第11話 装備

 黒い髪の少女がいました

 金の髪少女より体の小さな少女でした

 黒い髪の少女は寝てばかりのなまけものでした

 見るのもいや 歩くのもいや

 重い荷物なんて持ちたくない

 黒い髪の少女は 金の髪の少女背中に

 自分の荷物を全てのせてしまいました


 ラント族伝承古書『いせかいのおとめ』




※※※




「余計なことで時間を使わせてしまったが、本来の目的を果たそう」


 オリオンとはぐれてしまってかなり時間を消費してしまいましたが、まだ日が暮れるまで時間があります。

 歩き回っていたので少し休みたい気もしましたが、普段からリンちゃんにマラソンで鍛えられているおかげか、疲れはそんなにありません。

 ここから買い物をしたい場所は近いということもあり、早速向かうことにしました。


 今度ははぐれないように、気をつけようと思っていたのですが……オリオンが手首を掴んで引っ張ってくれているので大丈夫ですね。

 でも……有り難いですが、連れて行って貰っているというより『連行されている』といった感じです。

 万引き犯を捕まえたような……。

 どうせなら、手を繋いでくれた方がいいのに。


 連行されて辿り着いたのは、煉瓦のような赤茶に色づいた石畳が続く、綺麗な通りでした。

 並ぶ建物も露天ではなく、二階建ての立派な建物が続きます。

 統一感を出すためなのか、全体的に白や薄い色が多いです。

 商店エリアのようで、様々な木製の看板が目に入ります。

 お洒落な場所でお買い物!

 テンションが上がります!


 オリオンが選んだ店に意気揚々と入りました。

 扉がカランカランと鳴り、まるでレトロなカフェに入ったようで更にワクワクしたのですが……。


「いらっしゃ……いませ……オ、オリオン殿!?」


 私達を見た店の人が、急に挙動不審になりました。

 ……なんだか嫌な予感がします。


「お連れ様はもしかして、女神の使者様?」

「そうだが?」

「そ、そうですか。今日はどういったご用で?」

「買いに来る以外に用事があると思うか?」


 不穏な空気を感じて、オリオンも僅かに顔を顰めました。


「申し訳ありません! 本日は用事がありまして……店を閉めるところでして……」


 ほら、やっぱり!

 まさか……私のせいですか!?

 城の外でも、店で売って貰えないほど嫌われているのでしょうか。

 私のワクワクを返して欲しい……そろそろ泣きますよ!


「なら明日改めよう」


 あれ……?

 こういう時は、普段と変わらない様子で言いくるめるオリオンが、今はやけに突っかかってる感じです。

 声も明らかに苛々しているし、ちょっと子供っぽい?

 今まではリンちゃんがいたから、大人ぶっていたのでしょうか。


「明日も用事が……」


 店の人はオリオンと目を合わせられず、遠くを見ながらボソボソと答えています。


「なら明後日だ」

「あ、明後日も……」

「明明後日」

「その日も……」

「店を畳むか?」

「!!」


 店の人が可哀想なくらい慌てています。

 今のは『畳んでやるぞ』という脅しのようでした。

 オリオンは女神の騎士です。

 どんな権力があるかは知りませんが、お店にとって無視できないダメージを与えることは出来そうです。

 

「オ、オリオン! もういいよ、他のところに行こう!」


 店の対応には腹が立ちましたが、今日のオリオンは様子がおかしくて……そっちの方が気になります。

 腕を引くと小さく舌打ちをし、渋々といった様子で店を出ました。


 その足ですぐ、別の店に行ったのですが……。


「オリオン様!?」

「すいません、在庫切れでして……」

「申し訳ありませんが、全て予約商品です」


 どうしよう……凄く凄く嫌われています!

