤは笑顔で言った。



「ところでサクラギ君、結婚した人って女性だよね?」



ジュンペイは、手に取ろうとしていたオシボリを取り損ねた。












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