 どこに行っても、売って貰えませんでした。

 流石に凹みます。


「……チッ」


 オリオンも全身から黒いオーラが出ているくらい、苛々しているのが分かります。

 今にも暴れ出しそうです。

 もう暴れてもいいかな……私も便乗して暴れようかな。

 二人で巨大怪獣のように町をめちゃくちゃにしようかな。

 はあ……私が何をしたというのでしょう。

 一旦落ち着くため、私達は膝丈ほどの花壇に腰を降ろして休むことにしました。


「……悪い」

「ん?」

「まともなところに連れて行ってやれなくて」

「そんな……オリオンが悪いんじゃないよ」


 責任を感じているのでしょうか。

 さっきの騒動のこともあるから尚更なのかもしれません。

 気にしなくてもいいのに……。

 町の方で買うのは諦めて、城のもので揃えた方がいいのかもしれません。

 今日はこうやって、外の空気をすえただけで満足ですし。


 そんなことを考えながら足下の煉瓦に目を落としていると、私の前で小さな人影が止まりました。

 黒い下駄を履いている小さくて綺麗な足がこちらを向いています。


「よう、小娘。そこの得体の知れない小僧も。随分お困りのようじゃな」


 顔を上げて声の主を見ます。

 目の前にいたのは背の低い十歳くらいの女の子でした。

 紅葉が描かれた紫の和傘をさし、服は深緑の上下に、紺色の羽織をかけています。

 髪は黄緑で、二つに分けて折って纏める邪馬台国風な髪型です、個性的!

 パッチリとした黒目の周りには、鮮やかな赤でアイメイクが施されていて……全体的に和風?

 今日見かけた町の人達とは雰囲気が違い、異様です。

 私は妙に恐ろしいというか……不気味になり、オリオンを見ました。

 オリオンも顔を顰めて少女を見ていました。

 警戒していつでも動けるようにしているのが分かります。


「まあそんなに身構えるでない。悪いようにはせん。お主ら、装備を揃えたいんじゃろ?」


 何故分かるのでしょう。

 あ、でも、何軒ものお店で断れ続けたので、どこかで見かけたのかもしれません。


「ふむ、匂うのう……『面白い』の匂いじゃ」

「あ、私のシュシュ!」


 少女の手には、私が髪につけていたシュシュがありました。

 いつの間に……全く気がつきませんでした。

 オリオンの警戒度が一気に増したようで、密かに構えています。


「お主ら、ここではまともな買い物は出来んぞ」

「どういうこと?」

「ついてこい。装備が欲しいのだろう?」


 そう言うと、少女は私のシュシュを腕につけて歩き始めました。


「どうしよう?」

「……どっちが『得体の知れない』だ」


 オリオンは顔を顰めています。

 私には少し不気味な怪しい少女としか分かりませんが、オリオンには何か分かったのか、少女に真剣な目を向けています。


「ほら、早くこんかい。こんな幼気な美少女に何を警戒しておるのじゃ」


 私には判断が出来ません。

 ついて行ってもいいと思うのですが、オリオンの判断を待ちます。


「……行くぞ。だが、俺の後ろにいろ」

「う、うん」


 オリオンの指示に従い、歩き出した彼の後ろにつきました。

 その様子に笑みを浮かべ、満足そうに頷くと少女は再び歩き始めました。

 本当に、大丈夫なの……?


 商店エリアを出て、人が少なくなった居住エリアらしきところを抜け……木々が生い茂った町の外れに出ました。

 随分寂しい場所に来てしまいました。

 装備を買える場所なんて、本当にあるのでしょうか。

 もしかして、騙された?

 何かあっても、オリオンがいるので心強いですが……。


 緑の中を進んでいると、急に少女の足が止まりました。

 周りには植物ばかり、人がいないし店なんてありません。

 やっぱり罠だった!?

 茂みから悪い人達が『へっへっへ』と下卑た笑いを浮かべながら出てきて、囲まれてボコボコにされてしまうのでしょうか!


「お主ら、ちゃんとついてこいよ?」

「はい?」


 悪い人達に立ち向かえるよう構えていましたが、そんなことは起こらず……。

 少女を見ると、彼女の目の前には一メートル四方程の水溜りがありました。

 何だろう? と見守っていると少女がぴょんと軽く飛び、水溜りに入りました。

 子供はこういうことが大好きだよねー、なんて思っていたのですが……。

 予想外のことが起きました。

 少女が水溜りに入ったのです!

 普通に水遊びをするようにビシャと水溜りを踏んだのではなく、本当に『中に入って、姿が消えた』のです。


「入った!?」


 実は水溜りは凄く深かったとか?

 でも、少女は消えたままで浮かび上がってきません。

 何より、水溜りは少女が飛び込む前と同じ状態のまま、そこにあります。

 水が減ったり増えたり、形が崩れたりも一切していません。


「ど、どうしよ!?」


 怪しいです。

 実は魔物だとか!?

 きっとそうだ、私、分かってしまった!

 張り切ってオリオンにそれを告げました。


「いや、魔物ではない。『神』の類いだろう。……虚ろ神じゃなさそうだ」

「か、かみさま!」


 魔物よりレアなものでした。

 でも、神様って案外近くにいるものなんですね。

 ファントムもそうみたいだし……。


「お前が引き寄せているんじゃないか? 普通なら一生会えない存在だぞ」


 なんと、私は神様にご縁があるようです。

 女神の使者だからでしょうか。

 今は兎に角、『神様少女についていくか』です。


「虚ろ神じゃなかったら害はないんだよね?」

「ああ。こちらが余計なことをしなければな。行くか……」


 二人で目を合わせ、頷きました。

 オリオンに手首を持たれ、再び連行スタイルで一緒に水溜まりに飛び込みました。




「遅いぞ」


 二人で飛び込んだ瞬間、別の場所にいました。

 水に入ったような感覚はなく、一歩足を踏み出すと景色が変わった、そんな感じです。

 息を止めていたのですが、その必要はありませんでした。


「……洞窟?」


 視界に入ったのは歪な白の石壁、天井。

 広さは小学校の教室くらいですが、天井が余り高くない上に凸凹と波打っていて歪なため、圧迫間があります。

 足首くらいまで薄い翡翠色の水が溜まっていて、ひんやりして気持ちいいです。

 見た目も岩肌の白と併せて、とても綺麗です。

 昔テレビで見た大理石で出来た洞窟に似ています。


 部屋の中には、大人が入れそうな程大きな深緑色の水瓶が幾つも並んでいました。

 水瓶には、木の蓋がされています。


「よっこいしょ」


 神様少女は、水瓶のひとつの上にぴょんと飛び乗り、足をブラブラさせながら座りました。


「妾のテリトリーにようこそ」

「ここは……」

「とある沼の底じゃ」

「沼の底!?」


 綺麗なので『沼』という感じはしません。

 湖とか、泉の方が合っていそうですが……。

 そもそも、底にこんな空間があるなんて信じられません。

 神様の力で作っているのでしょうか。


「沼の神か」


 オリオンの呟きが耳に入りました。

 やっぱり『神様』なんですね。

 だから独特の格好をしているのでしょうか。

 オリオンの呟きが聞こえていないのか、無視をしているのか、神様少女は反応をする気は無いようです。


「お主ら、メロディアのガキに嫌われておるだろう?」

「メロディアのガキ?」


 神様少女をジロジロと見ていると、私とオリオンに目を向けて口を開きました。


「セイロンだ。……そういうことか」

「お坊ちゃまの機嫌を損ねるのが怖いようだの」


 オリオンは納得したようですが、私は分かりません。

 何となく、察しはつきますが……。


「メロディアは商売の要となっている国。商いに携わる者なら、揉めたくはないわなあ? しかも相手はハズレ姫。リスクを負ってまで売ってやるメリットがないっちゅうわけじゃ」


 セイロンの機嫌を損ねたくないから私とは関わらない、そういうことのようです。

 何だか力が抜けてしまいました、くだらない……。

 わざわざこんなことを仕向けてから旅立ったのでしょうか?

 直接声を掛けていないにしても匂わせたんでしょうね、きっと。

 商売業界は鼻が利きそうですし。


「だがお前は運がいい。このロロ様の目に止まったのだから」

「ロロ様?」


 名前ですよね?

 確認をしようとしたのですが……『ロロ様』が、何かを始めました。

 魔法を使っているようでロロ様の周りと、部屋にあった水瓶の一つが寒色系のオーロラのような光を放ちました。

 暫くすると水瓶の中からも光が溢れ、柱となりました。

 その中に何かがあります。


 光がだんだんと収まってくると、光の柱の中にあったものが何か分かりました。

 弓とコート、そしてブーツです。


「ほれ、早う取れ」

「え? あ、はい!」


 言われるがままそれらを手に取ると、光の柱はスッと消えました。

 手にある装備に目を向けました。


「綺麗……」


 デザインは統一されていて、白地に瑠璃色、緋色が差し色で使われています。

 鮮やかだけれど落ちる気のある雰囲気です。


スワロウセットじゃ。見たところ、お主の身体能力は平々凡々だが、魔法に関しては非凡じゃ。その燕セットは魔法面に長けておる。ちょうど良いじゃろう」

「くれるんですか?」

「うむ」


 なんだか上品でお高そうなのですが、本当に頂いてもいいのでしょうか。

 嬉しい……マタギ卒業です!


「これは……昔は良くあった装備だが、今は全て揃った状態では中々手に入らない。かなり貴重なものだ」

「え!?」


 オリオンの言葉を聞いて固まりました。

 貴重なものとか……本当にいいの?

 オリオンがこちらを見て説明してくれました。


「こういうセットになった装備は、全て揃うと特別な効果を発揮する。バラでは効果も防御力も低く、当然価値も低い。最近では、このレベルのセットが揃うことは殆ど無い。盗難に遭ったり、破損しても修復出来る者が居なかったりでな」

「へえ……」


 オリオンの解説を聞い、ロロ様は満足そうに微笑んでいます。


「それは古き名工が手がけた一品。特殊効果も中々。魔力常時中回復。激破時魔力中回復。効果が『大』ではないが、今のお主にはちょうど良い。お主の能力が上がったら、進化させてやろう」

「進化だと?」


 オリオンがまた何か引っかかったようで、ロロ様を見ています。

 どうしたのだろうと見ていると、再び解説が入りました。


「進化出来る装備は珍しい。貴重なセットの上、進化も出来るとなると議長から貰った資金とお前達の商売の売り上げを全部渡すくらいはしなければ買えないな」

「そんなに!?」


 なんだか凄いお宝を持っているような気がしてきて、手が震えそうです。


「それに、『進化させること』も簡単じゃないんだ。『鍛冶』と『印』の両方に精通した者しか出来ない。貴重な装備に成功率が低い進化を施すなんて、かなり勇気のいることだ」


 ロロ様に疑うような視線を向けています。

 『本当に出来るのか』と言いたげですが、神様なんだから出来るのでは?


「妾がやるのではない。妾も出来るがこいつらに任せてある」


 ロロ様がヒラヒラと手を振ると、水瓶の蓋が開き、中から何かが出てきました。

 黒いピンポン玉に何か尾がついているような生き物がウジャウジャと……うげっ……ちょっと、気持ち悪いです。


「おたまじゃくし?」


 それは私が知っているものより、倍以上の大きさがあるおたまじゃくしでした。

 この子達が『難しい進化』とやらをやるのでしょうか?

 オリオンも顔を顰めています。


「腕は確かだぞ? ヘマをすることなどないわ。装備の改造なんかも出来る。加工したければ頼めばよい」

「……それは、デザインを変えるだけ、とかも出来ます?」

「容易い。普通に弄ると能力が下がり、防具をただの服にしてしまうこともあるが、こいつらならそんなヘマをしない」


 おお……凄いです。

 多分私が思っているより凄いことなんでしょう、オリオンが驚いています。

 せっかくなので、ひとつお言葉に甘えてリクエストをしたいのですが……いいでしょうか。


「このスワロウコートの裾に、フリルをつけたり出来ます?」

「御安い御用じゃ」

「やったー!」


 十分綺麗でお洒落なのですが、少し大人びているのでガーリィに出来たらなあと思っていました。

 フリルがつくだけでも、雰囲気が変わると思います。


 どうするのだろうとワクワクしながら待っていると、私が持っていたスワロウコートが光だし、プカプカと宙に浮きました。

 おたまじゃくし達もプかプカと浮かびながら、コートに集まってきました。

 そして何か細かい光が散らばり始めたかと思うと、それが集まり、糸と針になりました。

 おたまじゃくし達が糸と針を口にくわえ、協力しながらせっせと裁縫をしています。

 中には足が生えた子がいて、良い動きをしています。

 兄貴分、という感じですね。

 見ていると楽しくて、可愛くて……。

 凄くファンタジーな光景です!


 おたまじゃくしによる加工、というより裁縫ショーはすぐに終わり、私の希望した通りのフリルがついていました。


「凄いー! 可愛い! おたまさん達、ありがとう!」


 感激していると、おたまじゃくし達は私の周りをくるりと一周りしてから水瓶に戻っていきました。

 最初気持ち悪いなんて思ってごめんなさい、貴方達とってもキュートです!


 またやって欲しいな。

 私、ここの常連になります。

 おたまじゃくしによる洋裁店、いや、洋裁だけじゃないから『おたま堂』とか?


「おたま堂最高!」

「おたま堂?」

「あ、勝手に命名しちゃいました」


 もしかして、ちゃんとした名称があったのでしょうか?

 沼の名前がついてるとか。


「『おたま堂』か……気に入った。今からそう呼ぶが良い」


 私の中での通称のつもりだったのですが、まさかの公認を頂きました。

 でも、ロロ様にも気に入って頂けて嬉しいです。


「あの……お代は」


 目に入った装備一式を見て思いました。

 『くれる』と言っていましたが、こんな素敵なものをタダで頂くわけにはいきません。

 正規の値段だと軽く予算オーバーなので、少し相談させて貰いたいところですが……。

 ローンとか組めるのかな……。


「これを妾にくれ」

「へ?」


 身構えていたところに言われたお代は、ロロ様がつけたままになっていた私の『シュシュ』でした。


「そ、そんなものでいいんですか?」


 私としては助かりますが、あまりにも不釣合いで申し訳ないです。


「あと、精がつくという若返りの秘薬も寄越せ」

「? なにそれ」

「……リコに毎日飲まされている、あれだろう」

「ポン汁!?」


 ポン汁が神様の耳にまで入っていたことにも驚きを隠せませんが……どうしよう。

 ポン汁に関しては、リンちゃんに相談した方がいいのでしょうか?

 でも神様相手だし、構わないですよね。


「いいですけど……それ以上若返りたいんですか?」

「詮索すれば死ぬぞ?」

「黙ります」


 もしかして、ロロ様は所謂『ロリババア』なのでしょうか。

 まあ、神様なんで年齢なんて超越してるというか、関係ないと思いますが。

 しかし……ロリジジイなオリオンとロリババアの邂逅……恐ろしい化学反応が起きそうな気がしてきます。

 ちらりとオリオンを見ると、睨まれてしまいました。

 もしかして、考えていることがバレました?

 ……おじいちゃんの勘は恐ろしいです。


 追加で何種類かのシュシュとポン汁、この二つを渡すことを約束しました。

 それでも不釣合いな気がして、もう一度お金はいらないのか聞きました。

 返事は『金などいらん』でした。


「実在するモノで妾に用意出来ぬものなどない」


 ロロ様がパチンと指を鳴らすと再び水瓶の蓋が開き、光の柱が上がりました。

 その中で、色んな装備が見えては消え……移り変わっていきます。

 私には価値が分かりませんが、貴重な多いらしく、オリオンが感嘆の声を上げています。

 もう一度指を鳴らすと光の柱は消え、水瓶の蓋も戻りました。

 どうやら所有している装備を色々見せてくれたようです。

 『用意出来ぬものなどない』という言葉は本当のようです。


「だが、『存在せぬもの』は集められない。だから……まだ世に出ていない物、『新しいもの』が好きなのじゃ。お前からは面白い匂いがする。我々は良い関係を築けると思わぬか?」


 どうやら私が何か新しいものを作って渡せば協力してくれるようです。

 商店に相手にしてもらえない身としてはとてもありがたい申し出です。

 シュシュのようなものであれば、また新しいものを作れると思います。

 でも、神様を喜ばせることが出来るかというと、難しいかもしれませんが……頑張りたいと思います。


「はい! 宜しくお願いします」


 大きな声で返事をすると、にっこりと微笑んで頷いてくれました。


 凄いです、神様とお知り合いになりました。

 そして神様に装備を頂きました!


 ……ふふふ、セイロンのおかげですね!

 戻って来たときにこの装備を見てどう思うか……ちょっと楽しみです!

 

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